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ゲームの開始

連鎖する悲劇

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 結構飲んで酔っ払っていた筈なのに零時超えるとすっかり覚めていてサッパリしている。そう言う意味ではこの現象は便利だな思う。
 ここでもワインを飲んでいるが、酔う程までは飲んでいない。
 今までの会話の感じからこの時間は不死原はまだ起きていないらしい。連絡をまだ入れるのはやめてネットニュースを確認する。

【また値上がりか? 今買い溜めするべき品目】
【俳優の杉田玲士結婚! お相手は元ニャンニャン麺のミライ!】
【高山議員、失言に対して謝罪】

 大きな事件もなく比較的平和な内容。コレが半日すると地震による地滑りの事件一色になる。
 その関連する事だが、慈悲心鳥崖の崩落なんて扱いは小さいものだった。そこで誰も事故にあってないことになっているから。
 私達二人が死亡した日は、どのような扱いになったのかは謎である。
 
 そして不死原は毎回、末時村のニュースをどんな気持ちで聞いているのだろうか? とも思う。
彼があの村の事を今も気にしており、様々なルートから人伝に情報を仕入れているのを何となく感じている。

 共にいなかった時の不死原はどう動いていたのだろうか?
 あれから自ら動く事を止めたところを見ると助ける事を諦めたということだろうか? 

 いくら私達が干渉したところで、リセットされると意味はなくなる。諦めたとしても不思議ではない。
 今できる事はこの現象のことを調べ検証することだけ。それだけが、積み重ねていける意味ある事。

 ノートを取り出し今調べ分かっていることを書き出して眺める。
 そして改めて東京で気になった日廻永遠という建築家の事をネットで調べてゾッとした。
 彼は八年前の七月十一日に飛行機事故で亡くなっていた。
 十一の死亡のきっかけとなったleonzièmeオンジエム cadeauカドーについて調べてみても、とんでもない事実を発見してしまう。


2018年 飛行機事故 
 日廻永遠 四十五歳 11月11日誕生日
 建築家 Medioメディオ Delデル Mondoモンド設計 

2019年 Medioメディオ Delデル Mondoモンドでの竜巻事故
 佐藤 宙 二十九歳 11月11日生まれ 
 システム開発の会社の営業

2020年 ジャックスマイル内のニシムクサムライ零の店内で落雷による落下事故
 土岐野 廻 二十六歳 11月11日誕生日 
 ニシムクサムライプロジェクトのコンセプトディレクター

2021年 ニシムクサムライ十一号店の前で台風による漂流物での事故
 ライフフォード・ダイン  三十八歳 11月11日生まれ
 カルフォルニア出身のプロサーファー

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2024年 海難事故
 エブリー・ギルベール 四十二歳 11月11日生まれ
 ショコラティエ  le onzième cadeauのオーナー

2025年 le onzième cadeauの看板の落下事故
 十一 残刻 二十八歳 11月11日生まれ
 彫刻家。十一久刻像の作者

2026年 慈悲心鳥崖の十一久像の前で滑落事故
 不死原 渉夢 二十九歳 11月11日誕生日 画家 

 そこの流れを見て佐藤宙の所に矢印をつけにニシムクサムライへの矢印を入れ横に【?】の文字を書き入れる。

 そしてライフフォード・ダインについても調べてみる。人気サーファーでオリジナルブランドを持っているようだ。
 彼の経営しているショップなのか、作品なのか。私はライフフォード関連の情報を探すがコレという決め手は見つからなかった。
 しかしきっとこの流れを見ると、何が次の年の繋がる何かがあるのだろう。

 朝になり、不死原から連絡がきたのでまたレンタルオフィスで待ち合わせることにする。
 今日は十一は自宅から繋いでいるようでTシャツに短パンというラフな格好で参加。
「気になって調べたらマンションをデザインした建築家、そしてさっきの店の代表であるショコラティエのエブリー・ギルベール。誕生日が共に十一月十一日で、亡くなったのは七月十一日でした。
 日廻永遠はそのマンションの事故の一年前。そしてショコラティエはニ年前に亡くなっています」
 不死原は目を見開く。
「こうしてみると見事に繋がってるな」
 流れは見えてきたがこれをどう解釈したらよいのだろうか? 不死原の声を聞きながら私は考え込む。
 国内だけで調べていたから気づけなかったが、海外情報も探ればおそらくは一本の流れが見つかるだろう。
「つまりは、この抜けている年も同様なことが起きているということか」
『だろうな。そして佐藤宙と言う奴も、なんだかの形でニシムクサムライと関係しているんだろうな』
 そう考える方がしっくりくる。
「こんな現象がずっと連鎖しているということは……」
 そして恐らくはこの人達は皆同じ状況に陥っている。この連鎖からどう抜け出せば良いのか? 私は呆然とするしか無かった。
『ま、そういう事になるんだろうね』
 十一は反応薄く、他人事のように答える。その様子を見て、ある可能性に気がつく。

 十一は建築家日廻永遠に対して『会いたかった』ではなく『会ってみたい』と言っていた。彼が生きているかのように。

「十一さん。もしかして既にこの事ご存知でしたよね?」
 ずっと感じていた違和感。その理由に気がつく。十一は不快そうに眉を寄せ大袈裟にため息をつく。
『……ほんと、アンタ察しが良すぎて、ムカつくな』
 十一は片側だけ口角を上げ意地悪そうに笑う
『そうだよ俺はとっくにその辺りの流れは見つけ出していたさ。
 まさか俺が本当に一年、無為に過ごしていた思っていたか?』
 彼は最初一年前不死原に何度もこの現象について相談していたと言っていた。
 そして看板の名前や十一の多い状況からこも一年の流れに気がついてもおかしくは無い。私でも気がつけたのだから。
『一年の間にコチラの渉夢と、とっくに見つけていたさ。
 アンタには見つけられてない抜けている年月の繋がりも、佐藤宙が何故その流れにいるのかまでも把握済み。
 佐藤宙は元々SEだ。サムライの管理システムを礎を作った時のプロジェクトリーダーがコイツだった』
 十一を叱るのかと思ったが不死原は冷静な表情で黙っている。
「なら、何故知らないふりを?」
『謎解きを楽しんでいる人に、ネタばれをかますのは野暮だろ?』
 私は机を強く叩いてしまう。
「楽しむ? ふざけないで! 私は真剣よ!」
 怒りのまま叫ぶ私を、十一は馬鹿にしてくるでもなく何故か憐むよう視線向けてくる。
『でも、おかげで気は紛れていただろ?』
 私は言葉に詰まり、隣の不死原に視線を向ける。
「不死原さんも、初めから全部知っていて黙っていたの?」
 不死原は顔を横に振る。
「いや、でも残刻の態度で何となくという感じかな。
 君に気を使って何も言わないのかなと。
 残刻はこういう態度だけど、君のことをすごく気にかけているから」
 私の為だといわれても、どういう感情で受け止めていいのか分からない。私は深呼吸して気持ち必死に落ち着かせる。
「二人は、この状況をなんとかしようとか考えていないの?」
『いや、そんな訳ではない。出来ることは色々やっているさ。でも今のところ解決策は何も見つかってない。
 理不尽な事は自分で導きだしてないと納得しづらいだろ?』
 私がこの時間の中で必死に組み立てていたものが意味がない事だったと、言われているようで私は悔しかった。
「それに変に情報を受けないで違う視点で調べるというのも検証する意味では良かったのかもしれない。
 新たなる物が、見えてくるかもしれないしな。
 逆に別々に調べたモノが同じ結論という事は、この件はそうなのだろうな」
 あの看板の意味もすぐ出てきた不死原。私より先に気がついていたのだろうと察する。
『今の所、解決に繋がる糸口は見つかってない。
 ……そもそもアンタの場合は解決する事に意味あるのか?
 むしろ今の状況の方が都合よいのではないか?
 だからもっと、ここの生活楽しんだらどうだ?』
「私の結論は変わらない。この状況をなんとかしたい!
 貴方達は私よりもっとそう思っていないの?
 私と違って、進むべき輝かしい未来もある二人だから」
 安定した生活と人から認められた素晴らしい才能のある二人は、こんな状況から脱出したいはずだ。
『俺は俺の臨むままに過ごすさ。渉夢が渉夢でそう動くように』
 十一はニヤリと不敵に笑った。そんな言葉に受けるように不死原も笑い頷く。
「残刻お前は、今、何をしている?」
 残刻はウーンと悩んでいるような声を漏らすが、ニヤニヤ笑っている。
「さしずめ、今とりかかっているのは、他の年の同じ現象に巻き込まれた人との接触といったところかな?」
 十一は嬉しそうな無邪気な笑みを浮かべる。
『渉夢、お前は本当に俺の事見通してるな!
 今接触をはかろうとしているのは建築家の日廻永遠。
 あのリストの中で一番ネットでの情報量も多く国内にも多くの作品があり。東京に自宅、設計事務所もある』
 不死原は頷く。
「じゃあ俺は他のメンバーで何か取っ掛りがあるか調べてみよう」
 不死原は私の方を見る。私は二人が諦めずに、ちゃんと謎の解明に動いていたことに安堵する。
 不死原がチラリと私に視線を向ける。
「佐藤さんはどうされますか?」
 私は悩む。何ができるのか?
『ヒロコちゃんは、引き続き例のリスト調査続けたら? そういうの得意そうだしパズル埋めるみたいで楽しいよ』
「楽しいって……」
『俺とコッチの渉夢だと三ヶ月かかった。でもヒロコちゃんは一月もしないでそこまで埋めてきた。
 大した情報収集能力だよ。その空いている年をヒロコちゃんのやり方探っていったら? 俺達の調べた物が間違えている可能性もあるから完成したら答え合わせしよう』
 なんか言いくるめられた気がするが、私は頷くしかなかった。
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