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~風が吹く時~
1-1 <嵐の予感>
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一級品に出会うには、王国アデレードの王都アルバードに行けばよい。
レゴナ川の周辺に広がる肥沃な大地と多くの鉱山が生み出す富が国に活気を与えており、その活気が人を呼ぶ。
著名な学者、芸術家、建築家等、有能な者が世界中から集うのがこの都市である。
壮麗と称される王都アルバード自体が、その豊富な人材の才能の結晶なのだ。
その中央にある王宮は、東側はサンドリア宮、西側はルイーザ宮と呼び、双子の女神の名を持つ。遠目では似た外観のようで、サンドリア宮は太陽と青空と雲の、ルイーザ宮は星や月の装飾が施され、二つで天空を表現している。そして王宮を囲むように作られた軍司令部には山と川、司法地区には果実をもった樹木、城下町は大地ということでそよぐ麦畑や咲き誇る花等の装飾が施されている。つまり王都アルバード全体で宇宙を表現しているのだ。
天上の都と称されるのもそれ故である。
手入れの行き届いたサンドリア宮の庭園で一人の少年が、アルバードの春を楽しんでいた。
蜂蜜色の髪に白い粉を吹き瑞々しく熟した葡萄色の瞳をもつ少年。顔はそれなりに整っているものの、繊細そうな華奢な身体と、人柄の良さがそのまま表れた温順な表情が、人物全体の印象をぼんやりとしたものにしているのが残念な所。純粋さや、あどけなさが彼を十三歳という年齢よりさらに幼く見せる。
彼の名前はフリデリック・ベックバード。アデレード国の王子である。
礼儀正しく、王族の品と謙虚さをもった彼は王宮内の誰からも愛されていた。
聡明で純真な上、勉学に真率に取り込む姿は教授達からも好まれた。
また、素晴らしい絵の才能をもっており、師匠である著名な画家も、その能力を高く評価していた。
手入れの行き届いたサンドリア宮の庭園で、フリデリックは朝咲いたばかりの薔薇を眺めながら、真剣な表情でキャンバスの上に写しとる。彼の筆が進むにつれ、春の日の中で輝く美しい庭園の風景が、キャンバスの中にも瑞々しく広がっていく。
その様子を侍女のマールは、ため息を付きながら見守っていた。
フリデリックにとって、静かにキャンパスに向かい、この素晴らしい庭園で季節と向き合う一時は至福の時間。最も彼が彼らしく過ごせる時間でもあった。
そんな穏やかな時間を破るように、遠くから鐘の音がする。
「フリデリック様、凱旋式の準備をそろそろされたほうが宜しいかと」
つい夢中で絵を眺めていたマールがハッと我に返り、フリデリックにそっと次の予定が迫って来たことを伝える。そして周りを窺い悪戯っぽい顔になりマールは小声でさらに言葉を続ける。
「実はクッキー焼いてまいりました」
子供らしく、フワリとフリデリックは笑う
「それは素敵ですね、凱旋式の後でお茶の時に頂きましょう」
王族に毒味もなく個人的に食べ物を持ってくる事は勿論禁止事項であるが、家族より長い時間を過ごしている彼女は、姉以上にフリデリックにとって親しい存在である。二人はこうして長い期間共犯関係を続けている。フリデリックはマールに嬉しそうな笑顔を返す。
優しいフリデリックの笑みににマールもつられるように微笑む。庭園になんとも穏やかで平和な空気が流れる。庭園がというよりフリデリックの纏う空気はいつもそんな感じだ。穏やかな笑顔で、優しい言葉で周りにいる人を幸せにする。フリデリックはそんな少年だった。
この少年が、後世の人達に、愚か者の意味をある『フリ』の名で呼ばれる事になる、フリデリック・ベックバードその人である。
その事を知るよしもないフリデリックは、画材を片付け、凱旋式の準備をするために庭園を後にする。
レゴナ川の周辺に広がる肥沃な大地と多くの鉱山が生み出す富が国に活気を与えており、その活気が人を呼ぶ。
著名な学者、芸術家、建築家等、有能な者が世界中から集うのがこの都市である。
壮麗と称される王都アルバード自体が、その豊富な人材の才能の結晶なのだ。
その中央にある王宮は、東側はサンドリア宮、西側はルイーザ宮と呼び、双子の女神の名を持つ。遠目では似た外観のようで、サンドリア宮は太陽と青空と雲の、ルイーザ宮は星や月の装飾が施され、二つで天空を表現している。そして王宮を囲むように作られた軍司令部には山と川、司法地区には果実をもった樹木、城下町は大地ということでそよぐ麦畑や咲き誇る花等の装飾が施されている。つまり王都アルバード全体で宇宙を表現しているのだ。
天上の都と称されるのもそれ故である。
手入れの行き届いたサンドリア宮の庭園で一人の少年が、アルバードの春を楽しんでいた。
蜂蜜色の髪に白い粉を吹き瑞々しく熟した葡萄色の瞳をもつ少年。顔はそれなりに整っているものの、繊細そうな華奢な身体と、人柄の良さがそのまま表れた温順な表情が、人物全体の印象をぼんやりとしたものにしているのが残念な所。純粋さや、あどけなさが彼を十三歳という年齢よりさらに幼く見せる。
彼の名前はフリデリック・ベックバード。アデレード国の王子である。
礼儀正しく、王族の品と謙虚さをもった彼は王宮内の誰からも愛されていた。
聡明で純真な上、勉学に真率に取り込む姿は教授達からも好まれた。
また、素晴らしい絵の才能をもっており、師匠である著名な画家も、その能力を高く評価していた。
手入れの行き届いたサンドリア宮の庭園で、フリデリックは朝咲いたばかりの薔薇を眺めながら、真剣な表情でキャンバスの上に写しとる。彼の筆が進むにつれ、春の日の中で輝く美しい庭園の風景が、キャンバスの中にも瑞々しく広がっていく。
その様子を侍女のマールは、ため息を付きながら見守っていた。
フリデリックにとって、静かにキャンパスに向かい、この素晴らしい庭園で季節と向き合う一時は至福の時間。最も彼が彼らしく過ごせる時間でもあった。
そんな穏やかな時間を破るように、遠くから鐘の音がする。
「フリデリック様、凱旋式の準備をそろそろされたほうが宜しいかと」
つい夢中で絵を眺めていたマールがハッと我に返り、フリデリックにそっと次の予定が迫って来たことを伝える。そして周りを窺い悪戯っぽい顔になりマールは小声でさらに言葉を続ける。
「実はクッキー焼いてまいりました」
子供らしく、フワリとフリデリックは笑う
「それは素敵ですね、凱旋式の後でお茶の時に頂きましょう」
王族に毒味もなく個人的に食べ物を持ってくる事は勿論禁止事項であるが、家族より長い時間を過ごしている彼女は、姉以上にフリデリックにとって親しい存在である。二人はこうして長い期間共犯関係を続けている。フリデリックはマールに嬉しそうな笑顔を返す。
優しいフリデリックの笑みににマールもつられるように微笑む。庭園になんとも穏やかで平和な空気が流れる。庭園がというよりフリデリックの纏う空気はいつもそんな感じだ。穏やかな笑顔で、優しい言葉で周りにいる人を幸せにする。フリデリックはそんな少年だった。
この少年が、後世の人達に、愚か者の意味をある『フリ』の名で呼ばれる事になる、フリデリック・ベックバードその人である。
その事を知るよしもないフリデリックは、画材を片付け、凱旋式の準備をするために庭園を後にする。
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