20 / 41
Live
Approach
しおりを挟む
その日は午後からの講義で朝はゆっくり眠れる筈だった。しかししつこい電話の呼び出し音が俺の眠りを妨害してくる。時計を見ると朝の九時十七分。人に電話するのに非常識な時間ではないが、昨夜課題をして遅くまで頑張った身としては、朝五時に起こされたのと似た感覚だった。
一向に止む気配のない電話に出ると『ハア、やっと出た!』という女性の声。誰だろうか?
『もしもし、トウメイですが。小野さんのお宅の電話で間違えないでしょうか?』
クールで落ち着いた女性の声で我に返る。
「はい、小野ですが、どちら様でしょうか?」
そう聞き返している間に、『トウメイ』が『東明』と頭の中で変換される。でも何故女の人の声? と考え少しずつ思考が周りだす。昨晩色んな意味で強烈な印象を残した女性の姿を思い出す。
「あぁ、透さんのお姉さんですね。でも何故俺の電話番号を?」
そして何故俺に電話かけてきた?
『根小山家の電話の前のボードに貴方の家電と携帯の番号貼ってあったの』
なるほど、確かに料理を取りに上がった時そんな状態だったのを思い出す。
「それで、どういうご要件でしょうか?」
そしてやはり何故俺にかけてきたのか? という事がとても気になるので聞いてみる。
『透の彼女のいるお店の場所知ってるわよね? だから連れて行ってくれない?』
「え? ちょっと待って下さい。透さんは知ってるんですか? もし勝手な行動ならば怒りますよ!」
俺は慌ててそう返す。俺に言うという事は絶対透さんは知らない。それに透さんの名前出すと凛さんも考えを改めるだろう。
『だから、貴方に紹介して貰いたいと言ってるの』
は?
「何で俺が?」
そんな事、透さんか根小山夫妻からしてもらうべきものである。
『あんた、透の弟分なんでしょ! だったら姉の私の為に動きなさいよ!』
透さんの弟分……それになると自動的にこんな姉が出来るシステムだったのだろうか? 厄介なオプションである。
「嫌ですよ、透さんも言ってたじゃないですか(澤山さんを傷付けたら承知しないと)」
『だから行くんじゃない! 『知りもしないても口出すな』って言ったから相手ちゃんと見た上で動くのよ!』
そっちの言葉だけしか聞いてませんでした?? 相手が誰であれ、絶対文句だけしか言う気ないように感じる。
凛さんは俺が断っても、絶対何としも澤山さんの所に辿りつくだろう。しかも澤山さんのお店は隣だから、行き着くまではそんなに時間も掛からない筈。となると凛さんを商店街から離すしかない。待ち合わせ場所を駅前に設定して、透さんに連絡とって止めて貰おう。無関係の俺が入るとややこしくなるので、姉弟の問題は二人で解決していただく。それに限る。
電話を切り俺は透さんの携帯に電話するが全然繋がらない。プッと繋がったと思ったら切れてしまう。
『ゴメン、今キーボくん』
かけ直そうとしたら、そんな短いメールが透さんから届く。何てタイミング悪い……。
『実はお姉さんから連絡をもらいました。
澤山さんに会いに行かかれると張り切っています。どうしましょうか?
今から何故か待ち合わせて行く事になってしまったのですが……』
メールは見てもらえそうなので、状況を説明することにする。
『小野くん! お願い!! 何とかして阻止して!! 今、俺うごけない』
直ぐにそんなメールが帰ってくる。それはそうだろう。透さんは文字通り身動き取れない。俺は大きく溜め息をつく。やはりここは俺が頑張るしかない。
『分かりました! 出切る限り時間稼いで頑張ります!!』
そして深呼吸してから出掛ける準備をする。頑張る気はあるのだが、気が乗らないのでその動きはのろい。それにしても俺は何、いつもより身だしなみに気を使っているのか? いやこれも時間稼ぎの一つなのかもしれない。というより凜さんに会う時間を少しでも先にしたいという気持ちの表れだったのだと思う。向こうが指定してきた時間が直近過ぎるのもあったのだが、俺は珍しく十分程約束の時間より遅れて待ち合わせ場所へと到着した。遅刻を怒ると思ったが、凛さんは現れた俺を見て華やかに微笑む。こんな状況であっても、美しい女性が俺を見て嬉しそうな表情をするというのは嬉しい事ではあるようだ。一瞬ドキリとする。
「小野くん来てくれて嬉しいわ!
今日は、ゴメンね、こんな事で呼び出して。でも貴方以外頼れなくて!」
儚げな容姿で上目遣いにそう言われると、俺もつい安心させるような笑顔をつくり返していた。
「いえいえ。
あっ、すいません、遅くなってしまって」
凛さんはニコリと笑い俺の手を取り、商店街の方へと引っ張る。
「じゃあ、行きましょうか!」
俺は慌ててその手に力をいれ引き戻す。
「待って下さい。まだお店開いていませんよ! 開店前の忙しい時間にお邪魔するのって失礼です!」
来る途中に必死で考えた時間稼ぎの言葉を言ってみる。凛さんはその言葉にウ~ンと悩んでいるようだ。
「時間まで喫茶店行きませんか?
それに、俺朝飯も食べずにここ来たのでお腹も空いているんですよ」
俺の言葉に、ハッとした表情をする。
「若い子が朝食抜いたらダメじゃない! 私が奢るから何か食べましょう!」
良かった。取り敢えず凛さんを商店街引き離す事は成功した。
※ ※ ※
Approach 音楽の切り口のこと
一向に止む気配のない電話に出ると『ハア、やっと出た!』という女性の声。誰だろうか?
『もしもし、トウメイですが。小野さんのお宅の電話で間違えないでしょうか?』
クールで落ち着いた女性の声で我に返る。
「はい、小野ですが、どちら様でしょうか?」
そう聞き返している間に、『トウメイ』が『東明』と頭の中で変換される。でも何故女の人の声? と考え少しずつ思考が周りだす。昨晩色んな意味で強烈な印象を残した女性の姿を思い出す。
「あぁ、透さんのお姉さんですね。でも何故俺の電話番号を?」
そして何故俺に電話かけてきた?
『根小山家の電話の前のボードに貴方の家電と携帯の番号貼ってあったの』
なるほど、確かに料理を取りに上がった時そんな状態だったのを思い出す。
「それで、どういうご要件でしょうか?」
そしてやはり何故俺にかけてきたのか? という事がとても気になるので聞いてみる。
『透の彼女のいるお店の場所知ってるわよね? だから連れて行ってくれない?』
「え? ちょっと待って下さい。透さんは知ってるんですか? もし勝手な行動ならば怒りますよ!」
俺は慌ててそう返す。俺に言うという事は絶対透さんは知らない。それに透さんの名前出すと凛さんも考えを改めるだろう。
『だから、貴方に紹介して貰いたいと言ってるの』
は?
「何で俺が?」
そんな事、透さんか根小山夫妻からしてもらうべきものである。
『あんた、透の弟分なんでしょ! だったら姉の私の為に動きなさいよ!』
透さんの弟分……それになると自動的にこんな姉が出来るシステムだったのだろうか? 厄介なオプションである。
「嫌ですよ、透さんも言ってたじゃないですか(澤山さんを傷付けたら承知しないと)」
『だから行くんじゃない! 『知りもしないても口出すな』って言ったから相手ちゃんと見た上で動くのよ!』
そっちの言葉だけしか聞いてませんでした?? 相手が誰であれ、絶対文句だけしか言う気ないように感じる。
凛さんは俺が断っても、絶対何としも澤山さんの所に辿りつくだろう。しかも澤山さんのお店は隣だから、行き着くまではそんなに時間も掛からない筈。となると凛さんを商店街から離すしかない。待ち合わせ場所を駅前に設定して、透さんに連絡とって止めて貰おう。無関係の俺が入るとややこしくなるので、姉弟の問題は二人で解決していただく。それに限る。
電話を切り俺は透さんの携帯に電話するが全然繋がらない。プッと繋がったと思ったら切れてしまう。
『ゴメン、今キーボくん』
かけ直そうとしたら、そんな短いメールが透さんから届く。何てタイミング悪い……。
『実はお姉さんから連絡をもらいました。
澤山さんに会いに行かかれると張り切っています。どうしましょうか?
今から何故か待ち合わせて行く事になってしまったのですが……』
メールは見てもらえそうなので、状況を説明することにする。
『小野くん! お願い!! 何とかして阻止して!! 今、俺うごけない』
直ぐにそんなメールが帰ってくる。それはそうだろう。透さんは文字通り身動き取れない。俺は大きく溜め息をつく。やはりここは俺が頑張るしかない。
『分かりました! 出切る限り時間稼いで頑張ります!!』
そして深呼吸してから出掛ける準備をする。頑張る気はあるのだが、気が乗らないのでその動きはのろい。それにしても俺は何、いつもより身だしなみに気を使っているのか? いやこれも時間稼ぎの一つなのかもしれない。というより凜さんに会う時間を少しでも先にしたいという気持ちの表れだったのだと思う。向こうが指定してきた時間が直近過ぎるのもあったのだが、俺は珍しく十分程約束の時間より遅れて待ち合わせ場所へと到着した。遅刻を怒ると思ったが、凛さんは現れた俺を見て華やかに微笑む。こんな状況であっても、美しい女性が俺を見て嬉しそうな表情をするというのは嬉しい事ではあるようだ。一瞬ドキリとする。
「小野くん来てくれて嬉しいわ!
今日は、ゴメンね、こんな事で呼び出して。でも貴方以外頼れなくて!」
儚げな容姿で上目遣いにそう言われると、俺もつい安心させるような笑顔をつくり返していた。
「いえいえ。
あっ、すいません、遅くなってしまって」
凛さんはニコリと笑い俺の手を取り、商店街の方へと引っ張る。
「じゃあ、行きましょうか!」
俺は慌ててその手に力をいれ引き戻す。
「待って下さい。まだお店開いていませんよ! 開店前の忙しい時間にお邪魔するのって失礼です!」
来る途中に必死で考えた時間稼ぎの言葉を言ってみる。凛さんはその言葉にウ~ンと悩んでいるようだ。
「時間まで喫茶店行きませんか?
それに、俺朝飯も食べずにここ来たのでお腹も空いているんですよ」
俺の言葉に、ハッとした表情をする。
「若い子が朝食抜いたらダメじゃない! 私が奢るから何か食べましょう!」
良かった。取り敢えず凛さんを商店街引き離す事は成功した。
※ ※ ※
Approach 音楽の切り口のこと
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる