Zazzy people

白い黒猫

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The eyes

Sit in

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 その日はマンションでなく家の方にロイを招いていた。
 再会の後。身体を重ねてから元の恋人同士に戻れたかというとそうでもない。というのは、なかなか色っぽい展開にならない。
 彼の中で良く分からない割り切りがあったようだ。街で酒を飲みに行くようになったのに、ベッドに誘ってもニッコリ笑って逃げられてしまう。
 今日はマンションではなく家に誘ったのは、俺のテリトリーに引き込んで逃げられなくする為。こちらだと車がないと帰るのは難しい。
 そして今、ロイが持ってきたあの夜の写真を二人で眺めている。写真を見せてもらって色々納得した。
 ロイの心が剥き出しの写真は、被写体となった俺が見てもエロ過ぎる。
 別に局部を写しているのではない。俺の顔、指、唇とか、俺そのものを撮影しているだけなのだが、俺は全身が性器なのか? と思う程どれもやらしい。
 とんでもないオナニーのやり方と材料をロイに与えてしまっていたようだ。そこで満足してしまい、俺と身体を繋げる欲求が下がってしまったようだ。
 あれから一緒に出かけても、俺を煽るだけの眼差しでカメラを構え撮影して過ごすロイ。
 ロイはフィルムに俺を封じていくことで昇華して満足かもしれないが、共にいる時間は俺には生殺しでしかない。
 だから今日は、その焦らされた分だけジックリ楽しませてもらうつもり。
「お前の目は本当にエロいな。俺をこんな風に見てるのか?」
 俺はロイを抱き寄せ瞼にキスをする。ロイは感じたのか小さい声をあげる。
「また、この目で俺をイカせてくれよ」
 先程からさり気ないボディータッチを仕掛けその気にさせようと企んでいた。

 先日みたいなプレイも悪くはないが、男の本性もあり、コイツの中に突っ込み放ってコイツの熱い中を感じたい。
 ロイは抵抗する訳でもなく静かに俺のそういった接触を受け入れている。
 しかしその瞳は穏やかなもので、淡い色の瞳にテーブルの上に広げられた写真を映し、フンワリとした笑みを浮かべている。
 カメラは少し離れた所に置かれているから俺達を隔てるモノはない。
「お気に入りの写真だけど、流石に写真集には難しいな。
 それに他人にも見せたくない。俺だけのケンだから」
 おっとりとそう語るロイ。おいおい俺のそういった断片を集めているだけでお前は満足なのか? 本物を欲しくはないのか?
 俺は、ピアノを弾きながら真っ直ぐカメラの奥にいるロイを見つめている自分の写真に目を止める。
 当に俺の音と視線でロイをファックした瞬間の写真だ。
「でもその写真良いな。すげえ俺らしい。俺の遺影に使って良いか?」
 その写真を示しそう言うと、俺の腕の中でビックリしたように顔を動かし、不安そうに俺を見つめてくる。
「え?! 何処か悪いの?」
 俺はその表情が可愛すぎて抱きしめる。こないだからの俺を見てどうしてそういう発想になるのか? 元気そのものだろうと思うがあえてツッコまない。
「ケ、ン?」
 腕の中でモゾモゾ動きながら気遣うような声を上げる。
「式の日にはお前は来てくれるか?」
 身体を離し俺はジッと俺を見つめている瞳を感じながらキスをする。ロイの腕が俺の背中に回され抱きしめてきた。

「あら、素敵な事してるわね。ご一緒していい?」

 部屋に突然響く艶のあるハスキーボイスにロイの身体が強ばる。俺はロイの身体を宥めるように撫でるが、折角その気にさせかかっていた空気が台無しである。
 イーラはマンションをお楽しみに使って今日は帰ってこないと踏んでいたのだが、困った事態になった。
「ホーンの男の子やコーラスの女の子が可愛いと言ってたから楽しんでくれば良かったのに。やってこなかったのか?
 イーラはフフフと笑う。
 ホーンのヤツはイーラの好みど真ん中だったから速攻喰ってくると思っていた。しかしイーラの気紛れは俺でも読めない所がある。
「ツアーはまだまだこれから、ジックリと時間かけて楽しもうかと思って♪ 今日は顔合わせだけで帰ってきたの。初日から食べゃうのもつまらないでしょ?
 それにしても、なかなか可愛い子じゃない」
 近付き顔をのぞき込んでからキスしようとするイーラをロイは露骨に逃げ睨みつける。
 夫婦で好みが合いすぎるのも問題である。やはりイーラはロイを見て食指を動かされたみたいだ。
「あら、随分恥ずかしがり屋さんなのね、そこもカワイイ。
 二人で楽しませてあげるから怖がらないで」
 そう笑いかけロイの右側のソファーの肘置きに座ってくるイーラから守るように恋人を抱き寄せる。
「イーラ。コイツはそういうの駄目なんだ、悪いが今日はお前と一緒には遊べない」
 イーラの目がますます輝き面白そうにロイを見つめる。
「本当にお前に勝るとも劣らない変態ぶりだな、悪いけど俺はゲイだ、女相手では無理だ」
 挑むようにイーラを睨みつけるロイ。しかしロイ、ダメだそんな態度だとイーラを楽しませるだけだ。
 イーラの目が爛々としている、その目は俺に『この子イイ! キュート過ぎる』と言っていた。
 イーラはテーブルへと視線を向ける。そしてそこに並べられた写真をウットリと眺めた。
 ロイはその行動に思いっきり嫌な顔し歪める。一先ずイーラの視線が逸れた事で立ち上がりイーラから離れ俺の左側に座りなおした。俺の左腕をギュウと握っていたる。
 その可愛らしい独占欲に思わずニヤける。イーラもその様子に気付いているのか緑の目を細める。
「コレ、貴方の撮った写真? 素敵!
 写真見ているだけでムラムラしてくる。スゴク。
 そして賢史を無茶苦茶に犯したくなる」
 おいおい、犯すって俺を? 俺は苦笑するが、ロイは明らかな敵意をイーラに向ける。
 イーラはロイのそんな視線を受けなから嬉しそうに笑う。
「私も撮ってよ、こんな風に」
 俺達がどういうお楽しみしたのか察したのだろう。イーラは俺が間にいるのも構わずロイに顔を近づけ迫った。そうして俺の腿をやらしい手つきで撫でてきている。
 しかしキスや触るという事はしない、距離をとってる所は流石である。
 イーラは楽しむ為のセックスがしたいだけ。相手が嫌がっているのに無理矢理迫るという事は基本しない。ここまでの拒絶をうけているなら尚更である。
「俺は貴女には何も感じない。興奮するのはケンにだけだ」
 ロイはキッパリと断るのに、イーラはフフフと笑う。
「感じない? そんなゾクゾクさせる目で私を見つめているのに?
 私に何も感じてない訳ないでしょ? 貴方の目に映っている私に興味あるの。
 貴方も写して見たくない? 自分の感情を私という被写体を通して。
 セックスしたいと言ってるのではいの。
 カメラマンである貴方の心にある私を見たいだけ!
 その激っている感情を噴き出させてみたいと思わない?」
 イーラの囁くような言葉にロイは黙り込んだ。イーラの緑の瞳はチラリと間近にいる俺に動き笑いかけてくる。
 俺も、よく使う手だが煽り感情を剥き出しにさせた所で、相手の懐に飛び込む。
 俺はまさに文字通り目の前で行われている攻防を愉しんでいた。
「貴方は私という女を見たいのではないの? 誰よりも。
  賢史が妻にした私という存在がどういう女なのか?
 その目で確かめたら?」
 そう来たか、俺は感心する。ロイがフフフフフと笑いだす。
「本当にド変態Kinkyだな! ケンにお似合いだよ!」
 イーラは気を悪くする様子もなく艶やかに微笑む。そして褒められたかのように「Thank you」と答える。
「俺もプロだ! 俺の腕を認めてくれた上で依頼してくるならば受けるよ。
 確かに貴女は被写体としては面白い。
 俺の写真でその内面を剥き出しにしてやりたいよ!」
 ロイは俺の股間を揉むように動かすイーラの手を払う。イーラは満足そうに笑う。
まだ・・恋人や友人という訳でもないから、撮って頂くのに勿論ギャラは払うわ! 契約書を交わしましょうか?」
 ロイは赤みを帯びたグレーの瞳を細め頷く。
 そして俺を立会人として結んだのだが、その契約内容はシンプル。

『両者の創作の意思が合致したら撮影を行い。その時間に対して規定した報酬が支払われる。
 その時間に生まれた作品の所有権はイリーナにある事。
 もしその作品を世間に公開といった行為を行う場合は、ロイとイリーナ双方の承諾が必要となる。その際撮影者が誰であるのかを明確にする事』

 別に特別な内容ではなく、ごくごく当たり前の内容。
 俺とロイはプライベートで撮影した写真には契約なんてものは交わしていない。そんな俺の写真との違いは『報酬が発生すること、基本的所有権がロイでないこと』その二点のみ。

 そして撮影が始まったのだが、コレが性的プレイか? というと悩む所。しかし二人とも興奮し『事に及んで』いた。
 俺の恋人と俺の妻が剥き出しに感情でぶつかり合って撮影を始めている。俺はワインを飲みながら眺めている。
 ロイの刺すような視線を受け、彼の指示通りの場所へ移動して上着を脱いだりポーズを取ったりしているイーラ。
 嫉妬の炎を燃やすロイと、ロイを更に刺激するように自分の魅力を晒け出し煽るイーラ。
 ビンビンとした緊張感ある世界は見ていてなかなかの見物ではあるが、俺抜きというのは面白くない。
 呑んでいたワイングラスを置いて、俺は二人に近付く。


 ※   ※   ※

 Sit in=メンバーではない人物が参加して演奏を行うこと。や
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