あるとれいと~絶対回避能力があるのに色々トラブルに巻き込まれちゃう男のお話~

上田るぅ

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序章

第七話 バレリア

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「とりあえず、死んでもらえるかな?」

 突然の死刑宣告をする少女?に対し、アルは困惑した表情で答える。

「えっーーーと。 何でっすか?」

「あぁぁぁ? ていうか、オメーは一体誰なんだよ!」

 支離滅裂な少女?の発言に、若干戸惑うアルは名を名乗ろうとするが、そのスキを与えずに少女?が言葉を発した。

「まぁ良いや。 どうせ死んじまう奴の名前を聞いても仕方ねー! 覚悟!」

 少女?は背負っていた剣を握ると、突然アルに斬りかかる。

「おわっ…… なっ、何すんだよ、いきなり」

 アルは身を翻して少女?の剣撃を交わすと、少し怒った表情で抗議した。

「ほっ、ほぅ。 交わす? 交わしちゃうんだ? 今の」

 少女?はアルに剣撃を交わされた事に、少し苛立った様子を見せている。

「ふぅん。 そっかそっか。 じゃぁ…… これは!!」

 またしても突然アルに斬りかかるが、不思議な事にアルに当たる事はない。

 とは言えアルも黙って立っている訳ではなく、剣撃が繰り返される度に身を翻している為か若干の疲労感を漂わせていた。

「ちょっ、ちょっと待てって! レイも喧嘩するなって言ってただろ?」

「あぁぁ? レイだぁぁ? 何、呼び捨てにしてんだ? テメーはレイちゃんの何なんだよ!」

 ハァハァと息切れするアルとは対象的に、全く息切れする様子を見せない少女?はアルに問いかける。

「いや、何って言われても……」

(そう言われると困るな。 何せこっちは、記憶を無くしてる訳だし……)

「まさかテメー! やっぱりレイちゃんのかっ、かかか」

「かかか?」

「彼氏とか言うんじゃねーだろうなぁ?」

「はぁ!?」

(なるほど、そういう事ね)

 アルは少し納得した気がした。

 先程の少女?のレイへの態度、レイの姉が変わっているといった言動から察するに、この少女?は極度のシスコンである事が予想される。

 つまりアルが当初懸念していた【娘が見ず知らずの男を連れ帰った】という点で、怒っているんだろうなとアルは考えた。

 その点で言うとアルは当初のレイの提案通り、奴隷や家来といったスタンスで望むのがベストだろうと判断する。

「何黙ってんだよ! 何とか言えコラぁぁ」

「まぁまぁ、落ち着いてお姉さん」

 アルは襟を正すと、にこやかに少女?へと話しかけた。

「俺は何ていうか、レイの奴隷みたいなもんでして……」

(はぁ…… 奴隷か。 何か自分で言ってて悲しくなってきた……)

 精一杯の作り笑顔で、そう答えると少女?は俯きプルプルと震えだした。

「ど…… 奴隷? てっ、てめぇぇぇぇ」

 少女?は声を徐々に大きくすると半泣きの顔でアルを睨みつける。

「そっ、そんなエッチな関係にレイちゃんを……」

(えぇぇぇぇぇ……)

 少女?の特大の勘違いにアルは絶句していた。

「マジで殺す!!!」

 そうアルに告げると、少女は深く息を吐き右手で剣を頭上に掲げる。

「バレリッ……」

 そして左手で刀身を滑らせるように触ると……

「アターーーーック!!!」

 そう叫んだ少女?は目で追う事が不可能な剣撃をアルへと繰り出す。

 ダダァァァァァンッ!!!!!

 少女?が繰り出した剣撃は、凄まじい轟音と共にアルの背後に巨大な穴を空けた。

「のうわぁぁぁぁ」

 あまりの勢いに素っ頓狂な声を上げ倒れ込むアル。

 その背後に開いた、大きなクレーターのような穴の中心には少女?が佇んでいる。

 ポイッ。 ガラン……

 刀身が粉々に砕け、柄だけになった先程まで剣であった物を無造作に放り投げる少女?。

「ちっ。 やっぱ安物じゃ無理か!」

 そう言い放つと、少女?はキッとアルの方へと視線を向けた。

「ていうか避けんな!」

「えぇぇぇ……。 ってか、いきなり何すんだよ! いってーなぁ」

 少女?の放った斬撃が少しだけ掠ったのか、アルは左頬に少し切り傷を負っていた。

 アルは軽く袖で拭うと傷は目立たなくなったが、それを見た少女は不満げな表情を浮かべる。

「完全に捉えたはずなのに、何で当たんねーんだよ!」

「知るかっ!」

 このカオスな状況を何とか打破しようとアルは考えていたが、そこに一筋の光明が差し込んだ。

 この轟音を聞いたレイの登場だった。

「コラーーー! 何してんの、お姉ちゃん! あれほど穴は開けないでって言ったでしょ」

「だっ、だってぇぇ……」

「だってじゃないでしょ! それに剣だってタダじゃないんだよ? あれほど言ったのに全く」

「だってだって! コイツがレイちゃんのエッチな奴隷がどうとか言って…」

「いや、言ってねーし!」

 食い気味に反論するアルに、涙目でキッと視線を向ける少女?。

 その様子を見て、耳まで真っ赤にしたレイが……

「そんなんじゃないの!! 全く。 ごめんなさいは?」

「ふぁい。 ごめんなさい……」

 シュンとする少女?が謝るのを確認したレイは、アルの方へと視線を向ける。

「アルも! 仲良くしてって言ったでしょ! ごめんなさいは?」

「いやっ、俺は被害者だろ! どう見たって悪いのは」

「ご め ん な さ い は !?」

「……ごめんなさい」

 レイの取り成しにより何とかこの場は収まったが、納得出来ない表情をするアルと少女?。

(ていうか、戦乱の跡だと思ってたあの穴とか剣は、全部コイツのせいなのか? やべーガキだ)

 心の中でアルはそう呟きつつも、これから仲良くしていかなければならない少女?に対して……

「えーっと、何ていうか…… ごめん。 俺はアルって言うんだけど…… お姉さんは?」

 若干引きつった笑顔で、右手を差し出し握手を求めるアル。

 少女?は差し出されたその手を、右手でパンっと弾くとアルの顔を睨みつけた。

「バレリア」

 そう呟くと、そっぽを向きながらフンッと鼻を鳴らしていた。

「まっ、まぁまぁ。 これから皆で仲良くして行こうよ! ねっ? お姉ちゃんも良いでしょ?」

「……レイちゃんがそう言うなら…… わかった。 よろしくな」

「……よろしくお願いします」

 不機嫌そうなバレリアに対し、引きつった笑顔で対応するアルであった。
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