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負けたら尻穴を舐めろ!?

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しゃああああ

 香納英人と桜大地はシャワーを浴びていた。互いに視線を合わせないように、どちらも背中を向けている。

「こっち見んなよセンズリマスター」

「それは僕の台詞です。むしろ君が僕の美しい身体に欲情しないかと心配しているぐらいですよ」

「るせえ、俺の方が良い身体しているってんだ!」

 両者の身体についてだがどちらも運動が得意からか、体脂肪率が低く引き締まった身体である。二人の身体の違いを言うなら、桜大地は香納英人よりかは筋肉がのった身体で瞬発力・腕力は彼の方が上であろう。一方、香納英人は桜大地よりも少しばかり身長もリーチも勝っていてスマートぎみである。リーチの求められる競技、そして持久力の求められるスポーツでは彼の方が上であろう。

(身体を洗い終わったら、次なる実験を行う)

 モニターにそう表示され、香納英人はやれやれと言った顔、桜大地は露骨に嫌そうな顔をした。



 二人が戻ると室内の真ん中に何かが置いてある。それが何かと気付いたのは桜大地だ。

「こいつは競技用の腕相撲の台じゃねえか」

(意外とそちらの野蛮人も物知りだな。この星では、アームレスリング、または腕相撲とも呼ばれているらしいな)

「野蛮人ってのは余計だが、物知りっていう言葉に免じて許すぜ」

「これで私達に闘えと言うんですか?」

(その通りだ香納英人)

「おい、あいつだけ名前って俺差別されてねえか?」

(互いに台上でモニターに表示されている体勢をとってから腕相撲を開始する。なお、負けた者にには罰を与えるから双方力の限りを尽くすように)

「おい、その罰ゲームとやらはどんなもんだ?」

(敗者が勝者に性的なご奉仕をするというものだ。今後お互いが進んで子作りをできるように行う一種のコミュニケーションだ)

「!?」

 両者の表情に緊張が走った。

「どっちも嫌だけどよ、こいつのために性的なご奉仕なんて絶っっ対やだ!!」

「気が合いますね。ついでに言うと僕は消毒液の有無も聞きたいですね。彼と触れ合うということは非常に身体が汚染されますからね」

「てめえは俺をなんだと思ってやがる」

「非常に知性の発達したゴミといったところでしょうか?」

「俺を本気で怒らせたようだな! 腕相撲加減しねえからな!」

 モニターには腕相撲の体勢が表示され、香納英人と桜大地は互いに同じ体勢となる。

「力は俺の方がある。圧倒的に有利だ!」

「ちょっと体勢が悪いので変えたいですね。非力な僕のためにハンデをくれませんかね?」

「いいぜ! 体勢ぐらいなんてことはねえよ!」

カーン

 始まりの合図が鳴った。

がきぃ

 両者の掌に強靱な圧がかかった! 力に差のある両者ではあるが、意外にもその腕は全く動かない! つまり互いの力が互角なのだ!  その理由は香納英人側にある。彼は腕相撲に有利な体勢を人知れずとっていた! 彼は自身側に腕が近い方が腕相撲は有利であると即時に理解し、試合開始直前に桜大地了承のもと、腕を自分側に引き寄せていたのだ! さらに自身の体重を腕に載せると良いことも理解し、それも実践している!
 だからといって桜大地も決して頭が悪いわけでない! 原因は理系か文系かの違い、つまり物理を学んでいる香納英人側が力の使い方を学ぶ力学を理解しそれを実践しているのだ!
 しかし、相手に有利な状況に立たれながらも、持ち前の腕力だけで互角に戦えている桜大地もまた凄いのである!

(こいつにだけは負けたくねえ!)

(私が彼に負ける姿は想像したくないですね)

 互いに天まで届く高すぎるプライドがぶつかり合い、この腕相撲は持久戦となった!
 桜大地の腕は既に悲鳴をあげているが、持ち前の根性でなんともないような表情をしながら耐えている!
 対する香納英人も持ち前の天性の筋持久力で耐えている。もちろん彼の頭脳は桜大地の腕の状態がどうなっているかも理解しており、彼がやせ我慢をしている事も承知! 心の中でもう少し苦しめてやろうかと考えている程の余裕もあるのだ!
 つまりこのペースで勝負が続けば香納英人の勝利の可能性は高い!!

(ちきしょう、腕がもたねえ……んっ、待てよ)

 桜大地はこの闘いで気付いた。腕相撲に有利な体勢に!

(なにっ!?)

 桜大地、野性的な直感で香納英人と同じような体勢・力の使い方をすれば有利に立てると理解した! このような猿真似戦法は桜大地も一瞬迷ったが、勝利のためにはこれぐらいと多少のプライドは捨てた! これは香納英人には決して出来ない戦法である!

「どうやら形成逆転みてえだな」

 徐々に桜大地の腕が香納英人の腕を台に近づけていく。香納英人は脳をフル回転させた! この状況から脱出する奇跡的な一手はないかと!

「大地君、唐突ながら、生徒会前に置いてある花瓶を割ったのは君ですよね?」

「えっ?」

 ここでほんの一瞬桜大地の力が緩んだ。千載一遇のチャンスを香納英人は逃さなかった!

ダゥン!

 桜大地の腕が腕相撲の台に押し付けられた。つまり、香納英人は勝ったのだ!!

「汚えぞ! 今ここで言うことかよ!」

「いやあ、肉体的な強さは僕の負けでしたよ。でも、君は何事にも動じない精神的な強さも身につけた方がいいですね」

 香納英人が咄嗟に思いついたのは、肉体で勝てないなら、精神で勝てば良いというものであった。つまり、この場で桜大地の弱みを握っていることを話す事だった。

 事は数日前にさかのぼる。桜大地は格闘技のまねごとをしてうっかり生徒会前の高価な花瓶を割ってしまったのである。彼がその場をごまかすために校内に居座っているネコを生徒会前に連れてきたのだ。ゆえに犯人はネコのいたずらということで、彼におとがめはなしだった。
 しかし、桜大地のファンである女子生徒一名は見ていた! 彼が花瓶を割った場面を! 彼のために告げ口はしたくないと思い、彼女が相談したのが香納英人であった!

「分かりました、彼には僕から注意しましょう。勇気を持って話してくれたあなたには感謝致します」

 実は香納英人はこれを弱みとして握る気しかなかった。なぜなら、彼が桜大地に注意しても何もメリットはないと考えていたからだ! ならば自身が困った時にこの弱みを利用しようと密かに暖めていたのだ。

「とっておきの切り札の一つだったんですがね、それを使わせただけでも桜君、君は大したもんだ」

「うれしかねえよ、ちっ、あああ悔しい! 悔しい! 悔しい!」

 桜大地は床にごろごろと右に左に転がり身体で悔しさを表現した。


「なかなか愉快な姿だ。これだけでも満足だが罰ゲームも受けていただきませんとね」

「そうだ! 罰ゲームはなんだ!」

 モニターに文字が表示される。

(敗者は勝者の肛門を舐めよ)

 一瞬時間が止まり、二人の思考も止まった。そして時は動き出し、両者の思考も動き出す。

「っっっざけんなああ!! こいつのケツの穴を舐めろだってぇぇ!! できるかあああ!!」

チュドーン

 部屋の片隅で爆発が起きた。

(野蛮人よ、命令に逆らうと命はないぞ)

 香納英人は大きくため息をついた。

「桜君、君も僕と同意見ですよ。しかし、ここは互いに嫌悪なる意識は捨てて命令に従いましょう。例え君にいやらしく肛門の味や感触を味わわれても我慢しますよ」

「誰がいやらしく舐めるかよ。さぁさっさとケツを出しな!」

 香納英人はクールにズボンと下着を脱いだ。

「そう素直に脱がれると逆に躊躇しちまうな」

「脱げと言ったの君でしょう。さぁ早く用件をすませなさい」

(説明が不足した。最低限10分間は舐めて貰おう。そして香納英人よ。このような体勢を維持しろ)

 モニターには、尻を相手に向けながら、かつ尻の肉を左右にひろげて肛門を見えやすくする人物像が描かれている。つまり男を誘惑するエロいポーズである。

「流石の僕でも表情に出てしまいますね……」

 香納英人は渋々とそのポージングをし、心底嫌そうな表情を桜大地に向けた。

「えっ?」

 桜大地は一瞬エロいと思い、その気持ちにとまどった。香納英人のお尻は引き締まりつつも綺麗なラインを描いており、肛門も予想よりもグロテスクなものでなく可愛らしく性的興奮を湧きあげるものだった。そして何よりも、自身にとって一番のライバルである香納英人の凄く嫌そうな表情が、彼の性のツボを突いたのだ!

「お前ある意味凄いな、これはどんな男でもいやらしく舐めてしまうぞ」

「無駄口はいいです! さっさと舐めなさい!」

 桜大地は香納英人の肛門におそるおそる触れるように舌で突いた。香納英人は初めて体験する感覚にとまどっている。そして桜大地も肛門を舐めるという体験にどきどきとしていた。

ぺちょり ぺちょり

 桜大地は彼の肛門全体を舐めるように舌を動かした。それだけでは単純で駄目だと思い肛門の周りをなぞるような

「おい、反応がないけど俺のやり方は下手か?」

「いいから黙って舐めて下さい!」

「お前にしては珍しい反応だな」

 桜大地は香納英人がいつものクールな感じが崩れているなと思い、微笑ましく感じている。もう少し面白い反応が見れるかなと思い、趣向を変えてみる。

ちゅうううう

 香納英人は吸い上げられる感覚に動揺した。ある意味舐めるよりも肛門の味というものを分かられそうな感じがたまらなく嫌だった。

「舐めるだけにしてもらえませんかね。それに肛門を舐めて、大腸炎を引き起こす事例も多発しているようですよ」

ぴこりん

 電子音と共にモニターに文字が表示される。

(説明が不足していたな。肛門を吸うことを許可する。そして桜大地よ、むしろ肛門内も味わえ。後、大事な実験身体に病気になられても困るから後で大腸炎防止の薬もやろう)

「おっ、ようやく名前で呼ばれたか。そんじゃま気合い入れてと」

ぬるるる

 桜大地は舌を香納英人の肛門内に挿入した。

「くぅっ!?」

 香納英人は突然の感覚に裏声ぎみな声を出した。なんとも表現できない変な気持ちになっていく。

「お前のこんな姿を見れて俺は最高だぜ」

「貴方はついにホモにでもなってしまったんですか?」

「誰がホモだ! 俺はてめえの尻なら舐めたいと思っただけだ!」

「えっ?」

 香納英人はその言葉に深い意味を感じた。自分はもしかしたら桜大地に求められているのかと。一方、桜大地も自分がどうしてこんな言葉を言ったのかと思った。自分はこいつに特別な感情を持ってしまったのかと。

ピー ピー

(約束の10分だ。二人ともお疲れ様だ。少しばかし休憩の時間を与えよう、互いに身体を洗うなり、薬を飲むなり、心を休めるなり好きにしたまえ)

「は、早く離れたまえ!」

「お、おう!」

 二人は慌てたように元の衣服を着た状態に戻った。
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