Knight of Ace

赤城 奏

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第三章 Aの共闘・スペードとハート

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 まだ日の昇っていない時間に、切り札の森の南側から大きな音がした。そこでは、ジョーカー・ビショップ八体と戦っている女性がいた。
 彼女ーシンラはジョーカー達の攻撃を全て弾いていた。そして、全員が自分から大きく離れると、右足を軽く引いて剣を斜め下に構えた。
「フラッシュ」
 剣は青い光を纏った。
 彼女はジョーカー達の横を光のように駆け抜けていった。そして、最後の一体の横を通り、数メートル先で止まった。彼女が剣を払い鞘に納めると、ジョーカー達は全員青色の光を纏って消滅した。
(やはり凶暴性の増したジョーカーが増えている。それと、昨日のジョーカーは一体…)
「嫌な予感がするな。」
 そう呟いて、彼女は日が昇り始めた空を見上げた。

     *

 ある一室に上級騎士と総司令官が集まっていた。
「…以上が先日起きたジョーカーの異変です。」
 そう言った青年ーミツルギは、再び席についた。部屋は重い空気に包まれていた。
「どういう事だ。ジョーカーの弱体化は分からなくもないが、それがいきなり禍々しくなっただと?」
  オウガは顎に手を当てた。
「分かりません。そもそも、ジョーカーの凶暴性が増したことについても分からないことが多いのにそれ以上となると…」
 ミコトはメガネのズレを正した。
「こ、このままだと、ぼ、僕達でも、危うくなるんじゃ。」
 ツカサは顔を真っ青にして震えていた。
「ふむ、今一度、ジョーカーを調べてみる必要があるか。」
 上級騎士達の様子を見ていた総司令官が顔を顰めてそう言った。そんな彼に視線が集まった。
「総司令官、調べるとは一体どのように?」
 ミコトが不思議そうにそう聞いた。
「ジョーカーを探して、倒す。」
「?生け捕りにはしないのか?」
 オウガはミツルギの言葉に疑問を持った。ジョーカーを調べるというなら生け捕りにした方が良いと思ったのだ。だが、ミツルギは首を横に振った。
「通常のジョーカーならばそう出来なくもないが、凶暴性の増したものや、今回の様なやつを生け捕りにするのは至難の業だ。」
「そうか。」
 それを聞いて、オウガは肩を落とした。
「だが、調べる方法は一つじゃない。」
 ミツルギに視線が集まった。
「ジョーカーを倒すまでの間に、できる限りの観察をする。今までジョーカーの相手をしてきた経験の中から今までと今回の差異を見つける。」
「そうだ。」
 総司令官はミツルギの言葉を肯定した。
「そして、今回の調査は下級騎士達には荷が重い。そのため君たちに調査をしてもらいたい。」
 総司令官は全員を見回した。
「それは僕達全員が、その調査を行うんですか?」
 ミコトが手を挙げて聞いた。
「いや、二人程残ってもらい下級騎士達の補佐をしてもらいたい。」
 全員が頷いた。
「分かりました。ならば今回の調査は俺とミツルギ、ミコトの三人で行います。ツカサはミツルと一緒に下級騎士の補佐をしてくれ。」
「分かりました。」
 ミツルが頷いた。他の二人もオウガの言葉に了承した。
「それでは各自準備をしそれぞれにあたってくれ。以上、解散。」
 全員立ち上がり、部屋を出ていった。

     *

 ジョーカーの調査を行うため、ミツルギ・オウガ・ミコトの三人はスピリット王国との国境付近に来ていた。それまでに数回ジョーカーと対峙したが、どれも凶暴性の増していない兵や象だけだった。
「なかなか現れないな。」
 オウガは辺りを見回しながらそう言った。
「えぇ、南の方が凶暴性の増したジョーカーが多く出ると言うことで来たのですが。」
 ミコトも頷き、オウガに同意した。ミツルギは二人の話を聞きながら周りを見回した。
 すると、彼の耳に何か音が聞こえた。
「二人とも、なにか来る。」
 ミツルギは静かにそう言った。二人は彼の隣に並び、辺りを警戒した。
 そんな三人の前に現れたのは、人間だった。
「!お前たちは、スピリット王国の。」
 彼らの前に現れたのはスピリット王国の上級騎士達だった。
「上級騎士のお前らが、なんでこんな所にいるんだよ。」
 オウガは現れた三人の騎士に問いかけた。
「それはお前らもだろうが。たく、こちとら嫌々やってんのによ。」
  そう言ったのはQクイーンの称号を持った青年ーマサミヤだ。彼はミツルギ達を睨んでいた。
「まぁまぁ、彼らも僕達と同じようにジョーカーのことを調べに来たんですよ。ま、優秀な僕達と違って無能な彼らに分かるわけもないでしょうけど。」
 マサミヤにそう言ったのは10の称号を持った彼よりやや幼い青年ーヒロキだ。
 二人の言葉を聞いたオウガとミコトは苛立っていた。
「二人とも、そこまでだ。」
 まだなにか言おうとしていた二人を止めたのは、シンラだった。シンラは二人の前に立ち、ミツルギ達に詫びた。
「こちらの者達がすまない。こちらもジョーカーのことを調べるためにここに来たのだ。すまないが、少しそちらのAエースと二人だけで話がしたい。」
 シンラはこれからのことを決めるため、そう提案した。オウガとミコト、マサミヤとヒロキはそれに乗り気では無かった。
「分かった。」
 だが、ミツルギがそれを了承してしまった。四人はミツルギとシンラを止めようとした。
「おいちょっと待て。二人だけって危ないだろ。」
「そうですよ。シンラさんがミチュの奴らに穢されてしまいます。」
 マサミヤは焦ったように、ヒロキはミツルギを睨んでそう言った。
「ミツルギ、おまっ、もう少し考えて言えよ。」
「そうですよ。もし相手がなにかしてきたらどうするんですか。」
 オウガは呆れたように、ミコトは責めるように言った。だが、ミツルギとシンラは彼らの言葉に譲らなかった。
「大丈夫だ二人とも。あいつは同じAとして信用できる。」
 シンラは二人に自信を持ってそう言った。
「大丈夫だ。あいつはそんなことをするような奴じゃない。」
 同じように、ミツルギも二人にそう言った。
 ミツルギとシンラは互いを見て頷くと、四人から離れたところへ向かった。

 四人から離れた二人は、声が向こうにまで届かないところにまで来た。
「まさか、こんなに早く会うことになるとはな。」
 シンラが少し苦笑して言った。
「あぁ。本当なら、二日後にあいつらと一緒にだったのにな。」
 ミツルギも同じように返した。少しの間そうしていたが、二人はすぐに真剣な表情をした。
「シンラ、お前達がジョーカーを調べに来たのはなぜだ?」
 ミツルギがシンラにそう聞いてきた。シンラは少し考え、ミツルギを見た。
「私達が調査をしに来た理由は、先日対峙したジョーカーに妙な事が起こったからだ。」
「妙な事?」
 ミツルギが問い返し、それにシンラは頷いた。
「何故かは分からないが、対峙していた兵数体が急に共喰いの様なものを始めたんだ。」
「何!?」
 ミツルギはシンラの言葉に驚いた。ジョーカーは互いを攻撃することはあっても、共喰いをすることは無かったからだ。
「それで、どうなったんだ。」
 ミツルギは先を促した。シンラもまた話し始めた。
「最終的に一体だけ残ったのだが、そうなった途端、急に大きく吠えたんだ。そして、ジョーカーの体を灰色の光が包んだかと思うと、体中に禍々しい棘を生やしたんだ。」
「まさか!」
 シンラの言葉にミツルギは何かに気付いたような反応をした。その反応に、シンラは不思議に思った。
「ん?どうした、ミツルギ。」
 シンラはミツルギに問いかけた。ミツルギは俯かせていた顔を上げた。
「そいつ、もしかして今までよりも桁違いなほどに凶暴性と身体能力が上がっていなかったか。」
「!まさか、そっちにも同じ事があったのか?」
 シンラはミツルギの言葉に驚き、すぐに、彼がそれを知っている理由を悟った。ミツルギは彼女の言葉に首を振った。
「いや、少し違う。こちらでは、対峙していた弱体化した后がそちらのように光に包まれ、体中に棘を生やしたかと思うと、増した凶暴性と身体能力で襲って来たんだ。」
 ミツルギは彼女の言葉を訂正し、同じように先日起こったことを話した。それを聞いてシンラは考えを巡らせた。
「成程な。だが、どちらにしても原因がわからない今下手に動くのは危険だ。」
「あぁ。国同士のこともある、互いに干渉しないというのが妥当だろう。」
「確かにな。」
 二人は頷き合い、それぞれの仲間の元へ戻って行った。

     *

 二人は仲間たちに先程決めた、“邪魔はしないがお互い干渉しない”ということを伝えた。その事に少し不満を持つ者もいたが、何も言わなかった。
 だが、二人が話し合ったジョーカーのことについては、何も言わなかった。
 そして、お互い離れたところでジョーカーを見つけては観察し、異変が無ければすぐに倒すというのを繰り返していた。

「なぁ、あっちのA、女のクセに良くやるよな。」
 オウガは離れたところで戦っているシンラ達を見て言った。丁度ジョーカーを倒し終えた時、向こうでシンラ達が戦い始めたのだ。そこで、休憩をしていた時オウガが先程のことを言ったのだ。
「当たり前でしょう。彼女もミツルギと同じ、王国騎士の中でも最強と謳われるAの称号を持っているんですから。」
 ミコトがオウガの言葉に返すように言った。
 二人がそんな話をしている中、ミツルギは静かに三人を見ていた。

「何を見ているんですか?シンラさん。」
 ヒロキはシンラに問いかけた。シンラ達もミツルギ達と同じように休憩していた時に彼らのことを見ていた。
 シンラはヒロキの問に答えず、静かに向こうを見ていた。
「あっちのAもやるな。」
 マサミヤはミツルギの剣技をみて言った。
「あんな無愛想なやつでも、一応は王国騎士最強のA様ですからね。ま、シンラさんにはかないませんけど。」
 ヒロキは拗ねたようにそう言った。シンラは二人の会話には入らず、小さな声で呟いた。
「いつ見ても美しいな。」
「?何か言ったか。」
 それに気づいたマサミヤがシンラに問いかけた。
「いや何でもない。」
 シンラはそう言うと、立ち上がって新たに奥に現れたジョーカーに目をやった。
「こちらも行くぞ。」
 シンラの言葉に三人はまたジョーカーに向かっていった。

 数時間が経ち、両者とも大分の数のジョーカーを倒した。
「結局出ませんでしたね、先日のジョーカーと同じ異変の起こったものは。」
 ミコトが二人の方を向いてそう言った。それにオウガも頷いた。
「あぁ。今回はここで切り上げよう。」
 オウガの言葉にミツルギも頷き、剣を納めた。後ろを振り返ると、向こうも帰還準備を始めていた。
 両者が準備を終えようとした時、それは起こった。
『グォォォォ』
森の奥からジョーカーの吠えた声が聞こえた。
『!!』
 全員剣を抜き、一方を睨んだ。
「ミツルギ、さっきの声って。」
 オウガが顔を逸らさずにミツルギに問いかけた。ミツルギもその問いに頷いた。
「あぁ、先日と同じ声だ。」
 ミツルギの言葉に二人は息を飲んだ。
「ちっ、やっとお出ましかよ。出てくんのが遅すぎんだよ。」
「まぁまぁ。でも、やっとと言うのは同意見です。」
 マサミヤが舌打ちをしてそう言い、それを宥めるようにヒロキが言った。
 そして、両者の前にジョーカーが現れた。現れたのは体中に禍々しい棘を生やし、以前までよりも凶暴性の増したクイーンだった。
「なっ、二体同時だと!?」
 オウガは驚いてそう言った。声は出さなかったが、全員同じように驚いていた。
  現れたジョーカーは二体とも・・・・凶暴性が増していたのだ。
「来るぞ。」
 シンラがそう言ったと同時に、ジョーカー達が物凄いスピードで向かって来た。そのスピードは凄まじく、ミツルギとシンラ以外追いつくことが出来なかった。
「ぐっ」
「うぁっ」
 オウガ達四人はジョーカー達の攻撃を受けてしまい、倒れた。四人はなんとか立ち上がろうとするが、受けたダメージが大きく再度倒れてしまった。
 そんな四人にジョーカー達が追撃しようと近づき、腕を振り上げた。ジョーカー達が腕を振り下ろした時、二つの剣によって防がれた。
「!ミツルギ。」
「シンラさん。」
 防いだのはミツルギとシンラの剣だった。二人はジョーカー達を押し返すと、胴を斬りつけ、後退させた。
「大丈夫か。」
 ミツルギは目だけ後ろを向き、オウガとミコトに問うた。
「なんとか、な。」
「僕も、です。」
  二人は途切れ途切れにそう返した。それを聞いて、ミツルギは口元に小さく笑みを浮かべた。「そうか。」
  ミツルギはそう言うと、顔を引き締め、前に出た。
「無事か。」
 シンラは体ごと二人の方を向いて言った。
「あぁ。」
「大、丈夫、です。」
 マサミヤは短く、ヒロキは少し苦しそうに答えた。シンラはそれを聞き、ジョーカー達の方を向いた。
「お前達はここにいろ。あいつは私がやる。」
 シンラはそう言い、ミツルギと同じく、前に出た。

 ミツルギとシンラは互いの横に並んだ状態で、静かに話し始めた。
「まさか、こうなるとはな。」
「あぁ。だが、仕方ない。ジョーカー達を倒すためだ。」
 シンラの言葉にミツルギは頷き、そう返した。
「いくぞ。」
 二人は同時にジョーカー達に向かっていった。

     *

 オウガ達四人はミツルギ達の戦いを呆然と見ていた。
「すごい。」
 ミコトがそう呟いた。他の三人も何も言わなかったが心情は同じだった。
 四人が見ている先ではミツルギとシンラがまるで舞っているかのようにジョーカーと戦っていた
 ミツルギが相手の胴を斬りつけ、その隙をもう一体が後ろから腕を振りおろせばシンラが横から腕をはね上げ二人の間に入るとジョーカーを斜めに斬った。二人は一度背中合わせになると、すぐに目の前の相手に向かっていった。
 二人は互いにフォローしあい、一度もジョーカーの攻撃を受けることなく相手を追い詰めていった。
「なんつー奴らだ。」
 上体を起こし、その場に座り込んだオウガは呆れたようにそう言った。隣で同じように座り込んだミコトも同じ感想を持った。
「急な戦闘にも拘らず、あそこまで合わせることが出来るなんて。」
 そんなミコトを横目に見ると、オウガは続けて言った。
「お前、今すぐアレと同じことやれって言われて出来るか?」
 オウガは真剣な表情のままそう言い、そんな彼の言葉にミコトは肩を竦めた。
「無理ですね。オウガさん達とならあそこまでとはいかずとも出来るかも知れませんが、他国の王国騎士となれば、不可能です。」
「だよなぁ。」
 オウガは後ろに手をつき、苦笑してそう返した。だが、空を仰いですぐに、顔を顰めた。
「綺麗だ、シンラさん。」
 二人と同じように座り込んでいたヒロキは目を輝かせてそう言った。
「あいつら、一体どうやったらあんなふうに戦えんだよ。」
 ヒロキの横で座り込んでいたマサミヤは片膝を立て、拗ねたように言った。そんな彼の言葉にヒロキは顔をニヤニヤさせていた。
「マサミヤさん、もしかしてシンラさんが羨ましいんですかぁ。」
 楽しげなヒロキの言葉にマサミヤは顔を赤面させた。
「なっ、ンなわけねぇだろ。俺はただ、」
 マサミヤは焦ったように立ち上がった。そして、シンラ達の方に目を戻すと、真剣な表情をした。
「ただ、戦り合ったこともない奴とあそこまで合わせられんのが気になっただけだ。」
 そんなマサミヤを見てヒロキは顔を顰めると、同じように立ち上がり彼の横に並んだ。
「まっ、そういう事にしておきますか。」
 ヒロキはいつものふざけた様子で軽く返した。マサミヤはその口調にイラッときたが、ため息を一つ付いて気を鎮めた。
 そして、彼らの戦いを見ていた四人は今までの明るさが嘘だったかのように暗い表情をして俯いた。
「今回のことを上に報告すべきか、それとも。」
 ミコトは苦々しくそう言った。
「国のことを思うならば報告するのが良いんですが。くっ」
 ヒロキは手を握りしめた。
 オウガやマサミヤも二人と同じように悩んでいた。
 彼らが悩む理由は四つの国の関係にあった。かつてジョーカーが現れる前までは領土を巡った戦争を幾度となく起こしていた。そのため、ジョーカーが現れた今でもその関係性が崩れることはなく、長い休戦状態が続いていた。もし、今回のミツルギ達の行動を上に報告した場合、ミツルギとシンラは罰せられ、最悪の場合死罪となってしまう。
 そのため、四人は悩んでいた。そしてお互いを見て一度頷いた。

 四人から離れた場所で戦っているミツルギとシンラは、剣を振るいながらも言葉を交わしていた。
「今回のことが上にバレたら、最悪の場合死罪だな。」
 背中合わせになったミツルギにシンラがそう言った。彼女の方を横目に、ミツルギは静かに問いかけた。
「そうなった時、お前はどうするつもりだ。」
 その声音は少し悲しそうだった。それを察したシンラは軽く目を見張るも、安心させるように返した。
「もし死罪となるならば、国を出るさ。お前達と共に居たいからな。」
 それを聞いてミツルギは口の端を軽くあげて笑った。
「そうか。なら、俺もそうしよう。俺もお前達と居たいからな。」
 二人は笑みを零すと、すぐに真剣な表情をして流し続けた攻撃を振り払い、懐に飛び込むと下から切り上げ続けざまに胴を薙いだ。ジョーカーは大きく後退し膝をついた。
 二人は右足を引いて腰を落とし、剣を顔の右横に水平に構えた。
『フォア・カード』
 二人の剣は紫色の光を纏った。二人は同時に駆け出すと、ミツルギは右上から斜めに斬った。
  斬られたジョーカー達は紫色の光に包まれて消滅した。

     *

  二人は剣を納めて仲間の元まで戻った。
「大丈夫か。」
 座り込んでいたオウガとミコトは駆け寄ってきたミツルギを見て立ち上がった。
「平気だよ。ミツルギの方こそ怪我はないのか?」
 オウガが肩を竦めてそう返した。横でミコトも頷いた。
「あぁ、問題ない。」
 ミツルギも頷き返した。それを聞いて二人は方の力を抜いたが、すぐに真剣な表情になった。
「お前達、無事か。」
 同じようにシンラもヒロキとマサミヤに声を掛けた。
「あぁ。」
「大丈夫です。」
 二人もすぐに返した。そしてヒロキが心配そうな顔をしてシンラを見た。
「シンラさんは大丈夫なんですか?」
 その言葉にシンラは頷いた。
「平気だ、あいつが居たからな。」
 ヒロキはそれに安堵したが、マサミヤと顔を合わせ、頷いた。

 マサミヤ達四人は互いに頷きシンラ達に向き合った。
「ミツルギ、シンラさん。今回のあんたらのことが上にバレたら、最悪の場合死罪になる。」
 四人を代表してオウガがそう言った。その言葉に二人は動揺することもなく静かに受け止めた。「あぁ。」
「分かっている。」
 それを見て四人は動揺した。だが、すぐにオウガが続けた。
「だから、俺たちは今回のことを黙っていようと思う。」
 二人は目を見開いた。そして、焦ったようにシンラが言った。
「だが、それだとお前達も」
「分かってるよ、ンなことは。」
 それを遮るようにマサミヤが言った。彼の後ろからヒロキが笑って前に出た。
「僕達はあなたを失いたくないんですよ。だからこの位へっちゃらです。」
 シンラは目を見開いたまま、ヒロキを見た。
「もちろん、それは俺達も、だ。」
「僕達もあなたを失いたくないんです、ミツルギさん。」
 オウガとミコトも二人と同じように笑っていた。
「お前達。」
 ミツルギとシンラは少しの間何も言えなかった。そして、四人に向って深く頭を下げた。
「済まない、お前達をこんな事に巻き込んでしまって。」
「お前達まで、命を危険に晒してしまった。」
 二人の言葉に四人は反論しようとしたが、顔を上げた二人の表情に何も言えなかった。
「だが、お前達の言葉はとても嬉しかった。」
「ありがとう。」
 二人は柔らかく微笑んでいた。四人は見たこともない笑みに驚いていたが、すぐに笑い返した。
 そして、六人はそれぞれの国へ帰って言った。
 ミツルギとシンラの口元には柔らかな笑みがあった。
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