電脳恋愛のすゝめ

コトシナミノル

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第6話 君の声 僕の声

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 あれから1週間後、ついにこの日がやってきた。
 YUNIさんとの狩りの日……そして僕らの今後を決める大事な日だ。
 約束の時間まではまだまだ時間があったけれど、僕は待ちきれずに1人で狩りをしていた。

「久村の言うとおり、今の僕はちょっとおかしいのかもな……」

 僕は無心でコントローラーを動かし、その場の状況に応じた最適解を選び続ける。
 標的は狼型モンスター【フェンネル】、その大きな爪と牙から繰り出される鋭い攻撃を紙一重で避け、できた隙を弓矢で射抜く。

「AHH!?GAHHHHHH!!!!」

 放たれた全ての矢は命中し、フェンネルの身体が破壊された。狼の巨体が大きくのけぞり、大きな隙が生まれる。

「……ッ……!!」

 その隙を逃さず僕は【決別のジャッジメント一矢アロー】を叩き込む。
 そしてフェンネルの体力は尽き、画面にクエスト完了の文字が表示された。


 こうしていると思い出す。
 僕が初めてこのゲームをプレイした時のことを。

 僕は昔からそこそこ何でもできた。
 授業を聞けばテストで困る事はなかったし、どんなスポーツも少し齧れば並の同級生よりは上手くできた。
 しかし、どれも結局は止まりで終わった。
 塾に通うのが当たり前で、かつ元々秀才な同級生にはテストの点数で敵うことはなかったし、サッカークラブの出身で将来プロ入りと噂された同級生からボールを奪えたことは一度もなかった。
 どれもそこそこで止まり、何かを極めるといったことができない人生だった。
 そのことに気づいた時、僕は初めて自分の人生というものに絶望したんだと思う。
 きっと自分は何かを成し遂げることもできず、何者にもなれないまま漠然と人生を無駄に生きて無意味に死んでいくのだと。
 あの時まではそう思っていた。
 あの時、とはご想像の通り僕がゲームに出会った日だ。
 初めてやったゲームはモンフェスではなく「トワイライトデスティニー」というRPGである。当時僕の姉はハマっていたゲームを自身が受験を期にやらなくなったため僕に譲ってくれた。それまでゲームをやったことのない僕は、未知の体験に最初こそ戸惑ったものの、どハマりするのにそう時間はかからなかった。
 正直対象年齢に比べればストーリーは難解で、アクション要素が強めなゲームであったため、敵を倒すのに苦戦しっぱなしだった。けれどそこで僕は諦めず敵の動きを研究し、自身のレベルを上げつつ装備を整え、あとはひたすらトライアンドエラーを繰り返すことでどんな相手も倒すことができた。
 現実の世界ではどんなに頑張ってもそこそこで止まってしまっていた僕だったが、ゲームの世界は頑張れば頑張っただけ強くなれた。そのことを知った時には僕は既にどっぷりゲームの沼にハマっていて、その沼でもがいている時に見つけたのがモンフェスだった。


「そろそろ時間か……」

 時刻は21時。
 いつも僕らが狩りをする時間。そして

〈YUNIさんがあなたをパーティに招待しました〉

 どうやらYUNIさんは僕の提案を受け入れてくれたということらしい。
 ゲーム本体のアプリを起動し、パーティに参加する。
 この瞬間、僕とYUNIさんのパスが繋がり、ボイスチャットは開始された。
 さて、緊張の第一声である。
 こんばんは?あるいは初めまして……な間柄じゃあないか。まぁもうなんだっていいや。
 だから、僕は

『YUNIさんこんばんは!KUONです。改めましてよろしくお願いしますね!!』

 ごく普通に、当たり前に、当たり障りのない挨拶をする。

『……』

 しかし、返事はない。
 あれれーおかしいぞ~?
 YUNIさんの声が聞こえないな~?
 ……おっとこれはいけない。
 危うくヒーローショーのお姉さんムーブをかましてしまいそうになった。……では気を取り直して

『YUNIさん聞こえてますかー?回線の調子悪そうだったらテキストチャットでも大丈夫ですよ!』

 と投げかけてみる。
 僕も久村と他のオンラインゲームをやる時、回線の状況によっては音声通話がうまくいかない時がある。こういった点もボイスチャットのデメリットの一つだなぁと思っていると

『……す』

 微かに、何かが聞こえたような……?
 もしかしてノイズかな?本当に回線の調子が悪いのかも……という心配は杞憂に終わることとなる。

『こ……こ……こ……こん……』

『こん?』

『こんばんは!!!!(爆音)』

『うわぁ!?』

『ぴゃっ!?』

 突如耳元で放たれる爆音に、僕は思わずびっくりしてしまった。
 その声の高さからすると……どうやらYUNIさんは女性らしい。テキストチャットの時といい今回といい、あのおっさんアバターとの乖離がとどまるところを知らない。

 うーん……というかこの声
 

『えーっと、YUNIさんですか?』

『あ、ひ、ひゃい!たか……じゃない!違います!いや、違わなくはないんですけど!あの、私は!』


 こんな時なのに、僕は先日のことを思い出していた。

『あ、よかった~僕、2年A組の紬《つむぎ》久遠《くおん》って言います!高田ユニさんでしょうか?』

『そ、そ、そ、そう!です!!』

 そして今

『YUNIです!よろしくお願い……します!!』

 そんなはずはないと思いつつも、どこかでそう思わずにはいられない。
 その、どこか人と話し慣れていないような彼女の声が先日家庭訪問した時にインターホン越しに会話した彼女……高田ユニのものとそっくりだったからだ。
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