電脳恋愛のすゝめ

コトシナミノル

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第7話 高田ユニ

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『私がタゲを取るので、ギミックの発動お願いします』

『了解!……ナイス誘導です!岩石落とします!!』

『さすがKUONさん。30秒で気絶スタンとるのでタメ技お願いします』

『アロー入りました!』

『ありがとうございます。……とどめは任せてください』

 YUNIさんの大剣がモンスターの弱点部位に叩き込まれ、クエスト完了の文字が表示された。


『いやー、さすがでしたねYUNIさん。特にあの未来予知みたいな【極み斬り】!』

『あ……へ、へへっ……あ、ありがとう……ございます』

 ボイスチャットの解禁後、僕らの記念すべき初めての狩りは何事もなく終わった。
 最初はおどおどしていたYUNIさんも狩りになると急に人が変わったようになり、的確な指示や瞬時に僕とタイミングを合わせてくれるプレイスキルの高さは彼女が一流の狩人であることを僕に再認識させた。
 こうしてクエストが完了すると、すぐにおどおどしたYUNIさんに戻ってしまうのだけど。

『早速次行きましょうか!次は何行きます?』

『あ、えと、すみません……今日はもう疲れてしまったので……また今度でもいいですか?』

『……え?もうですか?』

『あの……私……恥ずかしながら……ひ、ひきこもりでして……ここまで人と会話、するの久々だったんです』

『YUNIさん……』

『あ、べ、べつに他意は無いんです!た、ただ、ごめんなさい!ちょっと……今日は、もう』

『わかりました。事情を話してくれてありがとうございます。また今度にしましょうか』

『あの……本当にすみません』

『気にしないでください。あと、ボイスチャットの提案飲んでくれてありがとうございました。おかげで今日はもっと楽しかったです!』

『あ、そ、それは私もでした!』

『ふふっ……それは良かった。次の日時はまたメッセージ送りますね。それではYUNIさん、おやすみなさい!』

『ひゃい!?お、おやすみ……なさい!』



 翌朝、ホームルーム前。

「高田ユニ?……あー、確か1年の時いたような……」

「というか、今も同じクラスだよ」

「そういやそうだな。でも、2年になってからは1度も学校に来てないんじゃないか?」

「そうみたいだね……1年の頃の彼女はどんな子だった?」

「1-A時代のかー……いうて話したことすらないしなぁ……いっつも教室の隅でゲーム機いじってたとか?……あー、でも」

「……?」

「一時期牧村まきむらたちと仲良かった気がするわ」

「牧村って……あの牧村まきむらかえでか?」

「そうだよ。1軍女子のあいつが自分から絡みに行ってるのは珍しいなーって感じだった」

「確かにね。一体どんな関係だったんだろう……?」

「知らね。牧村に直接聞いてみろよ。……にしてもなんで急に高田のことなんて

「そうか、……じゃあ聞いてみるか」

「は?……あ、オイ!!」

 久村との会話を早々に切り上げ、僕は目的の席へと向かう。
 そこには女子の群れができていて、各々僕にはよくわからない話題で盛り上がっている。
 そしてその中心には

「牧村さん、ちょっといいかな?」

 僕が声を発した瞬間、教室の時が止まった気がした。
 考えてみればこうして牧村さんと面と向かって話すのは初めてのことかもしれない。
 そんな僕がいきなり彼女に話しかけるのはもしかしたらちょっとした事件なのか?
 ……ま、どうでもいいや

「えーっと……紬くん?……私に何か用?」

 彼女が振り向く動きに合わせて艶を持った黒髪がさらりと揺れる。
 そして少しの警戒心と意思のこもった強い瞳が僕を見据えた。
 なるほど……やはり彼女は一軍女子だ。

「いきなりで悪いんだけど、高田ユニさんのことについて聞きたいことがあるんだ」

「……なんですって?」

「……?聞こえなかったかな?牧村さんは1年の頃高田ユニさんと仲が良かったって

「知らない」

「え?」

「高田さんのことなんて私は知らない。……だから、これで話はおしまい」

「いや、でも」

「紬くん」

「……っ!?」

 こいつ!?僕の足を踏んでる!?
 しかも表情は崩さず、そして他の生徒からは見えない絶妙なアングルだ。

「いきなりプライベートな事を聞かれるほど私たち……別に仲がいいわけじゃないよね?」

 ぐりっ

 そして僕の足を踏んだまま体重をかけてひねる。辛うじて声を出さなかった自分を後で褒めてやりたい。
 ちくしょうこの女……いや、冷静になれ紬久遠。
 たぶんこのまま彼女に問い続けても特に新しい情報は得られないだろう……ならば

「あはは……た、確かに僕の方もちょっと強引だったかも……いきなりお邪魔しちゃってごめんなさい!それじゃっ!!」

 戦略的撤退。
 背後に突き刺さる女子の目線をなんとかやり過ごし、僕は自分の席へと戻る。
 たぶんこの一連のやり取りで半年ぐらいは寿命が縮んだ気がした。


「おまえバカか?バカなのか!?」

「バカでーす」

「うっさいバカ!いきなり牧村にケンカ売る奴があるか!?」

「しょうがないだろ、聞きたいことがあったんだ」

「高田のことだろ?そうならそうでやり方とか順序ってもんがあるだろうが!……てか、そもそもなんでそんなこと聞くんだ?前から変な奴だとは思ってたが、今日は特におかしいぞおまえ」

 久村の言うことはもっともである。
 僕だって自分が他人のためにここまで行動できる人間とは思わなかった。
 自分で自分が恐ろしい……だけど、原因に心当たりはもちろんある。
 それは昨夜のボイスチャット中に生じたある疑念……すなわち

 YUNIさんは高田ユニである

という疑念。その疑念を確信に変えるため、僕は今日、一つ行動を起こした。
 果たしてその行為にどんな意味があるのか……現時点の僕にはわからない。僕がやろうとしていることはたぶん誰のためにもならないし、僕自身へのメリットも薄いだろう。けれど

「僕は知りたいんだ」

 あの強さの秘密を、そして

「友達のことを」

 例え電子の世界の繋がりでも、自分と肩を並べてゲームを楽しんでくれる友人のことを。


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