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本編

01 ショーに出たいんだけど。

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ウリ専指名No.1。
店でもグループでも首位をキープして数年が経った。

何度かプレッシャーに挫けそうになった事もあるが、元々ポジティブシンキングな俺は何とか自分なりの生き方を身につけ、未だに病む事なく看板として働いている。

しかしそんな俺にも予期せぬ事が起こった。


◇ ◆


「え、お金がない?」

久しぶりに呼び出した元同僚兼ライバルだったひなたの口からは驚いた様な声が出た。

「うん。俺ずっと首位キープしてるからさぁ、友達とか仕事仲間とかに強請られてぇ~色々奢りまくってたんだよねぇ~そしたらまさかのマイナスんなっちゃった。えへ」

「えぇ…えへじゃないよ。給料って凄い貰ってるはずだよね。どんだけ奢ったの?」

「あははーいやーやり過ぎた。まぁ一瞬だったわ。んで今日ひなたを呼び出したのはさぁ……お前、ショーに出て大金稼いだみたいじゃん?流石に金貸してくれとか頂戴とかは言わねーよ?だ・か・らぁ。俺とも出てよ。ひなたくらい可愛いと俺もやる気漲っちゃうしぃ」

「は?無理だから。勝手に決めんな」

「わー怖ぁい」

今日ひなたを呼び出したのはこの為だった。

裏世界でパートナーショーという変態なショーが開催されており、そこで優勝出来れば面白い程の賞金を貰えるとの噂があった。

俺もそっちの世界の話はちょこちょこ入ってきていたが、正直本当にそんなやばいショーが実在しているとは思っていなかった。

しかし、同じ店で働いていたひなたが出場し、優勝したという情報が入ってきて本当に開催されているという事を知った。

「まぁまとまったお金が必要ならエントリーはするけど、パートナーとしては出ないよ。俺恋人出来たし」

「えっ恋人出来たんだぁ?一人大好きだったのに~」

「うん。ショーのパートナーの子と付き合う事になってさ」

「わぁーすげー羨ましい~じゃあ俺とその子がパートナーで出るから貸してよ」

「しばくよ」

「ひゃ~怖~。んま、そんな冗談はさておきさ。本当に金には困ってるからエントリーしてほしいんだけど。誰かパートナーとして出てくれるネコちゃん紹介出来ない?俺完全にバリタチだからさ~」

俺がそう言うと、ひなたは困ったように眉を顰めてスマホを確認し始めた。そんな姿を頬杖をつきながら眺め、注文していたアイスコーヒーを飲んで返事を待った。

「逆にタチとして出れる人なら何人かすぐ紹介出来るけど、律くんはネコになる気はない?」

「えー俺がネコー?いやー無理無理ーした事ないしー。それにみんな萌えねーだろ?ああいうショーってネコちゃんにかかってんじゃん。みんなエロくて可愛い反応を望むモンでしょ?」

「そうだけど、律くんってかなり整った綺麗な顔してるじゃん、それに」

「え、何それ告白~?」

「は?」

「はい、ごめん続けて~?」

「…それに、ウリ専指名No.1って肩書きは大きいよ。正直俺から見た律くんって華奢でスラッとしてるし、ネコでも余裕でいけると思うよ。攻められた事ないなら、俺の先輩で凄く上手な人が居るからその人に調教してもらって感じる様になれば?」

「んー……ま、そんな得体の知れないショーに出てくれる人なんて中々見つかんないよねぇ。俺を指名してくれるネコちゃん達を出すわけにはいかないしなぁー。その人ってどんな人?写真ある?」

「あるよ。こんな人。名前は理央さんって言って俺の先輩だから律くんより2つ年上だよ」

見せてもらったスマホの画面には、淡い灰色のセットアップスタイルで細身の男性が写っていた。

髪の毛は格好良くセットされており、顔は王子様の様な透明感がある奴だった。

「うわ、かっけー。こんな人実在すんだぁ?え、でも俺パートナーになれる?見劣りしない?」

「全然問題ないよ。まだ少しエントリー期間まで時間があるから自分で探すなら探してみてもいいけど。理央先輩、見た目もいいけどテクニックも凄いから、ショーで何度か優勝してるよ」

確かにこの顔でテクもありゃー、人気は出るだろう。今から他の人探すにしても出てくれる奴なんて居ないだろうし。

ズズッと最後までアイスコーヒーを飲み込み、少しだけ悩んだ後、小さく気合いを入れた。

「っしゃ!んじゃこの人紹介してもらおっかなー本当はひなたみたいなクールな奴を蕩けさせたかったんだけどなー?だめー?」

「俺は無理。じゃあ理央先輩に連絡先送っとくね。あとは二人で話進めて」

「へーい。ありがとなー。ショーって詳しいルールあんの?」

「うん。ルール送っておくから、先輩に会うまでには簡単でいいから目を通しておいて」

「おけー、ありがとな~」

「ま、無理しないでね。あと、俺源氏名変えたからこれからは響って呼んでよ」

「響ー?ん、おけおけ」

送られてきたショーのルールに目を通していたので生返事だけすると、ひなたも頼んだホットコーヒーをゆっくりと飲んでいた。

「じゃあ俺そろそろ帰るよ、また何かあればいつでも連絡して。理央先輩ドSから粗相のない様にね」

「へいへいー」

最後の発言はルールを読むのに必死で俺に届くことはなかった。

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