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そんな日々が続いたある日、いつものように扉が開くと、入室してきたのは三原ではない男だった。
「希望くーん、久しぶり。俺のこと覚えてるかな?」
「…てめぇ誰だよ」
「わぁ、すごい。まだそんな反抗的な態度取れるんだ。君が来てから一週間は経ったよね?へぇぇ。毎日三原の鬼畜攻めを受けてまだ元気なんてすごいなぁ。っていうか君が来た日に名乗ったじゃん。俺は三原と同時期にここに来た日野だよー?」
三原も三原でわざと煽ってくる口調で腹立たしいが、こいつは終始チャラチャラしてる感じがイラつく。
「知らねーよ。んだよ」
「えへへ。俺、この前担当してた子が無事に終わったからフリーなの。折角だから可愛い希望くんと仲良くなろうと思ってねぇ」
サラリと放った『終わった』という言葉に俺が目を見開くと、日野は悪戯っぽい笑顔を向けてきた。
「あ、興味持ってくれた?一週間経ったから君に朗報。ここには定期的に君みたいな人が送られてくるの。そしたらもちろん俺たち職員は足りなくなってくる。じゃあどうするか?──徹底的に犯罪者を調教して更生させ、こっち側に来てもらうの」
「……じゃあお前がこの前担当してた奴は」
「俺や三原と同じでここの職員という立場になりました。もちろん見せかけの反省や忠誠心でこっち側に来る人も居るから数ヶ月はまだ完全に俺の手から離れたわけじゃないんだけど」
「一生ここから出れないってのは?」
「人による、としか言いようがないね。まぁこの施設が出来てまだ間もないからここに送られてきた人間が外に出た事例はまだないよ。一番外に近付いているのは三原なんだけど」
「…あ?」
「三原も俺も、みんな元々はここに送られてきた君と同じ立場の人間だったの。当初は本当に更生施設だったから、俺達が受けたのはあんな変態チックな責めではなかったけどね。まぁ俺たちのことは置いといて──」
数ヶ月経って初めて聞かされた情報に頭がついていかず、何も言うことが出来ずに居ると、日野は俺にひとつの鍵を見せつけた。
「ここに送られてきた犯罪者を5人、完全に調教して更生させると、職員はここから出ることが出来る。そして三原は今までしっかりと4人更生させた。──そして最後、5人目の希望くんの更生が完了するとここから出れる」
「…」
「どうする?三原を解放し、ここの職員として真面目に更生するか、三原の解放を阻止して逃げ出すか」
「…こんなことしてお前は何がしたいの?」
「そうだね。俺は三原が好きだからずっと二人でここで生きていきたい──なーんて綺麗事は無しで、俺より先に出るなんて許せない。だから俺はあいつの邪魔をしたいだけ」
その表情は先ほどまでの悪戯っぽいものではなく何処か真剣で、正直その言葉が嘘か本当か分からない。そもそもこの話自体本当かも分からない。
「だから俺は希望くんに手を貸したいの。これは君の足枷の鍵。部屋を出て右へ進んでいくと外に繋がる扉がある。今日はそこの見張りをしてるのは俺だから数時間は見つからない。──君が三原をここへ縛り付けたいなら、逃げ切れると思うなら。頑張ってみない?」
飛んできた鍵を受け取り、おそるおそる足首についた枷に嵌めると、小さな音を立てて解錠された。
散々ここの施設の恐怖を覚えさせられている体はすぐに行動することが出来ず、ただ立っていることしか出来ない。
(本当にこいつを信じていいのか)
その不安もあるが、足枷を解放しただけでこいつも罰せられるはず。外に出たい人間がそんなリスクを犯すのだろうか。
(本当に、俺に賭けてるのか。罠か)
5人更生したら外に出れるという話が本当なら、ここに居る間は徹底的にこの施設のために生活して正当な方法で出た方が後々楽だろう。今逃げても、いつ捕まるか分からない恐怖や不安に怯えながら生活することになるだろうし。
──でも。
俺を散々弄んできた三原を解放するのは嫌だ。やっと出れると思っているであろう気持ちをめちゃくちゃにしてやりたい気持ちもある。
「…服は」
「もちろんあるよ。君がここに来た時に着てた服。綺麗に洗ってるよ。もし捕まれば今までの比じゃないくらいの罰を受けることになる。逃げるなら全力で逃げて。もう直ぐ三原が来るから決めたのならそれを着てすぐに逃げて」
「…お前は、罰を受けねぇの」
受け取った服を素早く着ながら問いかけると「全て三原の所為になるから大丈夫」と嬉しそうに返ってきた。
「……」
「またね、希望くん。頑張って」
最後に向けられた日野の笑顔。俺は小さく頷いた後、全力で部屋を出て駆け抜けた。
言葉通り見張りは居ない。長い廊下を走って走って、外に繋がる扉を目指した。
車で連れてこられたこの場所はどの辺りに位置しているのか分からない。捕まったらどんな罰が与えられるのかも分からない。
でも、俺が逃げ出したことで三原は暫くはここに居なければならないだろう。
それだけでもある程度のモチベーションを保ちながら走ることが出来た。
(あのクソ生意気な三原を、解放したくない。絶対に)
漸く外へ繋がる扉が見え、ドアノブに手を掛けて力を加えた。
──しかし。
どれだけ力を加えても動かない。ガチャガチャと思いっきり音を立てながらなんとか外に出ようとしてみても、扉が開くことはなかった。
その時は騙されたのかと思える余裕はなく、ただ早く開けて逃げなければという思いしかない。
「なんで…っ、やばい、やばい…早くっ」
一気に体から汗が噴き出してどんどんと鼓動が早くなる。自分の鼓動音とドアノブを動かす音と焦りで背後から近づいて来る二つの足音が聞こえない俺は、数分にも渡りドアノブと格闘した後、がくりと膝から崩れ落ちた。
(騙された……)
そう思った時、すぐ後ろから物音が聞こえて勢いよく振り返ると、そこには冷たい瞳で見下ろす三原と、輝くほどの笑顔を浮かべた日野が立っていた。
「あーあ。お前本当バカだな」
「……クソ悪魔」
「今の状況だとクソ悪魔は日野だろ。お前さ、散々俺が責めたのもう忘れたの?毎日毎日許してください何でもしますお願いしますとか叫んでたくせに」
「………」
言い返す言葉もない俺は、だらだらと冷や汗が流れる中冷たい廊下で項垂れた。
全て罠だったと確信した直後、この状況を作った張本人が俺に合わせてしゃがんでは顔を覗き込んできた。
「ぷっ……あははははははは!希望くん可愛いなぁ~本当に走り出すとは思わなかった~」
「……てめぇざけんなよ」
わなわなと震える拳を握り締めて顔を覗き込んでくる日野を睨みつけると、見下す様な眼差しが返ってきた。
「悪いけどこの作戦は必ず全員にしてるからそんな顔しないで?俺達が決めたわけじゃないしぃ」
「ってことで希望くん。そいつを恨むんじゃなく、ここから出ようと考えた愚かな自分を恨めよ。行くぞ」
ガシッと手首を掴まれて無理矢理連れて行こうとする三原から逃げようと全力で腕をばたつかせるも、日野も居るために逃げることは叶わない。
(やばいやばいやばいやばいやばい)
このままじゃいつもの仕打ちなんか比じゃない罰を与えられる。ボロボロと流れる涙を溢しながら嫌だと抵抗するも虚しく、俺は今まで行ったことのない部屋に連れ込まれた。
→
「希望くーん、久しぶり。俺のこと覚えてるかな?」
「…てめぇ誰だよ」
「わぁ、すごい。まだそんな反抗的な態度取れるんだ。君が来てから一週間は経ったよね?へぇぇ。毎日三原の鬼畜攻めを受けてまだ元気なんてすごいなぁ。っていうか君が来た日に名乗ったじゃん。俺は三原と同時期にここに来た日野だよー?」
三原も三原でわざと煽ってくる口調で腹立たしいが、こいつは終始チャラチャラしてる感じがイラつく。
「知らねーよ。んだよ」
「えへへ。俺、この前担当してた子が無事に終わったからフリーなの。折角だから可愛い希望くんと仲良くなろうと思ってねぇ」
サラリと放った『終わった』という言葉に俺が目を見開くと、日野は悪戯っぽい笑顔を向けてきた。
「あ、興味持ってくれた?一週間経ったから君に朗報。ここには定期的に君みたいな人が送られてくるの。そしたらもちろん俺たち職員は足りなくなってくる。じゃあどうするか?──徹底的に犯罪者を調教して更生させ、こっち側に来てもらうの」
「……じゃあお前がこの前担当してた奴は」
「俺や三原と同じでここの職員という立場になりました。もちろん見せかけの反省や忠誠心でこっち側に来る人も居るから数ヶ月はまだ完全に俺の手から離れたわけじゃないんだけど」
「一生ここから出れないってのは?」
「人による、としか言いようがないね。まぁこの施設が出来てまだ間もないからここに送られてきた人間が外に出た事例はまだないよ。一番外に近付いているのは三原なんだけど」
「…あ?」
「三原も俺も、みんな元々はここに送られてきた君と同じ立場の人間だったの。当初は本当に更生施設だったから、俺達が受けたのはあんな変態チックな責めではなかったけどね。まぁ俺たちのことは置いといて──」
数ヶ月経って初めて聞かされた情報に頭がついていかず、何も言うことが出来ずに居ると、日野は俺にひとつの鍵を見せつけた。
「ここに送られてきた犯罪者を5人、完全に調教して更生させると、職員はここから出ることが出来る。そして三原は今までしっかりと4人更生させた。──そして最後、5人目の希望くんの更生が完了するとここから出れる」
「…」
「どうする?三原を解放し、ここの職員として真面目に更生するか、三原の解放を阻止して逃げ出すか」
「…こんなことしてお前は何がしたいの?」
「そうだね。俺は三原が好きだからずっと二人でここで生きていきたい──なーんて綺麗事は無しで、俺より先に出るなんて許せない。だから俺はあいつの邪魔をしたいだけ」
その表情は先ほどまでの悪戯っぽいものではなく何処か真剣で、正直その言葉が嘘か本当か分からない。そもそもこの話自体本当かも分からない。
「だから俺は希望くんに手を貸したいの。これは君の足枷の鍵。部屋を出て右へ進んでいくと外に繋がる扉がある。今日はそこの見張りをしてるのは俺だから数時間は見つからない。──君が三原をここへ縛り付けたいなら、逃げ切れると思うなら。頑張ってみない?」
飛んできた鍵を受け取り、おそるおそる足首についた枷に嵌めると、小さな音を立てて解錠された。
散々ここの施設の恐怖を覚えさせられている体はすぐに行動することが出来ず、ただ立っていることしか出来ない。
(本当にこいつを信じていいのか)
その不安もあるが、足枷を解放しただけでこいつも罰せられるはず。外に出たい人間がそんなリスクを犯すのだろうか。
(本当に、俺に賭けてるのか。罠か)
5人更生したら外に出れるという話が本当なら、ここに居る間は徹底的にこの施設のために生活して正当な方法で出た方が後々楽だろう。今逃げても、いつ捕まるか分からない恐怖や不安に怯えながら生活することになるだろうし。
──でも。
俺を散々弄んできた三原を解放するのは嫌だ。やっと出れると思っているであろう気持ちをめちゃくちゃにしてやりたい気持ちもある。
「…服は」
「もちろんあるよ。君がここに来た時に着てた服。綺麗に洗ってるよ。もし捕まれば今までの比じゃないくらいの罰を受けることになる。逃げるなら全力で逃げて。もう直ぐ三原が来るから決めたのならそれを着てすぐに逃げて」
「…お前は、罰を受けねぇの」
受け取った服を素早く着ながら問いかけると「全て三原の所為になるから大丈夫」と嬉しそうに返ってきた。
「……」
「またね、希望くん。頑張って」
最後に向けられた日野の笑顔。俺は小さく頷いた後、全力で部屋を出て駆け抜けた。
言葉通り見張りは居ない。長い廊下を走って走って、外に繋がる扉を目指した。
車で連れてこられたこの場所はどの辺りに位置しているのか分からない。捕まったらどんな罰が与えられるのかも分からない。
でも、俺が逃げ出したことで三原は暫くはここに居なければならないだろう。
それだけでもある程度のモチベーションを保ちながら走ることが出来た。
(あのクソ生意気な三原を、解放したくない。絶対に)
漸く外へ繋がる扉が見え、ドアノブに手を掛けて力を加えた。
──しかし。
どれだけ力を加えても動かない。ガチャガチャと思いっきり音を立てながらなんとか外に出ようとしてみても、扉が開くことはなかった。
その時は騙されたのかと思える余裕はなく、ただ早く開けて逃げなければという思いしかない。
「なんで…っ、やばい、やばい…早くっ」
一気に体から汗が噴き出してどんどんと鼓動が早くなる。自分の鼓動音とドアノブを動かす音と焦りで背後から近づいて来る二つの足音が聞こえない俺は、数分にも渡りドアノブと格闘した後、がくりと膝から崩れ落ちた。
(騙された……)
そう思った時、すぐ後ろから物音が聞こえて勢いよく振り返ると、そこには冷たい瞳で見下ろす三原と、輝くほどの笑顔を浮かべた日野が立っていた。
「あーあ。お前本当バカだな」
「……クソ悪魔」
「今の状況だとクソ悪魔は日野だろ。お前さ、散々俺が責めたのもう忘れたの?毎日毎日許してください何でもしますお願いしますとか叫んでたくせに」
「………」
言い返す言葉もない俺は、だらだらと冷や汗が流れる中冷たい廊下で項垂れた。
全て罠だったと確信した直後、この状況を作った張本人が俺に合わせてしゃがんでは顔を覗き込んできた。
「ぷっ……あははははははは!希望くん可愛いなぁ~本当に走り出すとは思わなかった~」
「……てめぇざけんなよ」
わなわなと震える拳を握り締めて顔を覗き込んでくる日野を睨みつけると、見下す様な眼差しが返ってきた。
「悪いけどこの作戦は必ず全員にしてるからそんな顔しないで?俺達が決めたわけじゃないしぃ」
「ってことで希望くん。そいつを恨むんじゃなく、ここから出ようと考えた愚かな自分を恨めよ。行くぞ」
ガシッと手首を掴まれて無理矢理連れて行こうとする三原から逃げようと全力で腕をばたつかせるも、日野も居るために逃げることは叶わない。
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