【BL】くそガキとたわむれ

祈 -inori-

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今日は近隣のスケーターが集まっての合同練習。
人見知りの義経よしつねが外部のスケーターの中でほとんど唯一と言っていいほど懐いてるのが花巻はなまき 湊和そわ

…この前、あわや鼻血出すようなことされちゃったから俺はあんまり近付きたくないんだよなぁ…。

そんな俺の心中など完全にお構いなしな二人は雑誌を見ながら人の悪い笑顔を浮かべ、なにかを企んでるもよう…。

今のお前らの顔、動画取ってSNSにでもアップしてやろうか。

嫌な予感しかしない。
あいつらが二人でいる時は大概俺に対してなにか悪さしようとしてんだよなぁ…。
ほら、考えてる内に義経と湊和が楽しそうに俺に近付いてくる。

「チカくぅ~ん」

「ち、チカぁー」

甘ったるい声に満面の笑み、湊和のファンに見られたら俺殺されるかも。
湊和の後を頑張って付いてきてるくそガキは真似しようと試みたけど全くダメダメ。甘さも笑顔も足りない。

「チカ君、背中を壁につけて」

「……こうか?」

今からなにをするという説明もなくされる指示に一瞬だけ抵抗しようかとも悩んだけど、10年来の付き合いだ。頭の一部から無駄だ、やめておけって声が聞こえた気がした。

大人しく壁に背中をつけると義経が意地悪い笑み+緊張つー訳分からん表情をしながら俺の前に立つ。そして…。

「「壁ドン!!」」

「……」

楽しそうに声を合わせて俺の体の両脇に勢いよく両手をついた義経。

あー…うん。
なにがしたいのかは理解した。
でも今のこれは俺が知ってる壁ドンじゃあない。

「義経、もはやそれは『胸ドン』だ」

20㎝の差というのはやっぱりでかくて、義経の顔は俺の胸の前にある状態で、どうトキめけばいいのよ、これ。

「やっぱりこの身長差は無理だよね…。じゃあ僕がやってもいい?」

「俺はこの前お前に『萌死』させられかけたばかりだから嫌だ…」

湊和の提案は軽く拒否して、胸の違和感に視線をうつす。

ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり……。

「…義経、なにやってんの?」

さっきの『胸ドン』の体勢のまま義経は自分の額を俺の胸に押し付け、頭を左右に振りながらぐりぐりしてる。

「…ぐりぐりぐりぐり…」

可愛いかよっ!!

返ってきた返事はまさかの「ぐりぐり…」。
なんだよ二人してまた俺を萌死させようとしやがって!

「…だって、悔しいじゃん…」

ようやくぐりぐりをやめて上げた顔は頬をぷぅ、と膨らませて身長差で必然的な上目遣いで俺を責める。

あー…もう認める。
俺、義経のこの顔が本当にツボ。ドツボ過ぎてなんも言えない…。

でも何回もやられてばっかの俺じゃないのよ。

はぁ、と溜め息をついて自身を落ち着かせてから目の前の義経の体を抱き寄せそのまま反転する。

「ぃっ…!」

少し強めに義経の背中を壁に押し付けると短い悲鳴をあげたけど、そんなのお構いなしで俺は腰を曲げて唇を義経の耳に近づける。

「…あんまり可愛いことされると俺だって我慢できなくなるだろ?」

「っっ!!!!」

義経にだけ聞こえる音量でそう囁いてから駄目押しでほっぺにキスしたら義経は声にならない悲鳴(?)をあげて顔を真っ赤に染めたまま壁づたいにずるずると崩れ落ちていった。

大人の色気ってやつはこうやって使うんだよ。
なんて悪態つきながら心の中でべーと舌を出してほくそ笑んだ。

「じゃ、湊和。次はお前な!」

「うわぉ☆マジ勘弁!」

目線は義経に向けたまま湊和は真顔のままそう言うと辺りを見回した後、大声で「神楽コーチ!!」と叫んだ。

呼ばれた神楽コーチが湊和に向かって手を上げた瞬間―――

「チカ君が破廉恥っ!!」

「なっ!!!!」

リンク内に響き渡る程の声で続けて叫ぶと遠くにいる神楽コーチが鬼の形相でこちらに向かって走ってくる。

「じゃあね、チカ君!」

「…覚えとけよ。てめぇだけはぜってぇ許さねぇ…」

「受けてたつよ。…チカ君が無事だったらだけど☆」

べっと軽く舌を出してウインクまで決めた湊和は悪びれることもなく悠々とリンク上を滑っていく。

世界一になるようなやつは並みじゃねぇな、やっぱり…。
心臓に3本くらい毛が生えてるぜ、絶対!!

「親慶ぃー!!お前、義経になにしたんだ?!」

「俺の色気で義経が堕ちました!…いってっ!!!!」

鬼のコーチにものすっごく真面目な顔で返したら持ってたバインダーで思いっきり頭をはたかれた。

それから、放心状態の義経の横で俺は正座にさせられ長々と説教をくらったのだった…。





後日談――。

「あ……」

「ん?」

前から歩いてきた義経が俺の顔を見て声を上げた。そして壁に背中をつけて俺から出来る限りの距離を取るとそのまま素早く俺の横を通り抜けた。

「忍者か、お前は…」

「ぅわ!」

逃げようとする義経の首根っこを掴むのは簡単なことで、どうして忍者みたいな歩き方をしたか問いただすと。

「だって、神楽コーチが『親慶に近付くと妊娠するから義経は絶対に近付いちゃ駄目だぞっ!!』って…」

「…もうセクハラで訴えてやる…」

そう呟いた俺の瞳からは涙が溢れた…。



end



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