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言葉の重要性【後編】
しおりを挟む人気のない更衣室のロッカーに義経を押し付けると逃げ出さないように顔の脇に両手をついて正面から向き合った。
「どういうつもりだ、お前は…」
「なにが?!」
「俺、この前お前に惚れてるって言ったよな?つまり、お前のことが好きなんだよ。なのにお前はその返事もしないであんな煽るようなことされたら……誰だって期待するだろ…」
勢いのまま口をついた本音は瞬間的に俺の中の羞恥心を掻き立て恥ずかしさに目を逸らしてしまった。
「だから…目で訴えてだろうが……チカのこと…オレも好きだって…」
「…………………………………………………は?」
俺の好きな上目遣いの角度で恥ずかしげにそんなこと言われたって、理解できなくてたっぷり間を開けて返事をしてしまった。
「お前…俺のこと、好きなの?」
「…言わなくても分かれよ、バカ」
思わず口をついたのはこの前、義経が俺に言った言葉と同じもので。
でも、返ってきたのは思いがけない返事。
「それは言わなきゃ分からないだろぉ…」
俺は両手をロッカーについたまま項垂れると義経は心外そうに大声をあげる。
「いつものオレと違うとは思わなかったかよ!チカを見るとなんでか口がにやけてくるし胸がぽかぽかして幸せだなぁって思ってたんだぞ!でも、それは!チカがこの前オレに惚れてるって言ってくれたからで、段々…オレもおんなじ気持ちだって気付き始めたんだよ!」
すっげー可愛いこと言ってる義経をめちゃくちゃ抱き締めたい。
息を荒くしてる義経にそんな邪な気持ちを抱いていると今度は俺の服を遠慮がちに引っ張って。
「オレが好きだと迷惑かよ…」
ぷーと頬を膨らませて拗ねてる。
待ってくれ。
お前のせいで『萌え』が渋滞してて考えがまとまらない。
あー。
頭ん中で天使が舞い踊ってどこからか鐘の音まで聞こえる。
熱に浮かれた脳内では義経の言葉が何回も繰り返されて、胸がぽかぽかして幸せだって…俺も感じた。
「お前は…いくら態度で示してるなんて言われたって俺はこの前お前に『分からない』って言われてたからずっと悶々としながら、だけどお前は毎日毎日可愛いくなってくし……俺のこの数日間の苦しみがお前に分かるか」
嬉しいやら辛いやら可愛いやら色んな感情が入り交じり混乱した俺は両手で顔を覆って義経の前で泣く真似をした。
そんなオレの反応に義経も罪の呵責に襲われたのか「…悪かったって」なんて宥めるように俺の肩を撫でてくれる。
「…もう一回言え」
「なにを…っ!」
義経の両手を捕まえて再び小さな体をロッカーに押し付けると鼻先がぶつかるほどに顔を近付ける。
「さっきの、もう一回言えって」
「っ!な、んだよ…近いし…」
離せと暴れる義経の抵抗を封じ込めてお互いのおでこを合わせると義経は赤くなっていた顔を更に赤くしておとなしくなる。
「言って? ね、義経…」
今度は甘く、優しい声音でお願いすると義経は恥ずかしさから口をパクパクさせて、それでも覚悟を決めたのか一度唇を噛んで睨み付けるように俺を見上げる。
喧嘩腰のその態度ですら今の俺には愛しい。
「オレが、好、きだと迷惑か、ょ…」
たどたどしく紡がれたその言葉の最後を遮るように俺は義経に唇を重ねた。
「チ、カ…」
「全然迷惑なんかじゃなくて…すっげぇ嬉しいです…」
「良かった…」
目をしっかり合わせて返事をすると義経はとろけそうな微笑みを浮かべた。
もしこのまま、隣で並んで過ごす義経が毎日毎時間、毎分毎秒!
こんなに可愛かったら俺、心臓がもたなくて確実に寿命短くなる。
でも、たとえ死因が『萌死』といわれても構わない。
俺は可愛くて愛しいこのくそガキに命を捧げようと決意した。
end
あとがき。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
久しぶりにお話を書いてみたくなったので思いつくままに書かせてもらいました。
本当は一話完結の短編を書いていこうと思ったのですが、なぜかずるずると続いてしまいました。
稚拙な文章ですが楽しんでいただけたら光栄です。
こちらの話は一応終わりになるんですが、また短編を書けたら不定期に上げていこうと思っています。
そして、設定、キャラは同じものでまた別の話を書いていこうと思っておりますのでもし良ければそちらもお付き合いいただけたらと思います。
どうぞよしなに。
ほしくず逢羅
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