【BL】くそガキとたわむれ

祈 -inori-

文字の大きさ
9 / 25

◯◯マーク。

しおりを挟む
今回のカプ

親慶+義経
東儀×神楽


***


side 親慶

「チカ!!」

顔を真っ赤にしてロッカー室に飛び込んで来たのは可愛いくそガキの古河 義経。

「そんな騒いでどうしたんだよ…」

相当急いで来たらしく足を止めるなり、ぜーはーと肩でしている呼吸が収まる気配がない。
心配になってきたのでとりあえず持っていたペットボトルを渡すと勢いよく飲み干し、ご丁寧に空にして俺に返してくれた。

「……それで?なにがあったの?」
「か、神楽コーチの首に…この前…チカがふざけてオレにつけたやつ…………あった…」
「……なぞなぞか?」
「違うっ!!この前チカがオレの肩にふざけてつけた……キス、マーク…だょ…」

言いたいことが伝わらず首を傾げると、義経はますます顔を赤く染め後半は正直声が小さ過ぎてよく聞き取れないぐらいだったが微かに震えた鼓膜に、あぁ、と声をあげた。
そういえばこの前、義経がキスマークを知らないからって「お子ちゃまだ」とバカにされたって俺のところに憤慨しながら来たから「俺が教えてやるよ」ってふざけて義経の肩に吸い付いてキスマークつけてやったんだった。
言われるまで思い出さなかったのは本当にそれが日常の大した事のないイタズラだったからで。
どうやら義経はそれを見て学習したらしい…。

「虫さされの痕とかじゃなくて?」
「………分かんねぇけど首の後ろにいっぱいあった…」

いっぱい虫にさされてたら普通気付くよな…?
ってことは本当にそうなのか?
 真偽を思案していたら義経に遠慮がちに服を引かれて。

「…オレ、この前チカにつけられたのみんなにひやかされたからコーチにも隠すように言ってやって…?」

恥ずかしそうに上目遣いなんかされたら今度は本気でキスマークつけてやろうかなんて無粋なことを考えてしまい、横道に逸れた思考をなんとか元の道に戻すと俺はよからぬことを考えないために義経を見ないようにしてかぐっちゃんの元へ向かった。
というか、あれは義経だからひやかされただけで、かぐっちゃんをひやかせる強者はこのリンク場内にはいないと思うんだよな…なんて自分の考えに思わず共感すると目標の姿が飛び込んできた。
義経はたしか首の後ろって言ってたよな………っ!
なるほど…。
これはたしかにヤバい…。
ハイネックのジャージ着て少しは隠せているけど少し動くだけで二、三個は見える。

「かぐっちゃん!」

少し離れたところから声を潜め小さく手招きすると気が付いたかぐっちゃんが俺の目の前まで氷上を滑ってくる。
そんな何気ない仕草まで絵になるなんて現役復帰してからの意識の高さがハンパない。

「なんだよ…」
「かぐっちゃん…これ使って首の後ろ見て…」

ロッカーから持ってきていた折り畳み式の鏡を二つかぐっちゃんに渡すと、はてなマークを浮かべながら言うとおりに首の後ろを確認したかぐっちゃんは一瞬で凍りついた。

「…あっんの野郎!!!!見えるところには付けんなって言ってんのにっ!!」

想像どおりキスマークを散りばめた相手、東儀竜太コーチに憤怒すると同時に肩を上げ首を短く隠すようにする仕草はまるで亀のようだと少し笑える。

「悪かったな、親慶…」
「俺はいいんだけどさぁ…元々、それに気付いたの俺じゃないのよ…」

苦笑しながら視線を明後日の方へ向けるとかぐっちゃんは目を見開いて驚いた表情になった。

「義経か…?」

俺は無言のまま頷く。

「………義経、キスマーク分かるような歳になったなんて…すっげぇ複雑…」

俺もかぐっちゃんも義経を小さい時から見てるから親心というか、可愛い義経息子が大人の階段登ってくみたいな感覚…。
涙は見えないけど、眼鏡をずらして目頭を押さえて泣くような仕草をしてるかぐっちゃんには、自分で報告をしにきていて矛盾してるけどバレる訳にはいかない。
俺はごくりの唾を飲み込む。
イタズラとはいえ、キスマークの付け方を教えたのが俺なんて絶対にバレる訳にはいかない…。

「なんなん?二人きりで内緒話なんてやらしいわぁ…」

口を尖らせ拗ねた様子で近付いて来た東儀コーチに俺は逃げ出したい衝動に駆られるが、かぐっちゃんが振り向き様に東儀コーチのみぞおちにボディブローをおみまいするとその体はリンクに崩れ落ちていった。
もう本当にさぁ…かぐっちゃんって絶対元ヤンとしか思えないほど実戦強いよね。
なんて他人事のように東儀コーチを見下ろすと二人の痴話喧嘩に巻き込まれないように少しずつ距離を取っていたんだけど…。

「…そんなん悪いの俺だけやないやん!それ教えたん親慶アイツやで?」
「っ!!!!」

断片的に聞こえてくる会話に、差された指に言い様のない恐怖に駆られた俺は全力で逃げ出したのだが、その目前に俺よりも速く滑って来たかぐっちゃんが立ち塞がった。

「どういう事か説明してもらおうか、親慶?」

にっこりと微笑むその顔からは殺気が隠しようのないほどだだ漏れていて…俺は大袈裟かもしれないけど死を覚悟した。

「それは…えっと…」
「アキの首についてるの何かって聞かれてコイツが実践して教えてたんや!」

ドヤ顔で説明をする東儀コーチは自分が墓穴を掘った事に気付いていないみたいで、目の前で怒りに震えているかぐっちゃんも見えてないみたい。

「結局…あんたが諸悪の根源じゃねぇかっ!!」
「ちょっ!!…ぃったぁ!!氷上での本気のラリアットは殺人行為やで!!」
「うるせぇ!俺の義経を汚しやがって!!」
「俺のってなんなんっ?!それは聞き捨てならんわっ!!」

案の定始まった痴話喧嘩に俺は止めることも出来ず傍観してたけど止まる気配はなく。
遠巻きに見てる観客達の視線は何故か俺に注がれていて…その視線全てが「はやく止めろよ」と訴えてくるようで…。

「ねぇ…かぐっちゃん…」
「うるせぇ!!」
「いって!!」

仕方なく近付いていくと怒りのおさまらないかぐっちゃんに回し蹴りをくらった。
氷上でどうやって回し蹴りしてんだよ、この人?! 

「チカっ!!」

倒れ込む俺の姿を見つけて滑り寄ってくる義経だったが、俺のところへ辿り着く前にかぐっちゃんに捕まってしまった。

「…神楽コーチ…?」
「いいか、義経?東儀と親慶とは絶対に二人っきりになるんじゃないぞ?あいつらはお前に良くない影響を与えるからな」
「え?…えっ?」

混乱する義経はそのままかぐっちゃんにリンクの反対側へ連れていかれてしまった。

「…」
「…」

残された俺と東儀コーチが今度は喧嘩を始めたのはいうまでもなく。

「うるせぇっ!!」

そしてそれをかぐっちゃんに力で捩じ伏せられたのもまたいうまでもない…。

end
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

好きです、今も。

めある
BL
高校の卒業式に、部活の後輩・安達快(あだち かい)に告白した桐越新(きりごえ あらた)。しかし、新は快に振られてしまう。それから新は大学へ進学し、月日が流れても新は快への気持ちを忘れることが出来ないでいた。そんな最中、二人は大学で再会を果たすこととなる。 ちょっと切なめな甘々ラブストーリーです。ハッピーエンドです。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...