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初日の出【親慶×義経】
しおりを挟む「…さみぃ…」
「…」
寒さに首を縮めたけど、マフラーからかろうじて出ていた唇がはぁーっと白い息を吐き出す。
隣を歩く義経は俺の呟きに反応することなくダウンジャケットのフードを被り、口元までマフラーに埋めて薄暗い道を真っ直ぐに見つめている。
元々寒さに強くない義経だからきっと機嫌は良くないだろう。
それなのに文句も言わず、「初日の出が見たい」と言う俺のワガママに黙って隣を歩いてくれる姿に愛しさを感じてしまう。
「…」
きっとこのニヤニヤした顔が見つかってしまったら義経は遠慮のない侮蔑に満ちた瞳で俺を見上げてくるんだろう。
あぁ。
想像したその表情に、俺の口元はさらに緩んでいく。
「…どこまで行くの?」
マフラーに塞がれくぐもった声はかろうじて俺の鼓膜を揺らす。
「内緒❤️」
口元に人差し指を立てて笑いながらしぃーっとポーズをとると義経は呆れたように俺を一瞥した。
「冷めてんなぁ…」
「可愛いこぶってんのがキモい」
新年早々、鋭い言葉が胸を抉る。
これが嫌いじゃないんだから…我ながらいかれてる。
「もう少しだよ」
知人に教えてもらった人気の少ない穴場スポットはスマホのマップで調べたところによるとそろそろだ。
「あ、ほらあった」
小さな林を抜けた後、少しだけ開けたそこは街を一望でき、奥に連なる山がまだ薄暗い夜明け前の世界でさらに濃い黒で形取られていた。
あの山の間から初日の出が上がるらしい。
「…まだ時間ありそうだよなぁ…義経、手ぇ貸して」
「なんで…」
「いいから」
「…」
渋る義経の左手を強引に掴むとポケットからジャラと金属音を立てながら大小たくさんのリングを取り出し義経の手袋を外すと、その指に合いそうなサイズを選びちょうど良いリングを探し当てる。
義経は「何やってんだ?」という眼差しで俺の行動を黙って見つめていた。
「…ん。これが丁度いいか」
掴んでいた手を解放すると義経は装飾もなにもないシンプルなシルバーのリングを不思議そうに色んな角度から確認していた。
そんな姿に目尻を下げながら空気が変わるのを感じ、視線を山に向けると真っ黒だった山の輪郭を太陽の光が縁取っている。
遅れたらせっかくの計画が台無しだ、と俺は両手の手袋を外した。
「義経、また借りるよ」
再び義経の左手を取るとその冷たさに驚き、まだ温かさを保っている両手でその手を挟んで温もりを分ける。
「…何すんの?」
「もうちょっと待って」
訝しむ義経に微笑み、少し腰を屈めて左手を初日の出にかかげる。
「義経、少し指曲げて?」
角度を調整して俺の理想通りの形になると、あまりに綺麗で思わずスマホで写真を撮った。
「ほら、義経こっちきて」
「なに?」
俺の立っていた位置に義経を誘導して俺は義経の後ろに回り、そこから義経の目線に合わせて微調整する。
「俺からのプレゼント。今はこんなものしかあげられないけど…」
「…キザ野郎…」
容赦ない悪態に俺は笑うと義経の手を離して後ろから抱き締める。
左手ごしに初日の出を見つめる義経の頬は寒さに耐えている先程よりも赤く色付いていて、愛しさで胸が熱くなった。
「いつか本物用意したら……受け取ってくれる?」
「…」
抱き締めたまま義経が小さく頷いたのを確認するとフードを外して冷たい頬に唇を押し付けた。
「なっ…ん?!」
驚いて振り向く義経の、今度は唇を重ねると見開いた目はさらに大きく俺を映す。
角度を変えながら口付けを深くすると真ん丸の瞳は諦めたように閉じて眉間に皺を寄せた。
「…誰かに見られたらどうすんだよ…」
「見られないような場所を探したからご安心を!」
ジトり、と睨み付ける義経にウィンクを投げると更に紅潮した顔を隠すためにだろうフードを被られてしまった。
「リング、返す…」
「あ、あぁ…そうだな……どうした?」
簡単に指から外されたリングは差し出した俺の掌に落ちてくる事はなく、義経の手は強く握られたまま微動だにしない。
「義経?」
「………この一瞬のためだとしても…チカからもらったものだと思ったら…離したくない、な…」
困ったように眉を顰めながら、意を決して小さなリングはそっと俺の掌に置かれた。
「…」
今、この掌の中にあるのは指のサイズを測るための業務用のリングで。スタイリストさんが持っていたものを借りてきただけのものだった…けど。
そんな風に思ってくれるならちゃんとしたの用意すれば良かったな…。
溜め息を白い息に混ぜて吐き出すと義経の左手を取り薬指に強く吸い付いた。
「っ!!チカ…?」
初日の出をリングに重なるようにしてダイヤモンドの代わりにするなんて安易な考え。
でも義経はきっと悪態をつきながら喜んでくれると思ったんだ。
こんなに…心を痛めてくれるなんて思いもせず…。
「…少しの間だけだけど…代わりにこれで許して…」
「…なんか痛々しくね?」
「そ、う言われると…」
薬指には赤い痕がくっきりと映えていてそれは義経のいうとおりやはり痛々しい。
やめときゃ良かったかな…。
後悔の念に襲われる俺に、義経は同じように赤い痕に唇を触れた。
「このまま、消えなきゃ良いのに…」
はにかむその姿に不覚にも心臓が跳ねた。
まだ小さなその体があと三年後、どこまで成長しているんだろう。
もしかしたら俺よりも背が伸びていて、もっと男らしくなっているかもしれない。
でも。
それでも、俺が改めてリングを渡した時に「待ってた」と笑ってもらえるように。
「まだまだ男磨かなきゃだな」
余所見すらする気にならないように義経にとってかっこいい恋人で有り続けないと。
「よしっ!!」
もう山の中腹まで昇っている太陽に拝むように手を合わせ気合いをいれる。
これからもかっこいい俺で居続ける!!
とりあえずこれが今年の新年の目標!!
end
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