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俺の天使①【親慶×義経←湊和】
しおりを挟む薄暗い部屋の中、収まりのいいところを探すためごそごそと動く芋虫はやっと納得のいく体勢になったのか布団からふわふわの髪を覗かせる。
「狭くない?」
「ん…ちょ……そこ、くすぐったい…」
「わりぃ…」
元々シングルの狭いベッドに小柄とはいえ男二人で並んで寝るのはやっぱり無理があった。
ちょっとでも動いたら落ちるな、俺。
意図せずに崖っぷちに追いやられた俺は義経の体勢を崩さないようゆっくり近付いてなるべく邪魔にならないようにその体を抱き締めた。
「…邪魔?」
「…ぃゃ…」
ふわふわの髪の毛に顔を埋めて、一応、確認すれば眠いのか恥ずかしいのか小さく返事がくる。
義経…あったけぇ…。
大会最終日、たまたま相部屋になった義経と俺は恋人同士というのもあって一緒のベッドに寝る事にした。
本音を言うと義経に怒られそうだからぐっと堪えてお互いの妥協案を採用した。
「おやすみ」
「…ん…」
本当は唇に…なんて恨みがましく思いながら額にキスをすると義経は小さく頷いた。
そしてすぐに聞こえてきた静かな寝息が義経の体の疲労を訴える。
まだあどけなさが残る寝顔が小さい頃の面影を残していて愛しさが込み上げてくる。
「可愛ぃ…」
唇に触れたり頬を撫でたり。
ほとんど無意識に義経の頭を弄り回してたら眠っている義経の眉間に力がこめられていて、「うっとうしい」と訴えてくるそれに思わず笑ってしまう。
親指でぐりぐりと眉間を押してやると一瞬、皺を濃くした後、元の穏やかな表情に戻ったのを確認して起こさないように優しく抱き締める。
俺も寝よ…。
おもちゃがなくなり手持ち無沙汰になった俺は瞼を閉じ呼吸を義経に合わせるとすぐに夢の中に飲み込まれていった。
***
side 湊和
「…」
二人が付き合ってるのは知ってるし、紆余曲折あったものの今は二人の事認めてるからいいんだけど…。
「僕もいるって忘れてないかな…?」
ビルの隙間から顔を出した太陽の光にいち早く目を覚ました僕は興味本位でチカ君のベッドに近付く。
スプリングの軋む音すらに気を使ってゆっくりとベッドを降りて覗いた先には愛しいヨシがチカ君の腕の中で幸せそうに眠っている。
「…」
昨晩、早々に寝たフリを決め込んだ僕を余所にいちゃつき始めた二人に気付かれないように布団を深く被り直して耳を塞いだ。
微かに漏れ聞こえる小さな声に良くない想像をしてしまうから。
そんな鬱憤も溜まっていたからスマホを取り出してヨシの可愛い寝顔を無音カメラで撮影してベッドに戻る。
「…送信…っと」
可愛いヨシの寝顔を独り占めしようとした罰だよ。
さっき撮影したヨシの寝顔を二人のスマホに送りつけて僕は満足したまま二度寝を決め込んだ。
きっと今度目を覚ましたら顔を真っ赤にしたヨシにチカ君が責められてる場面に遭遇できるだろうと期待していたのに…。
「湊和くん?!なにこれ!!なんでこんな写メ?!」
「あ、起きたんだ。おはよう」
結局、二度寝しても先に起きてしまったのは僕の方で、仕方なく洗面台で歯磨きをしていたら真っ赤な顔したヨシが飛び込んできた。
慌てふためくヨシを余所にこのままドアの鍵を閉めて二人で立て込もったらチカ君はどんな反応するかな?なんて不謹慎な事を考えて笑ってしまった。
「湊和くん!聞いてるっ?!」
「ん?!げほっ!!っ…ごめ、聞いてなかった…」
突然、間近に迫ったヨシの顔に驚くと唾液が変なところに入ってしまって慌てて洗面台に吐き出した。
「なんでこんな写メ撮ったの?!」
「…」
写メも可愛いけど、やっぱり本物が一番可愛い。
「…」
まだ好きだからとか、可愛かったからとか…素直に伝えたらきっとヨシは困っちゃうよね?
怒りに震えるヨシにどんな返事をしようかと悩んでいると、ふいに僕のスマホが着信を伝える。
洗面台に置いていたそれはディスプレイに『チカ君』と表示しながら黄色いライトが点滅を続ける。
ヨシの視線から逃げるようにスマホを手に取ると、送られてきたそれに思わずスマホを落としそうになって慌てて両手で掴んだ。
ヨシに見つかったら絶対に消される…。
チカ君から送られてきた画像を見られないようにスマホを胸に抱えながら急いで洗面所を駆け抜けてチカ君がいる部屋に逃げ込むと、ヨシも僕の後を追って部屋に駆け込んできた。
「なんで逃げるの?!」
「なんでって………え?!チカ君!!それも送って?!」
「りょーかい」
「………なにしてるの?」
ヨシにスマホを見られないようにチカ君の後ろに回り込むとたまたま目に飛び込んできたチカ君のスマホの画面に釘付けになる。
すると、なにかを察知したヨシが訝しみながらこちらを睨んでくるけどその表情すらも撮影したい衝動に駆られてしまう。
「チカ、スマホ見せて?」
「いいよ、ほら」
「え…」
「…」
眉間に皺を寄せて距離を詰めてくるヨシに、いともあっさりとスマホを渡したチカ君に思わず驚きの声をあげてしまうけど、それはヨシも同じだったみたいでスマホを受け取ったまましばらくチカ君を睨み付けていた。
スマホ渡しちゃってどういうつもりだろ…?
膠着状態の二人を余所に手の中で震えるスマホに視線を落とすとディスプレイには再び『チカ君』。
添付ファイル?
二人の空気を壊さないようこそこそとファイルを開くとついさっき催促した編集済みのヨシの写メが送られてきて。
「天使…!!」
素直な感想が口を突き出ると、ヨシが慌ててチカ君のスマホを触り始める…が。
「…パスワード…」
動かないスマホにがっくりと項垂れるヨシが流石に可哀想になったから。
「ヨシの誕生日いれてみれば?」
「オレの…?」
「湊和っ!!駄目!はい、回収!!」
「ヨシ!押さえてる内に早く!!」
不思議そうな表情のヨシに慌てて手を伸ばすチカ君を後ろから羽交い締めにして加勢する。
「オレの…誕生日………」
「義経っ!!駄目だって!」
「…開いた!」
「ちょっ!!ほんとにっ!!」
「…ぅわ…」
スマホが動かせるようになった途端にヨシは激しく顔を歪ませた。
さらに激しく暴れるチカ君を押さえる腕に力を込めてヨシを案じる。
→②へ続く
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