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春(湊和+義経)
しおりを挟む寒い…。
体感的にとかじゃなくて心が寒くてつらい…。
スケートを嫌いになったわけじゃない。
でも時々、ずっと勝ち続けなきゃいけないプレシャーに圧し潰されそうになる時がある。今がまさにそれ。
「…寒い…」
まだ二月。空気も風も冷たくて、はぁ、と吐き出した息は白く染まりすぐに風に流された。
「…」
僕もあんな風に消えてしまえたら楽になれるかも…。
「寒い…」
また小さく呟いた瞬間、両頬に当てられた冷たいなにかに僕は肩を大きく跳ねさせた。
「うわぁっ‼︎」
叫びながら慌てて振り向くと僕よりもびっくりしているヨシと目が合った。
「……ぇ…ヨシ…?」
「ごめんね…。声かけても全然反応なかったからびっくりさせようと思って…」
怯えるまん丸の目から視線を落とすと冷たいなにかの正体がヨシの両手だった事に気付いて僕は安堵からか思わず声を上げて笑ってしまった。
ヨシは僕のそんな姿を見てオロオロしながら今度は突然笑い出した僕にびっくりしているみたいだった。
「ごめん、ごめん…びっくりしちゃって…」
「ごめんね!そんなにびっくりするとは思わなくて…」
笑いが落ち着くと、僕はようやくヨシと待ち合わせしていた事を思い出した。
心が疲れ過ぎててすっかり忘れてた…。
「大丈夫…?」
ヨシは相変わらず僕の心配をしてくれていてふとさっきまでの凍えるような寒い感覚はなくなっている事に気付いた。
そういえば声出して笑ったの久しぶりかも…。
「ソワくん…?」
不思議そうに首を傾げるヨシに心は寒くなくなったどころかほのかに温かくなってる気がする。
ヨシに逢えただけなのに…。
「…」
「ソワくん…?」
「ヨシはすごい…」
「なにが…?」
「ヨシは春みたい!」
『花巻湊和』としてじゃなくて一人の人間として自然に笑えている事が嬉しいよりも、まだ笑える自分に安心した気持ちが強くて…。
些細な事でこんなにも僕を救ってくれるヨシは本当に春のように暖かくて優しく感じた。
それはまだ僕がヨシの事を好きだと認識する前のお話。
end
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