【BL】くそガキとたわむれ

祈 -inori-

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エイプリルフール【竜太×神楽+一弥】

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    ちょっとした悪戯心だったんだ。
    それがあんな事になるなんて…。

    ふと浮かんだエイプリルフールのネタの承諾を求めて一弥に連絡を取ったがあいにく電話が繋がる事はなく、仕方なくメッセージを送っておくと昼休憩を楽しみにしながら俺はリンクに向かった。



◆  ◆  ◆



    はぁ~~…めっちゃ疲れた…。
    久々にウタと仕事の話をしていただけやのに横から楽しそうに口を出してくる可愛い奧様のおかげで無駄な疲労感を感じながら東儀組の本社のロビーで慣れないネクタイを緩めると着信を知らせるスマホを確認した。
    仕事の連絡に紛れて『神楽さん』の名前を見つけて不思議に思いつつ開いてみた。

「なんやろ…今日はエイプリルフールだから竜太に嘘をつこうと思うんだけど?一弥と付き合いたいって言ってもいいかぁ?!アカンに決まっとるやんっ!!」

    人目も気にせんと絶叫した僕は慌てて神楽さんに電話を掛けたが練習中のようで繋がらず、すぐに諦めて電話を切ると急いで車に乗り込んで、ハンズフリーの設定をして走り出した。
    早くせんと…神楽さんの身が危ないっ!!

「ボンに悪戯する前に絶対に僕に連絡下さいよ、神楽さぁーんっ!!」

    神楽さんの身を案じながら、とりあえず自分も安全運転で無事にスケート場に辿り着けるように祈りながらアクセルを踏んだ。



◆  ◆  ◆



    午前の練習が終わって時計は11時40分を過ぎた頃。
    エイプリルフールはあと20分…。

「一弥からの連絡は来──」
「アキ?」
「うわっ!!驚かすなよ…」
「すまん…そないに驚くとは思わんくて…」

    自分の呟きは聞かれていないだろうかと竜太の顔色を窺うがどうやら聞かれていなかったようで俺は胸を撫で下ろした。
    時間もないし一弥にはあとで言えばいいか…。
    んじゃ、やりますか!
    竜太に気付かれないように悪戯っぽく微笑むと俺は一度大きく深呼吸をしてから真剣な表情になると第三会議室には俺達二人しかいない事を確認してから俯いた。

「…なぁ、竜太…」
「どないしたん?」
「俺……あんたと別れたい…」
「……………………はっ?」

    試合とは違う緊張感に心臓が高鳴り手に汗が滲む。
    竜太は目を見開いて間抜けに口を開けてこちらを見つめている。その反応に俺は口元がにやけてしまいそうになるのを必死に堪えた。

「な、なにゆうとんの?アキ…なんで俺と別れるなんてゆうん…?」

    竜太には心当たりなどないのだろう。当然だ。俺にもない。
    最近は喧嘩らしい喧嘩もしてないし小さないざこざもなかった。
    それなのに俺がいきなり別れ話を切り出したら竜太は混乱するほかないだろう。
    顔を引きつらせながらよろよろと俺に近付いてくる竜太に俺は避けるように距離を取った。途端に竜太の表情はさらに曇っていく。
    ここで駄目押しだな。

「俺…あんた以外に好きな奴が出来たから…」
「好きな奴…」

    曇った表情から今度は血の気がさぁーっと引いて青白く無表情な竜太は少し気の毒になるほどだったが俺はとどめを刺そうと口を開く。
    ポケットの中でスマホが震えるが俺は続けた。

「その相手は…一弥なんだ…」
「…い、イチ…?」

    俺の言葉を反芻した竜太は片方の眉を上げ口許に手を当てると、なんだかよく分からない表情のまま考え込んでしまった。
    あれ?なんか思ってた反応と違う…。
    もっと落ち込むと思ってたのに…。
    一弥の名前を出してから竜太はなにかを考える素振りをした後、また少しだけ俺との距離を詰めた。

「それを…イチにゆうたん?」
「え?…あ、あぁ…一弥も戸惑ってたけど俺の事受け入れてくれて…」
「…ふーん…?」

    なんだ?なんで竜太がちょっと強気なんだ…?
    竜太は一瞬、腕時計を確信した後、真顔でじりじりと威圧しながら迫って来るので俺は逃げるように後退したが背中はすぐに壁にぶつかり、逃げ場を失った。
    絶望する俺の顔の両脇に手をついた竜太はにぃっと意地の悪い笑顔を浮かべた。

「せやったら俺もアキとお別れせなあかんなぁ?」
「は…?ん、っ…んぅ!!」

    逃げ場のない俺は簡単に竜太に拘束され顎を固定されて強引に押し付けられた唇を避ける事も出来ず、俺は反射的に強く目を瞑った。
    竜太の言葉に混乱しながらなんとか抜け出そうと体を捩るが体格差がそれを許してくれない。
    部屋のスピーカーから十二時を知らせる軽快な音楽が流れるが俺の耳には届かず、とにかく口の中を奧に奧に蹂躙する竜太の舌に翻弄されてしまい慣らされた脳は簡単に思考を止めてしまった。

「はっ、ぅん…」

    酸欠状態になっていた俺に一度口を離して酸素を取り込ませると竜太は再び唇を重ねた。
    抵抗する気力もなくなった俺の様子に顎をかけてあった右手が脇腹からするりと地肌を滑る。その熱を感じると条件反射のようにを期待して自身が頭を擡げ始めた。
    ヤバぃ……竜太にバレたら最悪ここで最後までヤられるかもしれねぇ…。

「なにしとんの、この助平!!」

    無遠慮に俺の胸をまさぐる竜太の手だけでも止めようと手をかけたところでけたたましい騒音とともに一弥が飛び込んできた。
    ぜー、はー、と身体中を上下させ呼吸を整えながらしんどそうに膝に置いた手にはスマホが握られている。
    さっきスマホが震えてたのは一弥が連絡くれてたのか…。
    頭は妙に冷静で壁に押さえつける竜太の手も振り切って一弥の方へ逃げたいと体に命令を出すが、あいにく腰は竜太に与えられた甘い痺れのせいで上手く力が入らない。
    体が本調子なら竜太の事を蹴っ飛ばしてでも逃げ出してやるのに…。

「遅かった……神楽さんがめっちゃ色っぽい姿になってしまっとる。ボンっ!!とっとと神楽さんを離しぃや!」

    一弥の怒号に竜太は無言のまま、べっ、と舌を出して拒絶すると素早い動きで再び口を塞がれてしまう。くぐもった声を漏らしてしまった事と一弥に見られてるという事実が俺の頭をパニックにさせるが、それに加えて無理矢理開かされた唇の間から流れてきた液体。俺は助けを求めるように竜太の服をキツく握り締めた。

「んーー!っ、んん…んぅ…」

    竜太の唾液が流し込まれると口の中も喉も腹の中ですらその熱が通る全てが犯されているようで、俺はもはや体の疼きを止められなかった。

「んぅ、はっ!!待っ…!あ、ぁぅ、っ…あ、んっ…」

    頭を振ってなんとか口を離す事は出来たが依然として体は竜太に拘束されていて唯一自由になる頭だけを勢いよく逸らした瞬間、ぐちゅり、左耳だけに響く不快とも取れる感覚にそれでも昂る体はそれすらも悦びに変え俺の理性を削っていく。
    傍若無人に耳の中を動き回る竜太の舌は鼓膜に直接触れようとするかのように奧へ奧へと入り込みその度に響く水音に合わせて腰や背中に走る電流に堪らず体が大きく跳ねてしまう。
    それに合わせて胸を滑っていた竜太の手が頂を詰んだり引っ掻いたりすれば喘ぎが止められない。
    …ゃばぃ……気持ち良すぎて……もっと…欲しくなる…。
    硬度を増した俺自身は竜太の愛撫を求めて腰を揺らしそうになるが、薄く開いた視線の先、顔を紅潮させじっと自分を凝視する一弥と目が合ってしまった。そして、ごくり、生唾を飲み込んだ喉仏が動くのを見て俺は一気に羞恥心に飲み込まれた。
    今までの醜態を全て見られていた事を思い出すと俺は両手で顔を覆った。

「……ゃ、やめっ……りゅ、た…許、して…」

    俺の懇願を竜太は長い溜め息を吐いた後、承諾してくれたようで腰を支える力を緩めると俺は重力に引かれるままに床に崩れ落ちた。
    はー、はー、と荒い呼吸に肩を揺らす俺の横にしゃがんだ竜太は満足そうに笑みを浮かべた。

「それで?俺と別れて一弥と付き合うんやったっけ?」
「…」

    にこにことわざとらしい笑顔が憎らしいが、それを指摘する気力もない俺は虚ろな目で竜太と一弥を見つめた。

「…うわぁ~…神楽さんのその表情…めっちゃ色っぽい…破廉恥やぁ…」
「…変な気ぃ起こしたら分かっとるやんなぁ?」
「ボンの大事なお人に手ぇ出す程、僕は愚かやないわ」

    ぎろりと睨み付ける鋭い眼差しをもろともせず一弥は、はっ、と鼻で嗤った後、こちらもにこりと笑顔を湛えた。
    どうして俺の嘘は竜太にあっさりとバレてしまったのか…。冷静になってきた頭はその疑問で溢れた。
    会議室に駆け込んできた一弥の様子から俺のメッセージを竜太に知らせた可能性は低そうだ。
    それなら何故、俺の嘘は竜太にバレたんだ…?
    俺は竜太に視線を戻すと竜太はその優しく大きな手で俺の頭を撫でて落ち着かせてくれる。
    竜太の手って本当に気持ちいい…。
    熱が冷めたばかりの頭は燻っていた熱を集めいとも容易く俺の思考を奪っていく。

「…は!やめろ確信犯!」

    竜太がただ俺を愛でてるだけではなくと気付いて撫でる手を叩くと「バレたか」とわざとらしく肩を竦ませた。

「相手が僕やったからアカンかったんですよ、神楽さん」
「そうやね。ミオやったらもしかしたら信じたかもしれん」
「…なに…?」
「イチは気色悪いくらいずぅーと一人の人間に片想いしとるからな」
「気色悪いとかゆわんでええやん」

    テンポ良く竜太に憎まれ口を叩く一弥とのやりとりから二人の仲の良さがうかがえる。
 一弥には俺とは違う信頼の仕方をしている気がする。

「せやからアキの告白をイチが受け入れたってところで俺はすぐに気付いたって訳や」
「…なるほどね…」

 謎が解けたところで無造作に椅子にかけられている竜太のジャージの上着が目に入った。
    俺はよろよろしながら立ち上がると一目散にそれに向かって手を伸ばして素早く自分の腰に巻いた。

「アキ?」

 そのままドアに向かう俺に竜太が不思議そうに声をかけてくる。
 聞くな。察しろ。

「どこ行く──」
「ボン!僕、ボンに仕事の話があんねん!!」

 追いかけてこようとする竜太を俺の状況が分かっているだろう一弥が割って入り制止すると、その隙に俺は逃げるようにドアノブに手をかける。

「アキ…声、我慢出来へんかったら口塞いだるよ?もちろんで🖤」
「ボン!」
「なんなら一緒に行って手伝いたいんやけど」
「ボーンーっ!!」

 やっぱりバレてやがる…。
 全然萎える気配のない自身の存在がバレないように竜太のジャージでカモフラージュしたのに、竜太はそれすら理解して俺を煽ってくる。
 竜太って本当に目敏いよな…。
    それに引き換え…俺の気持ちを慮って竜太を黙らせようとしてくれる一弥の優しさが染みるぜ…。
    そう考えると竜太への怒りがますます増幅されて俺は立てた親指をぐるりと逆さまに倒すとまだ落ち着いていない紅潮してるだろう顔のまま竜太を睨みつけると
「くたばれ変態っ‼︎」
そう叫んで会議室を出て行くと俺は足早にトイレに向かった。

「あーゆう恥ずかしがりなところ…ほんま可愛ええなぁ」

 けらけらと笑う竜太の呟きは俺の耳に届く事はなかった。

 エイプリルフールの嘘にも裏付けが必要だと学んだ神楽だった。


 ちなみに、トイレに向かう途中、隠れていた湊和と遭遇したのも。
 処理し終わって親慶を呼びにロッカールームに行った時に面白いものが見れたのも……それはまた別の話。



end
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