ジュアは呪い屋さん

湖ノ上茶屋

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15.あたしのせい?

15-1

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 あたしは真っ黒なリュックに、黄色い防犯ブザーをつけた。

 チルちゃんから貰ったキーホルダーは、今もあたしの心を守ってくれてる。

 だから、ずーっと一緒にいたい。

 でも、可愛いやつだから、リュックの内ポケットに入れておく。

 せっかくのショートカットと真っ黒リュックが、台無しになっちゃうような気がするから。



 久しぶりの登校は、お母さん付きだった。

 もうそんな歳じゃないんだからって思って、恥ずかしさが少しあった。

 でも、恥ずかしいと思っていられたのは、登校する日の前の日までだった。

 学校へ行くんだって思うと、だんだんドキドキしてくる。

 どうやって学校へ行っていたのか、よく思い出せない。
 どんな顔で学校へ行けばいいのか、あたしにはよくわからない。

 だから、お母さん付きでよかったって、その日になったら思えた。


 
 あたしの心を見透かしているのか、それとも、ふたりして同じことを考えているだけなのか。あたしとお母さんの足は、迷いなくあの道を避けて、遠回りする道を選んで、学校へと向かった。

 いつもと違う道を通っているからなのかもしれないけれど、久しぶりの通学時間帯の外の世界は、なんだかいつもと違って見えた。

 あたしが学校から離れている間に、世界はがらりと変わったみたいだった。

 歩道を歩く大人の数が、明らかに増えていた。

 これまでは、新学年になってすぐのころに、一年生のお父さんやお母さんがいるくらいで、大人の姿はほとんどなかった。

 それなのに、今は子どもばかりの道じゃなくなってる。

「ねぇ、なんでみんな、一人で登校してないの? ああ、いや……兄弟がいたりとかしたら、一人ってわけでもないけどさ」

 緊張を隠すようにちょっとへらへらしながら、お母さんに問いかけてみた。

 お母さんはあたしを見て、悲しそうな目をして、少し口角を上げた。

「今は、そういうふうに変わったの。学校の決まりっていうか。基本的に、子どもだけでは歩きませんってなってる」
「……へぇ」
「どうしても大人がついて行けない人たちは、集合場所を決めて、集団登下校してたりするみたい」

 あたしの心の中に、あたしなりの考えが膨らみ始めた。

「ふぅん」
「幼稚園バスに乗る時みたいに、集まってさ、それで――」
「それって、あたしのせい?」
「……え?」
「あたしのせいで、そうなったの?」

 赤信号がピカーっと光ってる。
 あたしたちの足は、止まった。
 赤信号は、口の動きも止めた。
 お母さんは、黙った。

「ジュアのせいじゃ、ないよ」
「でも……」
「ジュアのせいじゃない。ジュアのせいじゃないよ。ジュアはなにも、悪くないもん」

 お母さんの語尾は、子どもみたいに感情丸出しだった。

 お母さんの心がぶるぶると震えているように、あたしには見えた。


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