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15.あたしのせい?
15-2
しおりを挟む信号が青になるまで、あたしたちは黙ってた。
信号が青になったら、お母さんは「青だ。行こう」とひとりごとを言うように呟いた。
あたしはお母さんに何を返すでもなく、ただ、ゆっくりと歩き出した。
学校が近づけば近づくほどに、あたしはチクチクとした視線を感じるようになった。
それは、開けちゃいけませんって扉を開けるような、入っちゃいけませんってところに入るような、ビクビクとドキドキが混ざった視線だった。
学校の正門の所に着くまで、ずーっと黙ってた。
大人がついて来ていいのは、正門のところまでって決まりらしい。
大人たちは、正門のところにバリアでも張ってあるかのように、立ち止まって、手を振って、来た道を戻りだす。
お母さんにも、あたしには見えないバリアが見えているみたいだ。
無言のまま立ち止まった。
あたしはそんなお母さんのことを見た。お母さんは、あたしの目をふるえる瞳で、じーっと見た。
「お母さん、今日は一日、家にいるからね。学校、辛かったり、帰りたくなったら、先生に言うんだよ。すぐに迎えに来るからね」
「なんか、大袈裟だなぁ。ヘーキだよ。……たぶん。それじゃあ、いってきます」
「うん。いってらっしゃい。ああ、でも、下駄箱まで、一緒に行こうか? 教室まで――」
「大人はここまでなんでしょ? いってきます」
「ああ、うん。迎えに来るから」
「わかってる」
お母さんと別れた後、急に心臓が痛くなり始めた。
お母さんと一緒だったから、お母さんがいてくれたから、少しは安心できていたみたい。
ひとりになったら、お母さんがいてくれたから目を背けられていたらしいドキドキをはっきりと自覚し始めた。
どうやって教室まで行けばいい?
どんな顔をすればいい?
何もかもわからない。
周りのことなんて気にしている余裕はなかった。
いいや、周りのことが気になりすぎるから、あたしはひとり、心のバリアを張っていた。
当たり前にやっていたことを、どうにか思い出そうとする。
すると、嫌な記憶まで一緒に思い出しちゃって、なんだか息が詰まる。
なんとか下駄箱までたどり着けた。
あちらこちらで「おはよー」って言いあう声が響いている気がする。
全部バリアで跳ね飛ばして、あたしは外靴を脱ぐ。
外靴を脱いだら、下駄箱にしまって、上履きを手に取る。
そんな、少し前まで簡単だったはずのことが、今日はとても難しかった。
下駄箱にくしゃくしゃになったプリントが何枚か押し込められていたから。
なんだろう……これ。
『アーッ! ジュアーッ!』
叫び声がした。びっくりして、声がした方を見た。ドッドッドッドッてすごいスピードで、ミキが近づいてくる。
「ヘーキ? ねぇ、ヘーキ? ヘーキじゃないよね? ヘーキ? ってか、髪、切ったの? 切られたわけじゃないよね? 切ったんだよね?」
身体をガシッと掴まれて、あちこちじろじろと見られる。
まるで、子どもを心配したお母さんみたい。
こんなことになるって思っていなくて、あたしは困惑した。
「え、え、えっと? 切った。自分でっていうか、ヘアサロンで切ってもらった」
「そうなの? めっちゃ似合ってる! ああ、もう、ジュアー! 心配したんだよぅ」
「あ、ご、ごめん。あと、おはよう」
「おはよう、おはよう! ジュア!」
ミキってこんな感じだったっけ?
なんだか、ミキの知らなかった一面を見た気分。
「アッ!」
ひたすら心配して、それを安心に変えたミキに、一瞬にして怒りが満ちた。
「え?」
「また……。これ、見つけたら捨ててたんだけど」
「ん?」
「ジュアが休んでる間、ジュアの下駄箱とか、ロッカーとか、いたずらする奴がいて。見つけたらすぐ取ったり、先生に報告したりしてるんだけど」
「そ、そっか」
「でも、ヘーキだよ! ジュアのこと、わたしが守ってあげるから」
ミキが胸に手を当てて言った。
「こういうことする変なヤツもいる。でもね、わたしみたいに、ジュアのことが大切で、ジュアのことを守るぞって思ってる人もたくさんいるからね」
「あ……うん。ありがと」
「さ、行こう。一緒に」
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