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ただのファン
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しおりを挟む「今日はなんとこの方が、BLUEの応援に駆け付けてくれました!」
司会者の声を合図に、俺たちのドラマの劇中歌が流れ、煙の中からルナが登場する。
手を振りながらも堂々と歩く姿は、会場の何万人もの人が息を飲むくらいに美しくて、やっぱりこいつは、魔女かスーパーモデルかだ。
…うん、やっぱり、メンズLだな。
『こんばんは~!』
「大人気モデルで、向坂さん主演のドラマ“新くんはズルい”ではヒロインを演じる、狭間ルナさんです!いや~、ドラマ、すごい人気ですね!私も毎週楽しみに見させてもらってますよ!」
『ありがとうございます!』
「ありがとうございます。」
俺たちが自然と隣に並ぶだけで、ファンからは悲鳴が聞こえる。
ファンはルナを快く思わないんだ。
それは、さっきのルナを見てしまうと、急にリアルなものに感じられる。
「BLUEの皆さんもドラマみてらっしゃるんですか?」
司会者からの質問に、メンバーは全員、見てまーす!なんて答える。
「もうね、るーなちゃんがほんまにかわいくて、おいユキそこ代われー!って思って見てますわ。」
「毎週楽しみに見てるんですけど、いつも一緒にいるユキのはずなのに別人で、なんか変な感じです。」
あはは、なんて笑っていると、そろそろスタンバイを、のカンペが出るので俺たちはステージに移る。
「撮影ももうすぐクランクアップだとお聞きしましたが…」
『そうなんです。すごく仲の良くて楽しい現場なので、とっても悲しいんです。』
スタンバイをしながらルナと司会者の話を聞いていたが、すぐにもう曲紹介だ。
「それでは狭間さんから曲のご紹介をお願いします。」
『はい!
…今後も見逃せない展開が続く、ドラマ “新くんはズルい” の主題歌にもなっています。大切な人に気持ちを伝えるストレートな歌詞がとっても素敵な曲です。BLUEで、“告白”。』
***
自分達のステージを終え、舞台横にある出演者の席に行けば、俺の席はルナの横という指定だった。
番宣のため仕方がないにしても、ファンの声が直接聞こえるこの会場で並んで座るのは、ルナにとって気分の良いものじゃないだろうな。
先に座っていたルナは、俺たちに気付くとパッと表情を明るくする。
『もう本っ当にカッコ良かった~!ここから見れるなんて、特等席!』
目をキラキラさせて喜ぶルナに、皆はありがとう、とハイタッチをしてから席に着く。
『ユキ君もお疲れ様。カッコ良かったよ~!』
隣に座った俺にもそう声をかけてくれたが、こっちは、やっぱりまだムリをしてるんじゃないかと気が気ではない。
「…大丈夫?」
確かめるように顔を覗けば、
『うん。大丈夫。…ありがと。』
いつも通りのルナだ。
「なら、良かった。」
そう言って俺は、ルナの細い指に自分の指を絡めた。
強気にそんなことしてみたけど、やっぱり怒られるかな、と思ってルナを見れば、
『…ワイプ抜かれたらどうするの?』
なんて、自分の感情とは違うところに言い訳を探すから、
「そんなの今更、どうにだってなれば良いよ。」
絶対に離してやらないと、心に誓った。
そしたらルナは、何がおかしいのか突然笑い出す。
『ユキ君?』
「ん?」
『私、やっぱりただのファンだよ。』
それは昔、ポスターの中の悠二に向かって話しかけるルナに俺がかけた言葉。
『だって…隣で手を繋いで欲しいのは、ユウジ君じゃない。』
ねえルナ、それは、俺、期待しても良いってこと?
そう聞くまでもなく、もうほとんど通じ合っているのに、やっぱり臆病な俺は聞けなくて。
黙ってルナの肩に、頭を預けた。
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