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言わないよ
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しおりを挟む「また皆に迷惑かけることになって、ごめん。」
翌日、最後のドラマ撮影を終えてBLUEの楽屋に合流した俺は、メンバーに頭を下げた。
昨日のデート報道で打撃を受けるのは、俺だけじゃない。
「…ええよ。べつにかまへんって。それより手に持ってんのお土産とちゃうん?はよ出し!」
なのに皆は、笑って許してくれるんだ。
「お説教は社長にされたでしょ?それでもルナちゃんと別れるつもりないんだったら、俺らはもう言うことないって。」
「そうですよ。皆、色々抱えながら夢を追いかけてるんだから。お互い様。」
「俺らだって、ルナちゃんには、恩があるしね。ユキをこんなに表情豊かにしてくれてさ~」
ああ、俺はメンバーにも頭が上がらないな。
「…それ、ルナのチョイスだから、美味しいか分かんないけど。缶は悠二にやれってさ。」
今朝早起きして底にルナのサインと、ユウジ君大好きです、応援してます!なんて書いていた。本当に抜かりない。
…俺には絶対に、好きだなんて言わないんだろうな。
でも、それでも良いじゃないか。
言葉にしてくれなくたって、確かにルナは、俺を必要としてくれている。
たとえあと1年で終わってしまうとしても、俺たちは今、確かに幸せを感じられる。
もう、それだけで、十分なんだ。
だから、ルナの笑顔を曇らせるようなこと言って、困らせたりはしない。
分かってるよ、と腕を開いて、ルナとルナを取り巻く全てを、俺が包み込んでやろう。
***
「…ユキ、お前、今幸せなんだと思ってたよ。」
ユウジに見せたその歌詞は、そんな気持ちを込めて書いた。
「…いや、幸せだよ。ちゃんと。でもさ、それが形に出来るかどうかって、別じゃない?俺ら、もういい歳なんだし。」
そう言って俺は、読んでいた悠二の書いた方の詩を掲げて見せた。
こっちは、コッテコテのウェディングソングになりそうだ。
「結婚、すんの?」
尋ねれば、ムリムリ、なんて笑う。
「だって、先輩、誰も結婚しねえじゃん。先越せないって。」
「だよな~。」
タレントの恋愛をオープンにしたがらない事務所カラーのせいか、デカイ交際報道出してるのだって俺くらいだ。
子供の頃は、世界がこんなに複雑だとは知らなかった。
誰かを好きになって、誰かが好きになってくれて、だからずっと一緒にいたくって…
そんなのは、サンタクロースと同じレベルの子どもだましだ。世界規模の大嘘だ。
順番だってめちゃくちゃだし、全部上手く揃うことなんてそう無い。
やっと揃ったかと思えば、期限付き?
どうしてこうも、上手くいかないんだろう。
どうしてそれでも、人を好きになることをやめられないんだろう。
ルナの言う通り、本当に、バカみたいだ。
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