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言わないよ
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しおりを挟む久しぶりのラジオは楽しく終わって、健ちゃんと俺は帰る方向が同じなので一緒に車に乗り込んだ。
「いや~、なんなん、帰ったらるーなちゃん待っててくれはるん?ハンバーグ作って?贅沢やなぁぁー」
俺にも美女を紹介しろ、と小突かれる。
「しかも何?明日早くない~言うてたやん。ユキも明日オフやんな?…したら今夜は寝かせんのやろ~?」
ニヤニヤとよく喋る健ちゃんにつられて、俺はつい口を滑らせてしまう。
「いや、あいつ処女だし。」
「ブフォっ」
健ちゃんは口に含んでいた水を噴き出す。
「は?!なんの冗談?!」
「…いや、まじだから、コレ。」
ルナには今まで友達もいたことがなければ、彼氏もいなかったわけで。
「ウソやん…え、そんで何、もう3、4ヶ月も一緒に住んでてユキ手出してないん?」
「…まあ。」
「え、あのエロエロ大魔人のユキが?」
「おい誰がエロエロ大魔人だよ。」
「いてっ、叩くなや~」
…まあ確かに、今夜のラジオも8割下ネタだったけど。
でも男同士で一番盛り上がるのなんて、ソレしか無いだろ。
「いや~マジか~なんやそれ、純愛という名の拷問やん~」
健ちゃんは、一気に憧れなくなった~、なんて大袈裟にショックを受けてみせる。
本当は、一度だけ、手を出しかけたことがある。
…つい2週間前のことだ。
***
『ユキ君~』
仕事仲間と飲んで帰って来たルナは、待っている間にソファで寝てしまったらしい俺にいきなりダイブして来た。
『わ~ユキ君の匂いする~』
俺の首に腕を巻き付けて、笑いながら喋るルナの吐息が俺の耳にかかって。
「ちょ、ルナ、酔ってんの?」
引き剥がそうにも、離れようとしない。
とりあえず身体を起こせば、ルナは突然キスして来た。
「おい、ルナ…」
『ユキ君』
諌めようと口を開けば、いつも通りに言葉を被せてくる。
『ユキ君は、ルナがいなくなっても、ここにいてくれる?』
「…え?」
一瞬、何を言ってるのか理解できなかった。
『ルナがさ、この家を出て行っても、ユキ君は、ここにいて、ルナのこと忘れないで待っててくれる?それで、いつかルナが帰って来たら、いつもみたいに、ちゅーしてくれる?ぎゅってしてくれる?』
大きな瞳に涙を溜めて、熱っぽく俺を見つめるから、
「…ルナが悪いよ?」
思わずその場に押し倒した。
俺だって、我慢してるんだぞ。
誘惑して来たのは、ルナの方だ。
ギリギリで保っていた理性なんて一瞬で吹き飛んで、いつになく荒っぽく唇を奪って、いつもより深く噛み付いた。
ルナから漏れるアルコール混じりの吐息が、やたらと色っぽくて。
俺はどこまでも溺れていく。
『…ユキ君』
素直に受け入れたくせに、ルナは、コレからというところで、悪びれもせず言う。
『私、処女だよ。』
それで俺は、一気に目が覚めて。
…あー、やらかした。
そう思った時にはもう、ルナは寝息を立てていた。
「…ルナ?え、寝た?!……マジかよ。」
やたら広い家に 俺の声とルナの息づかいだけが響いて、どこにもやり場の無い熱と、言い知れぬ罪悪感とだけが俺の中に残った。
***
「まあ、さ。」
俺は打ちひしがれている健ちゃんに言葉を探す。
「…別に処女くらい奪ってやる覚悟はあるんだけどね。その後も毎日一緒に生活すると思うと、なんだ、一度覚えたら忘れられなさそうで?」
「ああ~、せやな、毎晩毎晩はさすがにお互い疲れるもんな~、て俺に何言わすねん!」
結局惚気かいな!なんて言いながら健ちゃんは車を降りて行った。
…本当は、俺が一番ビビってるんだ。
ルナがいなくなってしまった時、俺はどうなってしまうんだろう。
想像もつかない。
誰かと恋をする時はいつだってそうだけど、ルナは特別、俺の世界を変えすぎてしまったから。
いつの間にか見え方の変わった景色からルナが消えた時、俺は、あいつのこと、もう一度探してしまうに決まっている。
だから…ルナの身体を覚えてしまう恐怖が、その甘い誘惑をも超えてしまうんだ。
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