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ありがとう
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しおりを挟む[こちらが昨日発表になりました、あのドラマ以来初のお二人の共演として話題の表紙です!同棲中、真剣交際などの報道で昨年の芸能界を大きく賑わせた、まさに噂の渦中にいるお二人が、大胆にもウェディング。
新聞各社も “ファン絶叫”、“ついにゴールインか?!”、等々、大きく取り上げています。]
[そして話題はもう一つ、この雑誌の見出しですよね。]
[そうなんです!
“5年間、ありがとう。るーな、卒業スペシャル号!” というこの見出し!デビュー以来5年間、専属モデルとして活躍して来た狭間ルナさんが卒業というのも突然の発表でして、一部では寿退社ならぬ、寿卒業では、なんていう憶測も飛んでいます。]
[昨日の午後1時に公式Twitterでこの表紙が公開されると、なんと1時間の間に3万リツイートという日本記録を樹立、現在もその数を伸ばしているとか。出版社及び双方の所属事務所への問い合わせも多発して、一時クラッシュ状態に。]
[今日から、渋谷を始めとする都心の駅などを中心に広告も多数掲示されるということで、まだまださらに反響を呼びそうですよね!]
[いや~、未だ発売前ですが、この盛り上がりっぷりですもんねぇ。芸能界の歴史に残る表紙になることは間違いないですよね。]
[そして何と言っても気になるのは!このお二人の表情!]
[またこれがねえ~!狭間さんと言えば可愛らしい笑顔がチャーミングなんですが、なんと、おそらく最後であろう表紙で初公開した “涙”。
白いドレスを身に纏った彼女をお姫様抱っこする新郎姿の向坂さんも、もうなんっとも切ない表情ですし、狭間さんも、涙ながらに愛おしそうに彼を見つめていましてね。]
[お二人とも俳優としても活躍していますので、なんとも言えませんが…やっぱり報道が出てますんでね。この夕日に照らされた麗しすぎる表紙、我々の想像を掻き立てますね~!]
[2月号の発売は来週の水曜日、要チェックです!]
『……ユキ君?』
ルナの声に、テレビを消した。
『…準備、できました。』
振り返れば、お気に入りのコートにマフラーを巻いたルナが立っている。
俺はなんて声をかければ良いかも分からずに、黙ってその手を取った。
いつも通りに、玄関を出て、エレベーターを降りて。
エレベーターホールから既に、外に報道陣が大勢集まっているのがうかがえる。
あの表紙が発表されたからだろうな。
…ああ、ここまでか。
きっとルナも同じことを思ったんだろう。
どちらからともなく、抱き合った。
「…裏口から出て行くんじゃなくて、良いの?ヤバそうだよ、なんか。」
『うん…まあ、こんなのも多分、最後だから。スーパーモデルらしく堂々と出て行きますよ。』
「それもそうか…。」
いやに反響するお互いの声が、必死に殺しているはずの俺の感情を強く揺さぶる。
気を緩めれば、ルナを壊してしまいそうなくらいに、俺の中のルナへの愛が強くなってることに、今になって気付くなんて。
もう少し早く気付ければ、何か、出来たんだろうか。
…いや、嘘だ。
本当は、とっくに気付いてた。
気付かないふりをしていただけだ。
…連れ去るなら、今だ。
このままこの手を引っ張って、どこまでも走って行って、誰にも見つからないところで、二人だけで暮らせばいい。
苦しみも、幸せも、全部2人だけで分かち合えばいい。
何もかも捨てて、俺について来いよ。
そう、一言、言えば良い。
…言うなら、今が、最後なんだ。
でも。
『…もしもし。はい、ありがとう。今、行きます。』
車、着いたって。
そう笑うルナが、俺の手を取るほど愚かじゃないのは、俺が一番分かっているから。
「…ん。」
やっぱり、黙って抱きしめることしかできないんだ。
『…ありがとう。』
ルナはそう言って、キスをした。
触れた唇を離して、不敵に笑って。
くるっと後ろを振り返って、ランウェイさながらのキャットウォークで外へ向かうその背中を、ずっと、見ていた。
ドアが開くと、一気にフラッシュがたかれる音がして。
その光の中に、スッと吸い込まれるように、ルナは消えて行った。
ドンっというドアの閉まる音が広いエレベーターホールに響いた時、
キスをする時にルナが俺の首に腕を回すのが好きだったな
なんて思った。
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