あほうぎ

降守鳳都

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くちよせ

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 『ついたて』で苦労しながらも前へ少しずつ進み、みんなに声がかけられる所まで来た阿呆の後ろに、明らかに阿呆を善い(よい)と思っていない人が立っていました。阿呆は固まったまま動けません。
 神様が雲上から、後ろに立っている人の心をのぞいてみると、心の玉に悪い蛇(へび)が巻きついているのが見えたのですが、神様では何とも出来ません。
 どうしようかと神様が思うとすぐに、遙か遠くの星にいる仏様の七人の使いがスッとやって来て、続けて仏様も現れました。仏様は一枚の紙を折って形あるものを創り、神様に手渡してから、おごそかでさらに頼もしい声で「この『くちよせ』を与えなさい」と言って遙か遠くの星に戻っていきました。
 神様が『くちよせ』を阿呆のところへおろそうと下を見ると、仏様の七人の使いたちが人の心の玉に巻きついている悪い蛇を取り除こうとしています。
 その様子を見た神様は、あわてて『くちよせ』を阿呆のもとへおろしました。
 阿呆の前にある『ついたて』が、阿呆の目の前で『くちよせ』に形を変えました。そしてすぐに阿呆の心に声がひびいて来ました。
 「その『くちよせ』を手に取ってふり向きなさい」
 阿呆が言われるまま、『くちよせ』を手に取ってふり向くと、口を閉ざしている阿呆の口からおごそかな言葉が飛び出して来ました。
 「人よ。阿呆を受け入れよ。阿呆は善いものである」
その言葉が出たのと同時に、人の心の玉に巻きついている悪い蛇は仏様の七人の使いたちによって取り除かれ、人は『くちよせ』の前にひれ伏しました。
 しばらく経ってから、阿呆が畏れながら人の肩をたたくと、人はゆっくりと顔を上げました。目から涙がこぼれていました。そして、泣きながら自分の両手で阿呆の両手をしっかりと包み込んで、「ごめんよ」と小さくつぶやきました。阿呆はその言葉を聞いてゆっくりとうなずきました。
 「ぼくがみんなにきみが善いものだと知らせるよ」と言ってから、人はそこを去りました。
 何かが変わりそうな感じが阿呆を包み込みました。
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