あほうぎ

降守鳳都

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おいのり

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 風がとても強い夜。海の向こうから美しい人が舟で流れ着いて、朝早くにみんなのたくさんいる所にやって来ました。
 みんなは美しい人を恐れて、家から外へ出るときには『かぶりもの』を顔にかぶって出かけるようになりました。
 阿呆はみんなに向かって、「美しい人を恐れることはない」と言いましたが、耳をかたむける人はだれもいませんでした。
 それからしばらくして、病(やまい)になる人が出るようになりました。『かぶりもの』をかぶっているので、光や空気を体にちゃんと体に入れることが出来なくなり、病になる人が出たのですが、みんなの病が出たのは美しい人がやって来たからだ。と思い込みました。
 美しい人が、みんなによって迫害(はくがい)されることを心配した阿呆は、美しい人を家の中へ隠すことにしました。
 それから、みんなのたくさんいる所で美しい人を見なくなったので、みんなは『かぶりもの』をかぶらなくなりました。
 すると、病になる人はすぐにいなくなりました。そして、「やはり美しい人が病を連れて来ていたのだ」と言い合って、美しい人がいなくなったことを喜び(よろこび)ました。
 ある日、みんなのうちの一人が、阿呆の家に美しい人がいることを知りました。
 そこでその人は阿呆に「美しい人を隠していてはいけない」と言ったのですが、阿呆がまた「美しい人を恐れることはない」と言ったので、その人はむらじいのところへ行って、「阿呆が美しい人を隠している。病がまた出る」と告げました。
 阿呆は美しい人に害がおよぶのを怖れて、美しい人をはじまりの山へ逃がしました。
 その日の夜、火明かり(ひあかり)を手に持ったみんなが阿呆の家にやって来ました。むらじいが家の中にいる阿呆にこう呼びかけました。
「美しい人をすぐにこちらに出しなさい!」阿呆はむらじいの呼びかけに対して、
「美しい人を差し出すつもりはありません」とこたえました。
 その言葉に腹を立てたみんなは、火明かりを阿呆の家にいっせいに投げつけて、急ぎ足でそれぞれの家に帰りました。
 阿呆の家はあっと言う間に炎に包まれました。阿呆は炎の熱の中で、泣きながらのたうち回り、這いずり回っているうちに、体中の水がなくなって、黒焦げの塊(かたまり)となって、灰となって、そして…消え去りました。
 雲上の神様は、この出来事を悲しんで、遙か遠くの星にいる仏様に呼びかけました。
 仏様はすぐさまやって来て、紙を折って形あるものを創ってから「この『おいのり』を美しい人に渡しなさい」と言って、すぐさま遙か遠くの星へ戻って行きました。
 はじまりの山の大石の前で、両手を合わせている美しい人の両手のすき間に、神様が『おいのり』をはさむと、美しい人は閉じていた目を開いて『おいのり』を見て、阿呆がいなくなったことに気づいて泣きました。
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