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翌朝、紐のパンツは鞄に入れて、いつもの下着とチノパン。Tシャツにカーディガンを羽織って、一本早い電車に乗るため、少し急いで駅に向かう。二両目に、諏訪はいた。空いていて、すぐにわかった。
「おはよう。これだけ空いてたら心配ないね。」
思っていたことを言い当てられて、苦笑する。
「そうですね。あの人も、この時間にはいないだろうし。」
諏訪がうん、と頷く。
「・・・先生今日もお弁当ですか?急がせてしまってすみません。」
一本早い電車にしたために、早起きさせただろうと謝った。
「作ってくれるのは奥さんだから。」
「えっ?」
半分予想してした答えだったとはいえ、やはり驚いた。
「先生指輪してないから、男専門なんだと思ってました。」
ちゃんと妻帯者だったなんて。
「お子さんもいるんですか?」
「いるよ。もう中学生だから、あんまり可愛げないけど。指輪は汚したくないから、学校では付けないんだ」
けっこう大きい子がいるんだ・・・。
「え?でもなんでじゃぁ僕なんかに声かけたんですか?」
「なんか、なんて言わないで。それは本当に、この前も言ったけど、共感できそうって思ったからだよ。見た目も好みのタイプだったしね。」
諏訪はさわやかに笑った。
「まぁ、後何日か付き合ってよ。それで満足のいく作品に仕上げてあげるから。仕上がったら、複製してあげるよ。」
ドキドキした。やはり、諏訪の目に、自分がどんな風に映っているのか興味があった。
「あの・・・怖くてあの下着付けてこられなかったから、あとで着替えますね。」
「あぁうん。その方がいいね。私も、あんなことになるなんて思わなくて。ごめんね。」
どうやら諏訪も納得してくれたようだった。ホッとして、乗り換えの駅までをお互い無言で過ごす。電車を乗り換えると、諏訪がまた口を開いた。
「ヌードモデルなんて頼んで、彼氏さん怒らなかった?」
「昨日少し拗ねてたっぽいですけど。描いてもらうこと自体には賛成みたいでした。でも、先生が僕に内緒で付き合ってって言ったことまでは、さすがに話してません。」
「あれは・・・なかったことにしていいよ。悩ませてごめんね。」
諏訪が、何度目かのごめんねを口にした時、電車は目的の駅に到着した。
結婚しているということは、不倫の申し出だったのかと、今更ながらに驚く。そういうタイプには見えないからだ。諏訪の口から、なかったことにしていいと聞き、ほっとしていた。
一臣には言えなかったからだ。これで、言わなくてもいいことになった。
ずるい・・・だろうか?
でも、一臣だって、バレンタインにはそれなりに贈り物をもらって帰ってきたのだ。気にしている女性社員はいるというわけで。もちろん、自分が贈ったチョコレートを最初に食べてくれ、残りは山分けにしたわけだけれども。
あの時も、もやもやしたな。
手作り以外は、食べようよという一臣。食べ物に罪はないからと。ただし、潔癖なので、手作りの品にはごめんなさいをした。
「早乙女君?」
呼ばれてハッとする。
「どうしたの?」
「あ・・・その・・・。」
一臣のことを考えていたが、対外的に何と呼べばいいかわからなかった。言葉を濁すと、諏訪は察したようで、彼氏さんのこと?と問うてきた。
「先生に、付き合ってって言われたこと、言わなくてよかったなって。・・・もめたくないし。」
「なかったことにしたんだから、もう忘れていいよ。君たちはうまくやってるみたいだから、水を差したら悪いじゃない。」
ケンカしてるカップルがいると、絵を見ればわかる。諏訪は言った。
「君の絵は荒れてない。時々悩んでいるような感じの時もあるけど、いつも綺麗にまとまってる。私は調和の取れた絵が好きだよ。」
「・・・僕もです。」
バランスのいい、丸く収まった絵が好きだった。癖がないと言えば聞こえはいいが、突出していいところもない。あまり評価にはつながらないと考えていた。没個性だと思っている。
「個性が生かされてないって、他の先生には言われます。」
「それは見る目がないなぁ。君の個性は、誰にでも優しく映る絵が描けるところだよ。」
素直で優しいところがよく出てる、と諏訪は言った。
話しながら、諏訪の部屋についた。諏訪が、明かりのスイッチとエアコンを入れ、暗幕を閉める。
「少し涼しくなったら始めよう。」
今日は時間にゆとりがあった。弁当と飲み物を冷蔵庫に入れさせてもらい、部屋の気温が下がるのを待つ。大型のエアコンは、狭い諏訪の部屋をすぐに快適な温度にした。まだ始める気がないのか、諏訪はコーヒーを入れ始めた。カップは二つ。どうやら、自分の分もあるらしい。
「仕事始めに、これを飲むのが習慣になっていてね。スイッチが切り替わるというか。・・・君にもそういうのない?」
言われて考える。さぁ描くぞという気持ちになるスイッチ。「僕は鉛筆を削っているときに、スイッチ、入ります。あえて、カッターで削ったりして、その間に気持ちが静まるっていうか。」
「あぁ。そういうのもいいね。わかる気がする。」
わかってくれるんだ・・・。
共感を示してくれる諏訪に、好意がないと言えば嘘になる。
一臣も、自分の話は途中で遮ることなく聞いてくれるが、絵のことになると、そこはやっぱり感性の問題なので・・・。
父はよく、話の腰を、あぁいい!もういい!と折るタイプで、せっかく会話のチャンスを得ても、不完全燃焼で。
一臣は聞き上手。けれど、諏訪とは話していて楽しかった。
浮気・・・しているつもりはないけれど、少し後ろめたい。
諏訪はコーヒーを半分ほど飲むと、さぁはじめようか、と声を上げた。
「あ、じゃあ着替えてきます。」
「どこで?」
「・・・トイレ。」
諏訪は、なら私が外に出ているから、その間に着替えて、と廊下に出て行ってしまった。慌てて、バッグから紐のパンツを取り出し履き替え、シーツをくるくると巻き付ける。ほどなくして、諏訪が戻ってきた。Tシャツも脱ぐ。椅子に座ると、昨日と同じように、諏訪が襞を整えた。出しっぱなしだったイーゼルに、スケッチブック。今日もデッサンのようだ。
ふと床に落ちた青い絵の具が気になって、目を伏せる。すると、諏訪は、いいね、そのままで、と鉛筆を滑らせ始めた。
紙と鉛筆の摩擦の音が心地いい。耳をそばだてて聞いていると、諏訪はいい顔するね、と呟いた。
そしてまた、時間はどんどん過ぎていった。
「友成、旅行行かない?」
一時ごろ、作業部屋にやってきた友成に、持ち掛けてみる。
浜松の件だ。
友成は、ぽかんと口を開けたが、すぐにどこに?と聞いてきた。興味があるようだった。
「一臣さんが、学会で浜松に行くんだけど、友成と観光でもしてきたらって言うから。」
「一臣さんが一緒なの?」
友成が不思議そうな顔をする。それはそうだろう。
「一緒なのは、行と帰りの新幹線だけ。あとは自由行動なんだ。ウナギ、食べたくない?」
「ウナギかー。・・・餃子も食べてみたい。」
浜松は餃子も有名だ。
「いいね。うち昨日餃子だったけど、有名なところのはやっぱりそれなりに美味しいんだろうね。」
食べ盛りの男子が二人。色気より食い気だ。
「調べてあるの?」
「まだこれから。あと砂丘があるらしくて、見てみたいなって。」
友成は、そうなんだーと言いつつ、どうやら乗り気だ。
「新幹線代どうしよう?バイトしてる暇ないから、親に頼むしかないかな。夏休みだし、混んでるよね。」
「そうだね・・・。」
混んでいる新幹線を想像して、頭痛が起きそうだとげんなりする。でも、ついていきたい理由は、他にある。一臣は、会いたくないと言っていたが、充に会ってみたいのだ。会える確率は低かったけれど。
どんな人なんだろう?今は幸せなのかな・・・。
充にとっても大事な人だろう一臣を、奪ってしまたのではないかという気がしてならない。取り返しに来たりはしないだろうけれど・・・。
大人だし。妻帯者だし。子持ちだし。
でも、一臣が子供と、両親を失った時、お酒の付き合いがあったと言っていた。一臣にとっても、その時は慰めだったのだ。
今は?
僕は一臣の支えになってるだろうか・・・?
「すばる?」
「えっ?」
「・・・最近考え事多くない?」
友成が心配そうな顔をしている。友成になら話しても大丈夫だろうか。口は堅い。信頼もしている。
「あのね・・・。」
一臣が、かつてのパートナー二人に手紙を送ったこと。それぞれの返事のことを、かいつまんで話した。友成は黙って聞いていたが、話し終えると首を傾げた。
「それ、悩む必要ある?・・・佐伯さんは、すばるのことが一番大事って、言ってくれたってことでしょう?」
「うん。」
「気持ちはわかるけど、元彼さん?にすばるが会うのはお勧めしないな。会ってなんて言うの?もう手紙書かないでくださいとでも言うつもり?」
言われて、もやっとする。そうではない・・・と思う。手紙や、年二回の贈り物は、大人の付き合いだと思うし。それくらい、許せなくて、一臣の彼氏でなんていられないと思うし。
けれど・・・。
「ウナギは食べたいけど、そういう理由ならどこか他のところ行こうよ?遠出しなくても美術館巡りとかさぁ。都内なら物産展多いし、地方の食べモノ食べたいなら、駅地下でも、デパ地下でもいいじゃん。要は、日曜日一人でもやもやしながら留守番するのが嫌なんでしょ?」
言い当てられて、ドキリとした。
「そう・・・だね。そうかも。」
「なら、オレが暇つぶし付き合ってやるよ。も~すばるはさぁ、もうちょっと人に頼りなよね。オレのことなんか、気を使うことないんだからさ。」
「・・・うん?そうかなぁ。」
友成はそういうけれど。まだ知り合ってそんなに経っていない。信頼はしてるけど、気を使わずに、暇つぶしに付き合えとは、言い出せなかった。
「じゃぁ。日曜は都内でプチ旅行しよ?」
「うん。ありがとう。」
友成は、満足そうに笑った。
金曜は、諏訪のモデルのバイトはしない約束だったので、朝から友成と宿題をした。
そういえば、バイト代の話をしないままだったなと思い出したが、楽しませてもらっているし、まだ二日目だしと後回しにするとことにした。お金の話は、あまりしたくない。諏訪との時間に金額が付くのが嫌だった。
それは、去年の夏、一臣と会った時の感覚に似ていた。
『初めて』を買ってもらった時のことだ。あの時は、気持ちの入っていない、言葉だけの「愛している」だったけれど、それに値が付くのが嫌だったのを思い出していた。『初めて』の金額は、当時まだ高校生だった自分が手にするにはかなり大きい額だった。その証拠に、まだその封筒にはかなりのお金が残っている。一臣が使わせてくれないのだ。必要なものは、大家である自分が払うのが当然だという。それに甘え続けていたら、いつか自分は一臣の負担になりそうで怖い。そういえば、メガネ代も払わせてくれなかった。当然、食費も一か月単位で預からせてもらっている。家計簿をつけていたが、一臣はそれすらも、信用してるから、と見てくれない。それで本当にいいのかはなはだ疑問だ。
今週の土曜は、先週連休初日にバイトに出たこともあって、一臣の仕事は休みだった。日曜日の遠出を思えば、良かったと思う。一臣は、時には夜勤明けで日曜そのまま出かけていくこともあったからだ。そんなのは稀だったが。そういう日は、帰ってから早々に食事と風呂を済ませ、早い時間に寝てしまう。でないと月曜の仕事に差し支えるから。過密スケジュールを訴えても、現場の医者はもっと大変と、聞く耳持たない。睡眠時間がとれるだけ、幸せなんだよ、と笑うのだ。
夜には帰ってきて、一緒にご飯食べてもらえるから、淋しくはないけれど。
やっぱり体が心配だなぁ・・・。
今日はおねだりしないでおこうかな。とは、週に一回のセックスだ。快楽が欲しいわけではない。繋がると安心するから。
もちろん、一臣の愛情とテクニックに翻弄されて、気持ちいい思いをするのも、嫌いではなかったが。一緒に眠るだけでも、十分幸福感と充足感は得られた。一臣とは、丁度十歳年が離れている。まだまだ十分若い。枯れてないと豪語する程度に、一臣は一度盛ると容赦がない。しかも、事後もケロッとしていて、本当に疲れたそぶりを見せないのだ。自分はと言えば、いつもぐったり、シャワーも浴びずに眠ってしまうのに・・・。
一臣のことを考え出すと、キリがなかった。
今日の夕食のメニューは生姜焼き。相変わらず、肉が食べたいとリクエストが入るからだ。社食でも、メイン料理は肉と魚を選べるらしいのだが、絶対肉を食べているに違いない。
そうこうしているうちに、七時を回った。金曜は早めに帰ってくる彼だ。今日はまだメールもないから、定時に上がれているだろう。気をつけて帰ってきてほしい。金曜は、外食の約束だったが、今日はなんとなく家で食べることにした。
不意に、スマホが鳴った。電話の着信音だった。実家からだ。自宅からの電話に、母だろうか、父だろうかと、手が迷う。数秒おいて、通話にした。
『もしもし?すばるか?』
父だ。
「うん。どうしたの?」
電話してくるなんて珍しい。
『どうしたのって、お前、お盆にも帰省しないで。補講でもあるのか?』
父は、私立の高校の教諭をしている。
「そうじゃないけど、友達と学校で宿題してた。お盆・・・そうだね。ごめんなさい。」
お盆は八月のイメージが強いが、早乙女家はずっと七月にやるのが習わしだった。元気にしてるならいいが、と父は穏やかに言った。以前のような、キツイ話し方ではない。
『明のお腹も目立ってきたし、長男のお前がしっかりしてくれないとな。墓参り、少ししんどそうだった。』
「忠則さんいるでしょう?」
『婿は、また話が別だ。お前ほどは可愛くないよ。比べて見てよくわかった。今まですまなかったな。』
何をどう比べたのか、父はそう思ったらしい。長男である自分の存在を認めてくれたのだった。
「姉さん順調?」
『あぁ。つわりも終わったとかで、あれが食べたいこれが食べたいと言うから、用意するのが大変だ。まだ定かじゃないが、お腹の形からして男の子かも知れないな。』
「そんなの、わかっちゃうの?」
『だいだいな。昔から言われてる。』
お前の時もそうだった。と父は懐かしそうに言った。
「でも、女の子が欲しかったんでしょう?」
『それは、母さんが・・・いや、まぁそうだな。でも今は、無事に生まれてきさえくれればいいと思えてるよ。』
「母さんは?」
『お前に着せられなかった分、女の子の服を物色してるよ。』
やっぱり、と思う。母は今でも女の子が欲しいのだ。父の方は、どちらでもよさそうでホッとした。
「ごめん。八月に入ったら、一度顔を出すよ。宿題が多くて、七月中は学校に缶詰めかな。」
諏訪とのバイトの話はあえてしなかった。中学も高校も、学校祭には来なかった人だ。今度もきっとそうだろう。ならば、諏訪の描いた自分の絵を見ることもないに違いない。余計なことは言わないに越したことはない。ところが、父親は意外なことを言い出した。
『学校祭10月だったか?私の学校と被らなければ、行ってみたいと思ってる。お前の描いたものを見たい。』
「えっと・・・うん。10月。見に来てくれるの?」
『都合が会えばだが。学費も払ってることだしな。』
そこでお金の話かと思いつつも、驚いてしまう。
「うん。ありがとう。・・・ほんとに無理しなくていいから。」
そう言うと、来てほしくないのか?と声音がピンと張った。
まずい、怒らせたかな?
「そうじゃないけど。うん。頑張って描くよ。ありがとう。」
言いつくろうと、気をよくしたのか、じゃぁ頑張れよと通話は切れた。
そうか。父は、生まれてくる孫のこと、それなりに楽しみにしてるんだな。自分のことも、今更ながら気にかけてくれてる。つかず離れずのこのくらいの距離感がちょうどいいのかもしれない。
そんなことを考えていると、玄関の鍵が開く音がした。
夕食を食べながら、先ほどの電話の話をしていた。一臣は、生姜焼きにかぶりつきながら聞いている。よほどお腹が空いていたのだろう。
「で、今年はお盆に帰るの忘れちゃって、ご先祖様には悪いことしちゃった。」
「すばるのうちは、七月にするんだね。うちは八月だな。兄の家に仏壇があるから、さすがに顔出さないとまずいかな。」
うちの会社お盆休みあるんだよね。とため息する。
「お兄さんの家遠いの?」
「・・・山梨。」
桃が美味しいところだ。そういえば、一臣の兄の話はあまり聞いたことがない。年賀状のやり取りくらいだ。
「仲悪いの?」
「悪くは・・・うーん。お嫁さんのお母さんと同居なんだよね。ちょっと、気まずくて。あとは、男の子が二人いて、賑やかなのはいいんだけど、お小遣い要求されるしね。」
それだけ聞いて、めんどくさそうだと思ってしまった。
「仏壇は、兄の家だけど、お墓自体は都内の霊園にあるから、お墓参りだけで済ませられないか連絡してみるよ。お墓掃除しておいたら、そんなに文句は言われないと思う。」
すばるも一緒に行こうね、と一臣が笑った。
「え?いいの?」
「両親にも紹介しておきたいから。」
ドキと胸が高鳴った。この間のプロポーズといい、一臣は本当に自分のことを大切に、特別にしてくれている。
「うん。ありがとう。」
照れくさくて、苦笑すると、一臣はほかにどんな話したの?と聞いてきた。
「あーやっぱりお母さんは女の子が欲しいみたい。でも、お父さんは、お腹の形で男の子だろうって言ってた。そんなの本当にわかるものなの?」
「あぁ。横に大きくなると女の子で、前に突き出してると男の子、って言われてるね。生まれてみないと分からないけど。」
エコーで大体わかるけどね、と一臣はまた食べながら答えた。
「エコーで、どれくらいわかるの?」
「胎児の向きにもよるけど、九割わかるかな。」
そんなに?
「今は3Ⅾカラーの写真が撮れたりして、機械の進歩はすごいよ。」
「そうなんだ・・・。」
「で?すばるはどっちだったらいいとかあるの?」
言われて首をかしげる。自分は特に・・・無事に生まれてさえくれれば・・・。そう思って、そう思えるようになっていた自分に驚いた。
「僕は、どっちでも。無事ならそれで。」
「・・・すばるは偉いね。ちゃんとそう思えるようになったね。」
それが正解。と一臣が褒めてくれる。
「あとは忠則さんかな。跡取りはやっぱり男の子欲しいよね。」
「家督は、お姉さんが継ぐの?」
「だって、僕赤ちゃん生めないもん。」
一臣は、それはそうだけど、と神妙な顔をした。
「すばるが長男なんだから、いずれは相続の問題とか出てくるでしょう?」
「僕は多分、老後のお母さんの面倒とか見てやれないから、姉さんがお世話してくれるなら遺産は放棄しようと思ってる。」
一臣は黙ってうなずいた。
「そうだね。それも一つの選択肢だね。」
「うん。」
まだ先の話だけれど、このまま一臣と暮らしていくのなら、必要な話だった。実家とはできるだけ、距離を置いておきたいのだ。かかわると、体調を崩すのが目に見えているから。
一臣は、生姜焼きで、ご飯を二膳食べて、キュウリスティックをかじり始めた。他に、にんじんと、セロリも用意してみたが、セロリに手を付けないことは知っていた。スティックの先に、マヨネーズを少しつけてはポリポリしてる。その様子がなんとも微笑ましくて笑ってしまった。
「何?」
「一臣さんウサギみたい。」
「すばるだってハムスターみたいになるでしょ?」
ハムスター??
「そんなに膨らませてないよ!」
一臣がいるだけで、父から電話があった日も、笑っていられる。こんな日常がとても大切だった。
金曜の夜は、特別。でも今日は、日曜に遠出する一臣のために、体力温存しようかと思っている。とりあえず、風呂は一緒に入るとして、一緒に寝るとして、セックスは、一臣に任せることにした。すると一臣はとんでもないことを言い出した。
「ね?すばる・・・一人でするの、やってみようか?」
「えっ?一人でって、え?それってここで?」
ここで、とは、一臣の寝室のベッドの上だ。
「そう。すばる一人えっちしないでしょ?見たいなー。」
う。
一臣は、一人でするのを見せないかぎり、寝る気もないようで。どうしよう困った。ペニスは、自分にとってまだ好きになれない場所だ。一時は切り落としたいとまで思ったところだ。もちろん、そこから生まれる快感も、一臣と出会うまでは嫌いだった。一臣に慣らされて、一臣がしてくれるなら、ようやく受け入れることができ始めたところなのに。それを自分でするのはかなり抵抗があった。
「しなきゃダメ?」
「すばるくらいの年頃なら、好きな子は毎日だってしてるよ?」
「好きな子はでしょ?僕は違うから・・・。」
暗に嫌だと抵抗を試みる。けれど、一臣は静かな笑みを崩さずに、すり、と膝がしらを撫でた。お互いバスローブを羽織っただけだ。下着はつけていない。ぺらりと捲られると、そこがあらわになった。
「ん。半立ちだけど、俺の言葉に反応してる。嬉しいよ、すばる。」
ちょん、と先端に指先で触れて、すぐに離れた。
「見たいな?というか、一人でできるようになってほしいな。すばるにはもっと自分の体好きになってほしいから。」
そう言われても、だ。
「・・・・・・。」
無言の抵抗をしてみる。すると、一臣が譲歩案を出してきた。
「一人で立たせられたら、舐めてあげようか。」
ぴくん、と中心が揺れた。舐めてあげようか、にあからさまに反応してしまい、恥ずかしさで顔から火が出そうだった。ポッと全身が熱くなる。それだけで、中心に熱が集まり始めた。ゆるく芯を持ってくる。
「いいね。このまま言葉責めも面白そうだけど・・・。ほら、手を添えてみて?」
プルプルと頭を振る。しかし、一臣は強引に右手をそれに導いた。
「握って・・・。そう。軽くでいいから上下にしごいて・・・亀頭を撫でて?あぁほら濡れてきてる。ヌルヌル、気持ちいいよ。手のひらで擦ってみて?」
一臣の要求はどんどんエスカレートしてくる。それに体が反応して、操られているかのように、その通りに右手が動く。
キモチイイ・・・。
どうしよう気持ちいい。弄っているのは自分なのに、一臣にされているのと同じくらいイイ。
ペニスは完全にかたく立ち上がった。
「よし、上出来。舐めてあげようね。」
一臣は褒めてくれ、頭を軽く撫でると、立てた膝を割り開き、そこへ顔をうずめた。ぺろ、と熱い舌が先端に這わされる。
ぴくっ!と手を添えられていないそこが揺れ、一臣の頬にあたった。
「元気だなぁ。」
クスクス笑って、先端に舌を当てては反応を楽しんでいる。
じらされて、腰がうずき始める。もじもじと腰を振っていると、一臣はこっち?と尋ねてきた。コクコクと頷く。秘所に指が欲しい。本当は、一臣の熱いのが欲しいけれど。でも・・・
「いいね。俺も入れたい。先にイかせてあげようね。苦しそうだ。」
一臣は、かぷっと先端を口に含んだ。そのまま、頭を上下する。舌は敏感な裏側に這わされ、指先で茎をしごかれる。そこだけに与えられる急激な刺激に、すぐに限界が訪れた。
「あ・はぁ・・・あ・あ・でる。もう出る・・・一臣さん!一臣さん出ちゃうから放して!だめ・・・だめだからぁ・・・あっあっ・・・んんぅ!」
どくっと下腹がふるえる。一臣の口に、思いきり射精してしまっていた。放埓の余韻に、そこがぴくぴくと揺れている。
ごく、と一臣がそれを飲み下す音がした。
「あ・・・。」
一臣はぺろ、と唇を舐めると、口の端を上げて笑った。
「上手。」
「あ・・・。」
頭がぼーっとして、うまく言葉を紡げない。なんと言いたいのか。とにかく、これでもう一臣からキスをしてくることはない。一臣なりの配慮なのか。いつも、口でしたあとは、求めないかぎり、してこなかった。
パチン、とローションのキャップが明けられる音がする。この音を聞くだけで、秘所は熱くうずきだすのだ。早くほしい。
一臣も入れたいと言っていた。今日も結局最後まですることになるのだろう。指を含まされ、中をかき混ぜられながら思う。一臣は少し、自身の体力を過信しすぎなんじゃないかと。
「ん・・・あぁ。」
気持ちいい。指が感じるところを軽く圧迫しては、はなすのを繰り返している。それだけで、一度達したペニスもまた元気を取り戻していた。
「そろそろいい?」
とろけきった秘所に、三本指を咥えさせて、一臣が問う。こく、と頷くと、指はずるりと抜け出て行った。一臣が入ってくる。この瞬間が一番好きだった。開かれてゆく感覚。圧迫感。異物感。全てが快楽だった。一臣は、ゆっくりと身を沈めると、そろそろと腰を使いだした。ゆっくりゆっくり。時々動くのをやめてこちらを伺ってくる。
「痛くない?」
「うん。・・・痛くしてもいいよ。」
いいよと言うと、一臣は少し思案気に首をかしげたが、今日はこのまま、とことさら感じるところで動きを止め、そこに緩やかな律動を与えた。じんじんと腰にわだかまる射精感。
もう一押しで、達してしまう・・・そんな感覚が持続する。
一臣にしがみついて堪えていると、もっと我慢できる?と問うてきた。フルフルとかぶりをふる。これ以上はもう・・・。
「すばるの中痙攣してる。気持ちいいね・・・。」
一臣は、中がそういう状態の時、どれほど気持ちいいか身をもって知っているのだろう。充に抱かれて。
「好きなタイミングで出していいよ。我慢しないで?」
一臣はそう言うと、少し強くそこを擦り上げた。
「あっ!あ・・・一臣さんまだ?い、一緒がいい・・・。」
必死で、さらわれそうな快感の波に耐える。一臣は、いいよ、と囁くと、ずん、と突き上げてきた。奥にあたるそこが気持ちいい。何度目かの突き上げに、とうとう我慢できなくなり、一臣の腹を濡らした。独特の、栗の花のようなにおいがする。
一臣は、ゴムを手早く処理すると。枕にかけてあったタオルで腹を拭った。そのまま、タオルを床に放ると、隣にぱたりと横になった。
「すばる、今日は頑張ったね。」
えらいえらいと髪を梳かれる。恥ずかしさと嬉しさで、思わず微笑んでいた。
「三日に一遍くらいでいいから、できるようになるといいんだけどな。体に悪いよ。」
「そうなの?一臣さんとする以外は、したくならないんだけど・・・。」
「嬉しいけどね。年頃だもの。肌のコンディションも変わってくるよ?」
新陳代謝がよくなる。と一臣がうそぶく。
「一臣さん、今日はシャワー浴びられそう。」
ゆっくりとしたセックスだったせいか、余力が残っていた。
「そう?じゃぁ入ってこようか。」
一臣は、事後のシャワーもともにするつもりらしかった。
手を引かれて階下に降りる。熱いシャワーを浴びて、それから、冷たい水を飲んで・・・あとはゆっくり一臣の隣で眠ろう。
思惑とは裏腹に、いつもの金曜の夜を過ごしてしまっていた。
「おはよう。これだけ空いてたら心配ないね。」
思っていたことを言い当てられて、苦笑する。
「そうですね。あの人も、この時間にはいないだろうし。」
諏訪がうん、と頷く。
「・・・先生今日もお弁当ですか?急がせてしまってすみません。」
一本早い電車にしたために、早起きさせただろうと謝った。
「作ってくれるのは奥さんだから。」
「えっ?」
半分予想してした答えだったとはいえ、やはり驚いた。
「先生指輪してないから、男専門なんだと思ってました。」
ちゃんと妻帯者だったなんて。
「お子さんもいるんですか?」
「いるよ。もう中学生だから、あんまり可愛げないけど。指輪は汚したくないから、学校では付けないんだ」
けっこう大きい子がいるんだ・・・。
「え?でもなんでじゃぁ僕なんかに声かけたんですか?」
「なんか、なんて言わないで。それは本当に、この前も言ったけど、共感できそうって思ったからだよ。見た目も好みのタイプだったしね。」
諏訪はさわやかに笑った。
「まぁ、後何日か付き合ってよ。それで満足のいく作品に仕上げてあげるから。仕上がったら、複製してあげるよ。」
ドキドキした。やはり、諏訪の目に、自分がどんな風に映っているのか興味があった。
「あの・・・怖くてあの下着付けてこられなかったから、あとで着替えますね。」
「あぁうん。その方がいいね。私も、あんなことになるなんて思わなくて。ごめんね。」
どうやら諏訪も納得してくれたようだった。ホッとして、乗り換えの駅までをお互い無言で過ごす。電車を乗り換えると、諏訪がまた口を開いた。
「ヌードモデルなんて頼んで、彼氏さん怒らなかった?」
「昨日少し拗ねてたっぽいですけど。描いてもらうこと自体には賛成みたいでした。でも、先生が僕に内緒で付き合ってって言ったことまでは、さすがに話してません。」
「あれは・・・なかったことにしていいよ。悩ませてごめんね。」
諏訪が、何度目かのごめんねを口にした時、電車は目的の駅に到着した。
結婚しているということは、不倫の申し出だったのかと、今更ながらに驚く。そういうタイプには見えないからだ。諏訪の口から、なかったことにしていいと聞き、ほっとしていた。
一臣には言えなかったからだ。これで、言わなくてもいいことになった。
ずるい・・・だろうか?
でも、一臣だって、バレンタインにはそれなりに贈り物をもらって帰ってきたのだ。気にしている女性社員はいるというわけで。もちろん、自分が贈ったチョコレートを最初に食べてくれ、残りは山分けにしたわけだけれども。
あの時も、もやもやしたな。
手作り以外は、食べようよという一臣。食べ物に罪はないからと。ただし、潔癖なので、手作りの品にはごめんなさいをした。
「早乙女君?」
呼ばれてハッとする。
「どうしたの?」
「あ・・・その・・・。」
一臣のことを考えていたが、対外的に何と呼べばいいかわからなかった。言葉を濁すと、諏訪は察したようで、彼氏さんのこと?と問うてきた。
「先生に、付き合ってって言われたこと、言わなくてよかったなって。・・・もめたくないし。」
「なかったことにしたんだから、もう忘れていいよ。君たちはうまくやってるみたいだから、水を差したら悪いじゃない。」
ケンカしてるカップルがいると、絵を見ればわかる。諏訪は言った。
「君の絵は荒れてない。時々悩んでいるような感じの時もあるけど、いつも綺麗にまとまってる。私は調和の取れた絵が好きだよ。」
「・・・僕もです。」
バランスのいい、丸く収まった絵が好きだった。癖がないと言えば聞こえはいいが、突出していいところもない。あまり評価にはつながらないと考えていた。没個性だと思っている。
「個性が生かされてないって、他の先生には言われます。」
「それは見る目がないなぁ。君の個性は、誰にでも優しく映る絵が描けるところだよ。」
素直で優しいところがよく出てる、と諏訪は言った。
話しながら、諏訪の部屋についた。諏訪が、明かりのスイッチとエアコンを入れ、暗幕を閉める。
「少し涼しくなったら始めよう。」
今日は時間にゆとりがあった。弁当と飲み物を冷蔵庫に入れさせてもらい、部屋の気温が下がるのを待つ。大型のエアコンは、狭い諏訪の部屋をすぐに快適な温度にした。まだ始める気がないのか、諏訪はコーヒーを入れ始めた。カップは二つ。どうやら、自分の分もあるらしい。
「仕事始めに、これを飲むのが習慣になっていてね。スイッチが切り替わるというか。・・・君にもそういうのない?」
言われて考える。さぁ描くぞという気持ちになるスイッチ。「僕は鉛筆を削っているときに、スイッチ、入ります。あえて、カッターで削ったりして、その間に気持ちが静まるっていうか。」
「あぁ。そういうのもいいね。わかる気がする。」
わかってくれるんだ・・・。
共感を示してくれる諏訪に、好意がないと言えば嘘になる。
一臣も、自分の話は途中で遮ることなく聞いてくれるが、絵のことになると、そこはやっぱり感性の問題なので・・・。
父はよく、話の腰を、あぁいい!もういい!と折るタイプで、せっかく会話のチャンスを得ても、不完全燃焼で。
一臣は聞き上手。けれど、諏訪とは話していて楽しかった。
浮気・・・しているつもりはないけれど、少し後ろめたい。
諏訪はコーヒーを半分ほど飲むと、さぁはじめようか、と声を上げた。
「あ、じゃあ着替えてきます。」
「どこで?」
「・・・トイレ。」
諏訪は、なら私が外に出ているから、その間に着替えて、と廊下に出て行ってしまった。慌てて、バッグから紐のパンツを取り出し履き替え、シーツをくるくると巻き付ける。ほどなくして、諏訪が戻ってきた。Tシャツも脱ぐ。椅子に座ると、昨日と同じように、諏訪が襞を整えた。出しっぱなしだったイーゼルに、スケッチブック。今日もデッサンのようだ。
ふと床に落ちた青い絵の具が気になって、目を伏せる。すると、諏訪は、いいね、そのままで、と鉛筆を滑らせ始めた。
紙と鉛筆の摩擦の音が心地いい。耳をそばだてて聞いていると、諏訪はいい顔するね、と呟いた。
そしてまた、時間はどんどん過ぎていった。
「友成、旅行行かない?」
一時ごろ、作業部屋にやってきた友成に、持ち掛けてみる。
浜松の件だ。
友成は、ぽかんと口を開けたが、すぐにどこに?と聞いてきた。興味があるようだった。
「一臣さんが、学会で浜松に行くんだけど、友成と観光でもしてきたらって言うから。」
「一臣さんが一緒なの?」
友成が不思議そうな顔をする。それはそうだろう。
「一緒なのは、行と帰りの新幹線だけ。あとは自由行動なんだ。ウナギ、食べたくない?」
「ウナギかー。・・・餃子も食べてみたい。」
浜松は餃子も有名だ。
「いいね。うち昨日餃子だったけど、有名なところのはやっぱりそれなりに美味しいんだろうね。」
食べ盛りの男子が二人。色気より食い気だ。
「調べてあるの?」
「まだこれから。あと砂丘があるらしくて、見てみたいなって。」
友成は、そうなんだーと言いつつ、どうやら乗り気だ。
「新幹線代どうしよう?バイトしてる暇ないから、親に頼むしかないかな。夏休みだし、混んでるよね。」
「そうだね・・・。」
混んでいる新幹線を想像して、頭痛が起きそうだとげんなりする。でも、ついていきたい理由は、他にある。一臣は、会いたくないと言っていたが、充に会ってみたいのだ。会える確率は低かったけれど。
どんな人なんだろう?今は幸せなのかな・・・。
充にとっても大事な人だろう一臣を、奪ってしまたのではないかという気がしてならない。取り返しに来たりはしないだろうけれど・・・。
大人だし。妻帯者だし。子持ちだし。
でも、一臣が子供と、両親を失った時、お酒の付き合いがあったと言っていた。一臣にとっても、その時は慰めだったのだ。
今は?
僕は一臣の支えになってるだろうか・・・?
「すばる?」
「えっ?」
「・・・最近考え事多くない?」
友成が心配そうな顔をしている。友成になら話しても大丈夫だろうか。口は堅い。信頼もしている。
「あのね・・・。」
一臣が、かつてのパートナー二人に手紙を送ったこと。それぞれの返事のことを、かいつまんで話した。友成は黙って聞いていたが、話し終えると首を傾げた。
「それ、悩む必要ある?・・・佐伯さんは、すばるのことが一番大事って、言ってくれたってことでしょう?」
「うん。」
「気持ちはわかるけど、元彼さん?にすばるが会うのはお勧めしないな。会ってなんて言うの?もう手紙書かないでくださいとでも言うつもり?」
言われて、もやっとする。そうではない・・・と思う。手紙や、年二回の贈り物は、大人の付き合いだと思うし。それくらい、許せなくて、一臣の彼氏でなんていられないと思うし。
けれど・・・。
「ウナギは食べたいけど、そういう理由ならどこか他のところ行こうよ?遠出しなくても美術館巡りとかさぁ。都内なら物産展多いし、地方の食べモノ食べたいなら、駅地下でも、デパ地下でもいいじゃん。要は、日曜日一人でもやもやしながら留守番するのが嫌なんでしょ?」
言い当てられて、ドキリとした。
「そう・・・だね。そうかも。」
「なら、オレが暇つぶし付き合ってやるよ。も~すばるはさぁ、もうちょっと人に頼りなよね。オレのことなんか、気を使うことないんだからさ。」
「・・・うん?そうかなぁ。」
友成はそういうけれど。まだ知り合ってそんなに経っていない。信頼はしてるけど、気を使わずに、暇つぶしに付き合えとは、言い出せなかった。
「じゃぁ。日曜は都内でプチ旅行しよ?」
「うん。ありがとう。」
友成は、満足そうに笑った。
金曜は、諏訪のモデルのバイトはしない約束だったので、朝から友成と宿題をした。
そういえば、バイト代の話をしないままだったなと思い出したが、楽しませてもらっているし、まだ二日目だしと後回しにするとことにした。お金の話は、あまりしたくない。諏訪との時間に金額が付くのが嫌だった。
それは、去年の夏、一臣と会った時の感覚に似ていた。
『初めて』を買ってもらった時のことだ。あの時は、気持ちの入っていない、言葉だけの「愛している」だったけれど、それに値が付くのが嫌だったのを思い出していた。『初めて』の金額は、当時まだ高校生だった自分が手にするにはかなり大きい額だった。その証拠に、まだその封筒にはかなりのお金が残っている。一臣が使わせてくれないのだ。必要なものは、大家である自分が払うのが当然だという。それに甘え続けていたら、いつか自分は一臣の負担になりそうで怖い。そういえば、メガネ代も払わせてくれなかった。当然、食費も一か月単位で預からせてもらっている。家計簿をつけていたが、一臣はそれすらも、信用してるから、と見てくれない。それで本当にいいのかはなはだ疑問だ。
今週の土曜は、先週連休初日にバイトに出たこともあって、一臣の仕事は休みだった。日曜日の遠出を思えば、良かったと思う。一臣は、時には夜勤明けで日曜そのまま出かけていくこともあったからだ。そんなのは稀だったが。そういう日は、帰ってから早々に食事と風呂を済ませ、早い時間に寝てしまう。でないと月曜の仕事に差し支えるから。過密スケジュールを訴えても、現場の医者はもっと大変と、聞く耳持たない。睡眠時間がとれるだけ、幸せなんだよ、と笑うのだ。
夜には帰ってきて、一緒にご飯食べてもらえるから、淋しくはないけれど。
やっぱり体が心配だなぁ・・・。
今日はおねだりしないでおこうかな。とは、週に一回のセックスだ。快楽が欲しいわけではない。繋がると安心するから。
もちろん、一臣の愛情とテクニックに翻弄されて、気持ちいい思いをするのも、嫌いではなかったが。一緒に眠るだけでも、十分幸福感と充足感は得られた。一臣とは、丁度十歳年が離れている。まだまだ十分若い。枯れてないと豪語する程度に、一臣は一度盛ると容赦がない。しかも、事後もケロッとしていて、本当に疲れたそぶりを見せないのだ。自分はと言えば、いつもぐったり、シャワーも浴びずに眠ってしまうのに・・・。
一臣のことを考え出すと、キリがなかった。
今日の夕食のメニューは生姜焼き。相変わらず、肉が食べたいとリクエストが入るからだ。社食でも、メイン料理は肉と魚を選べるらしいのだが、絶対肉を食べているに違いない。
そうこうしているうちに、七時を回った。金曜は早めに帰ってくる彼だ。今日はまだメールもないから、定時に上がれているだろう。気をつけて帰ってきてほしい。金曜は、外食の約束だったが、今日はなんとなく家で食べることにした。
不意に、スマホが鳴った。電話の着信音だった。実家からだ。自宅からの電話に、母だろうか、父だろうかと、手が迷う。数秒おいて、通話にした。
『もしもし?すばるか?』
父だ。
「うん。どうしたの?」
電話してくるなんて珍しい。
『どうしたのって、お前、お盆にも帰省しないで。補講でもあるのか?』
父は、私立の高校の教諭をしている。
「そうじゃないけど、友達と学校で宿題してた。お盆・・・そうだね。ごめんなさい。」
お盆は八月のイメージが強いが、早乙女家はずっと七月にやるのが習わしだった。元気にしてるならいいが、と父は穏やかに言った。以前のような、キツイ話し方ではない。
『明のお腹も目立ってきたし、長男のお前がしっかりしてくれないとな。墓参り、少ししんどそうだった。』
「忠則さんいるでしょう?」
『婿は、また話が別だ。お前ほどは可愛くないよ。比べて見てよくわかった。今まですまなかったな。』
何をどう比べたのか、父はそう思ったらしい。長男である自分の存在を認めてくれたのだった。
「姉さん順調?」
『あぁ。つわりも終わったとかで、あれが食べたいこれが食べたいと言うから、用意するのが大変だ。まだ定かじゃないが、お腹の形からして男の子かも知れないな。』
「そんなの、わかっちゃうの?」
『だいだいな。昔から言われてる。』
お前の時もそうだった。と父は懐かしそうに言った。
「でも、女の子が欲しかったんでしょう?」
『それは、母さんが・・・いや、まぁそうだな。でも今は、無事に生まれてきさえくれればいいと思えてるよ。』
「母さんは?」
『お前に着せられなかった分、女の子の服を物色してるよ。』
やっぱり、と思う。母は今でも女の子が欲しいのだ。父の方は、どちらでもよさそうでホッとした。
「ごめん。八月に入ったら、一度顔を出すよ。宿題が多くて、七月中は学校に缶詰めかな。」
諏訪とのバイトの話はあえてしなかった。中学も高校も、学校祭には来なかった人だ。今度もきっとそうだろう。ならば、諏訪の描いた自分の絵を見ることもないに違いない。余計なことは言わないに越したことはない。ところが、父親は意外なことを言い出した。
『学校祭10月だったか?私の学校と被らなければ、行ってみたいと思ってる。お前の描いたものを見たい。』
「えっと・・・うん。10月。見に来てくれるの?」
『都合が会えばだが。学費も払ってることだしな。』
そこでお金の話かと思いつつも、驚いてしまう。
「うん。ありがとう。・・・ほんとに無理しなくていいから。」
そう言うと、来てほしくないのか?と声音がピンと張った。
まずい、怒らせたかな?
「そうじゃないけど。うん。頑張って描くよ。ありがとう。」
言いつくろうと、気をよくしたのか、じゃぁ頑張れよと通話は切れた。
そうか。父は、生まれてくる孫のこと、それなりに楽しみにしてるんだな。自分のことも、今更ながら気にかけてくれてる。つかず離れずのこのくらいの距離感がちょうどいいのかもしれない。
そんなことを考えていると、玄関の鍵が開く音がした。
夕食を食べながら、先ほどの電話の話をしていた。一臣は、生姜焼きにかぶりつきながら聞いている。よほどお腹が空いていたのだろう。
「で、今年はお盆に帰るの忘れちゃって、ご先祖様には悪いことしちゃった。」
「すばるのうちは、七月にするんだね。うちは八月だな。兄の家に仏壇があるから、さすがに顔出さないとまずいかな。」
うちの会社お盆休みあるんだよね。とため息する。
「お兄さんの家遠いの?」
「・・・山梨。」
桃が美味しいところだ。そういえば、一臣の兄の話はあまり聞いたことがない。年賀状のやり取りくらいだ。
「仲悪いの?」
「悪くは・・・うーん。お嫁さんのお母さんと同居なんだよね。ちょっと、気まずくて。あとは、男の子が二人いて、賑やかなのはいいんだけど、お小遣い要求されるしね。」
それだけ聞いて、めんどくさそうだと思ってしまった。
「仏壇は、兄の家だけど、お墓自体は都内の霊園にあるから、お墓参りだけで済ませられないか連絡してみるよ。お墓掃除しておいたら、そんなに文句は言われないと思う。」
すばるも一緒に行こうね、と一臣が笑った。
「え?いいの?」
「両親にも紹介しておきたいから。」
ドキと胸が高鳴った。この間のプロポーズといい、一臣は本当に自分のことを大切に、特別にしてくれている。
「うん。ありがとう。」
照れくさくて、苦笑すると、一臣はほかにどんな話したの?と聞いてきた。
「あーやっぱりお母さんは女の子が欲しいみたい。でも、お父さんは、お腹の形で男の子だろうって言ってた。そんなの本当にわかるものなの?」
「あぁ。横に大きくなると女の子で、前に突き出してると男の子、って言われてるね。生まれてみないと分からないけど。」
エコーで大体わかるけどね、と一臣はまた食べながら答えた。
「エコーで、どれくらいわかるの?」
「胎児の向きにもよるけど、九割わかるかな。」
そんなに?
「今は3Ⅾカラーの写真が撮れたりして、機械の進歩はすごいよ。」
「そうなんだ・・・。」
「で?すばるはどっちだったらいいとかあるの?」
言われて首をかしげる。自分は特に・・・無事に生まれてさえくれれば・・・。そう思って、そう思えるようになっていた自分に驚いた。
「僕は、どっちでも。無事ならそれで。」
「・・・すばるは偉いね。ちゃんとそう思えるようになったね。」
それが正解。と一臣が褒めてくれる。
「あとは忠則さんかな。跡取りはやっぱり男の子欲しいよね。」
「家督は、お姉さんが継ぐの?」
「だって、僕赤ちゃん生めないもん。」
一臣は、それはそうだけど、と神妙な顔をした。
「すばるが長男なんだから、いずれは相続の問題とか出てくるでしょう?」
「僕は多分、老後のお母さんの面倒とか見てやれないから、姉さんがお世話してくれるなら遺産は放棄しようと思ってる。」
一臣は黙ってうなずいた。
「そうだね。それも一つの選択肢だね。」
「うん。」
まだ先の話だけれど、このまま一臣と暮らしていくのなら、必要な話だった。実家とはできるだけ、距離を置いておきたいのだ。かかわると、体調を崩すのが目に見えているから。
一臣は、生姜焼きで、ご飯を二膳食べて、キュウリスティックをかじり始めた。他に、にんじんと、セロリも用意してみたが、セロリに手を付けないことは知っていた。スティックの先に、マヨネーズを少しつけてはポリポリしてる。その様子がなんとも微笑ましくて笑ってしまった。
「何?」
「一臣さんウサギみたい。」
「すばるだってハムスターみたいになるでしょ?」
ハムスター??
「そんなに膨らませてないよ!」
一臣がいるだけで、父から電話があった日も、笑っていられる。こんな日常がとても大切だった。
金曜の夜は、特別。でも今日は、日曜に遠出する一臣のために、体力温存しようかと思っている。とりあえず、風呂は一緒に入るとして、一緒に寝るとして、セックスは、一臣に任せることにした。すると一臣はとんでもないことを言い出した。
「ね?すばる・・・一人でするの、やってみようか?」
「えっ?一人でって、え?それってここで?」
ここで、とは、一臣の寝室のベッドの上だ。
「そう。すばる一人えっちしないでしょ?見たいなー。」
う。
一臣は、一人でするのを見せないかぎり、寝る気もないようで。どうしよう困った。ペニスは、自分にとってまだ好きになれない場所だ。一時は切り落としたいとまで思ったところだ。もちろん、そこから生まれる快感も、一臣と出会うまでは嫌いだった。一臣に慣らされて、一臣がしてくれるなら、ようやく受け入れることができ始めたところなのに。それを自分でするのはかなり抵抗があった。
「しなきゃダメ?」
「すばるくらいの年頃なら、好きな子は毎日だってしてるよ?」
「好きな子はでしょ?僕は違うから・・・。」
暗に嫌だと抵抗を試みる。けれど、一臣は静かな笑みを崩さずに、すり、と膝がしらを撫でた。お互いバスローブを羽織っただけだ。下着はつけていない。ぺらりと捲られると、そこがあらわになった。
「ん。半立ちだけど、俺の言葉に反応してる。嬉しいよ、すばる。」
ちょん、と先端に指先で触れて、すぐに離れた。
「見たいな?というか、一人でできるようになってほしいな。すばるにはもっと自分の体好きになってほしいから。」
そう言われても、だ。
「・・・・・・。」
無言の抵抗をしてみる。すると、一臣が譲歩案を出してきた。
「一人で立たせられたら、舐めてあげようか。」
ぴくん、と中心が揺れた。舐めてあげようか、にあからさまに反応してしまい、恥ずかしさで顔から火が出そうだった。ポッと全身が熱くなる。それだけで、中心に熱が集まり始めた。ゆるく芯を持ってくる。
「いいね。このまま言葉責めも面白そうだけど・・・。ほら、手を添えてみて?」
プルプルと頭を振る。しかし、一臣は強引に右手をそれに導いた。
「握って・・・。そう。軽くでいいから上下にしごいて・・・亀頭を撫でて?あぁほら濡れてきてる。ヌルヌル、気持ちいいよ。手のひらで擦ってみて?」
一臣の要求はどんどんエスカレートしてくる。それに体が反応して、操られているかのように、その通りに右手が動く。
キモチイイ・・・。
どうしよう気持ちいい。弄っているのは自分なのに、一臣にされているのと同じくらいイイ。
ペニスは完全にかたく立ち上がった。
「よし、上出来。舐めてあげようね。」
一臣は褒めてくれ、頭を軽く撫でると、立てた膝を割り開き、そこへ顔をうずめた。ぺろ、と熱い舌が先端に這わされる。
ぴくっ!と手を添えられていないそこが揺れ、一臣の頬にあたった。
「元気だなぁ。」
クスクス笑って、先端に舌を当てては反応を楽しんでいる。
じらされて、腰がうずき始める。もじもじと腰を振っていると、一臣はこっち?と尋ねてきた。コクコクと頷く。秘所に指が欲しい。本当は、一臣の熱いのが欲しいけれど。でも・・・
「いいね。俺も入れたい。先にイかせてあげようね。苦しそうだ。」
一臣は、かぷっと先端を口に含んだ。そのまま、頭を上下する。舌は敏感な裏側に這わされ、指先で茎をしごかれる。そこだけに与えられる急激な刺激に、すぐに限界が訪れた。
「あ・はぁ・・・あ・あ・でる。もう出る・・・一臣さん!一臣さん出ちゃうから放して!だめ・・・だめだからぁ・・・あっあっ・・・んんぅ!」
どくっと下腹がふるえる。一臣の口に、思いきり射精してしまっていた。放埓の余韻に、そこがぴくぴくと揺れている。
ごく、と一臣がそれを飲み下す音がした。
「あ・・・。」
一臣はぺろ、と唇を舐めると、口の端を上げて笑った。
「上手。」
「あ・・・。」
頭がぼーっとして、うまく言葉を紡げない。なんと言いたいのか。とにかく、これでもう一臣からキスをしてくることはない。一臣なりの配慮なのか。いつも、口でしたあとは、求めないかぎり、してこなかった。
パチン、とローションのキャップが明けられる音がする。この音を聞くだけで、秘所は熱くうずきだすのだ。早くほしい。
一臣も入れたいと言っていた。今日も結局最後まですることになるのだろう。指を含まされ、中をかき混ぜられながら思う。一臣は少し、自身の体力を過信しすぎなんじゃないかと。
「ん・・・あぁ。」
気持ちいい。指が感じるところを軽く圧迫しては、はなすのを繰り返している。それだけで、一度達したペニスもまた元気を取り戻していた。
「そろそろいい?」
とろけきった秘所に、三本指を咥えさせて、一臣が問う。こく、と頷くと、指はずるりと抜け出て行った。一臣が入ってくる。この瞬間が一番好きだった。開かれてゆく感覚。圧迫感。異物感。全てが快楽だった。一臣は、ゆっくりと身を沈めると、そろそろと腰を使いだした。ゆっくりゆっくり。時々動くのをやめてこちらを伺ってくる。
「痛くない?」
「うん。・・・痛くしてもいいよ。」
いいよと言うと、一臣は少し思案気に首をかしげたが、今日はこのまま、とことさら感じるところで動きを止め、そこに緩やかな律動を与えた。じんじんと腰にわだかまる射精感。
もう一押しで、達してしまう・・・そんな感覚が持続する。
一臣にしがみついて堪えていると、もっと我慢できる?と問うてきた。フルフルとかぶりをふる。これ以上はもう・・・。
「すばるの中痙攣してる。気持ちいいね・・・。」
一臣は、中がそういう状態の時、どれほど気持ちいいか身をもって知っているのだろう。充に抱かれて。
「好きなタイミングで出していいよ。我慢しないで?」
一臣はそう言うと、少し強くそこを擦り上げた。
「あっ!あ・・・一臣さんまだ?い、一緒がいい・・・。」
必死で、さらわれそうな快感の波に耐える。一臣は、いいよ、と囁くと、ずん、と突き上げてきた。奥にあたるそこが気持ちいい。何度目かの突き上げに、とうとう我慢できなくなり、一臣の腹を濡らした。独特の、栗の花のようなにおいがする。
一臣は、ゴムを手早く処理すると。枕にかけてあったタオルで腹を拭った。そのまま、タオルを床に放ると、隣にぱたりと横になった。
「すばる、今日は頑張ったね。」
えらいえらいと髪を梳かれる。恥ずかしさと嬉しさで、思わず微笑んでいた。
「三日に一遍くらいでいいから、できるようになるといいんだけどな。体に悪いよ。」
「そうなの?一臣さんとする以外は、したくならないんだけど・・・。」
「嬉しいけどね。年頃だもの。肌のコンディションも変わってくるよ?」
新陳代謝がよくなる。と一臣がうそぶく。
「一臣さん、今日はシャワー浴びられそう。」
ゆっくりとしたセックスだったせいか、余力が残っていた。
「そう?じゃぁ入ってこようか。」
一臣は、事後のシャワーもともにするつもりらしかった。
手を引かれて階下に降りる。熱いシャワーを浴びて、それから、冷たい水を飲んで・・・あとはゆっくり一臣の隣で眠ろう。
思惑とは裏腹に、いつもの金曜の夜を過ごしてしまっていた。
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