期限付きの猫

結城 鈴

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 帰ると、アンが玄関先で待っていて、アーンと鳴いた。ご飯が欲しいらしい。脛にゴツンゴツンと額を当てられて、おねだりされる。
「わかったって。今あげるよ。」
今日は特別、と缶詰を開けてやる。人間ばっかりいいものを食べた罪滅ぼしだ。そうしている間に、孝利が風呂の支度をしていた。
「孝利さん、やりますよ!」
声をかけるが、できるよ、と返された。まぁ、一人暮らしの時はしていたのだろうから、できるのは分かっていたが。
「それより、アレ、しておいで。」
うぅ。せっかく食べたものが・・・。
人体の構造上、さっき食べたものがすぐ出てくるわけではないのは分かっていたが、気持ち的にはがっかりだった。
とりあえず、言われた通りにトイレに籠った。
お腹が痛くなるのには、慣れそうもなかった。
トイレから出てくるころには、お風呂の準備もできていて、バスローブもタオルも、ランドリールームから移動してあった。脱衣所を覗くと、孝利がコンタクトを外している。
あれ?ってことはもしかして、えっちなことするときは、あんまり見えてないのかな。
「孝利さん、えっちする時、顔とか見えてないの?」
「暗くしてるしね。ぼんやりわかる程度だよ。でも、君が感じてるかどうかは声で分かるから。だから、我慢しないで聞かせてね。」
かぁっと耳が熱くなる。気がつかなかった自分も駄目だが、それならそれで、もっと、痛いとか・・・気持ちいいとか・・・言ってあげなきゃダメだったじゃん。気を付けよう。
お風呂で、軽く背中を流し合って、温まる。今日は、柑橘系の入浴剤が入っていた。
「柚子とかミカンって、冬って感じですよねー。」
「うん。あったまるしね。」
のんきなことを言っているが、この後することを思うとドキドキが止まらなかった。
「・・・あの・・・。」
「なに?」
痛かったらやめてくれる?と聞こうとして、できなかった。
求めてもらえるのが嬉しかったから。
こういうのって、女の子っぽい感覚なんだろうか。「したい。」と言われることが、嬉しいなんて。だって、そこには好意があったり、魅力を感じたりしてくれているわけで。普段、タマ、なんて猫扱いでも、する時はさすがに、人扱い・・・なわけで。別に猫扱いが嫌なわけではなかったし、今の生活に不満もなかったが。
「したら、僕のこと、もっと大事にしてくれますか?」
「今よりもっと?」
頷く。
「どういう風に?」
「どういうって、よくわからないですけど・・・。」
あれ?どうされたいんだろう。
「俺はね、大事にし過ぎちゃうタイプだから、今くらいがちょうどいいと思うよ?束縛とか、嫌でしょう?」
束縛?
「毎日一緒に寝て起きてほしいから、君の生活リズム、ガタガタにしちゃうかもしれない。夜型にしてもらって、それなのに、仕事に出ちゃったりするんだよ。
きっと淋しい思いをさせる。」
俺がいない間は、なるべく寝ていてほしいの。と、孝利は言った。
「そう・・・ですよね。今も、孝利さんが帰ってきてご飯食べて寝てる間、淋しいですもんね。」
「でしょう?君が気を使って、なるべく外出したりしてくれてるのも知ってるし、持病を気遣って部屋をピカピカにしてくれてるのも知ってるよ。お金は断られちゃったし、他に何ができるかな。」
そう言われると、あまり孝利に求めるものは、今以上にはない気がする。つまり、今はそうとう大事にされているってことで。
「今のままでいいです。僕、大事にされてました。」
「うん。俺もね。お互いのこと、もっとちゃんと知りたいから、セックスもしたいんだしね。」
そうか。
酷いことはされなそう。きっと優しくしてくれる。
そう思うと、体の力が抜けた。
「少しは緊張解けたのかな。」
孝利が、顔を寄せて伺ってくる。
「はい。」
頷くと、そのままキスを求められた。ちゅちゅ、と軽く唇を合わせて、離れる。
「出ようか。」
ざば、と出て行く孝利を追った。

 これって、猫の交尾のポーズ・・・。
大きなクッションを抱えさせられて、うつぶせに腰を高く上げている。その、丸見えのお尻に、孝利の指が二本、潜っていた。体は楽だし、気持ちもいいけど、恥ずかしいことと言ったらない。孝利の方が見られずに、顔はクッションにうずめていた。息苦しくて、時々息継ぎする。
「ふぁ・・・ぁ・・・あんっ。」
高い声が上がってしまう。よく見えていない孝利に、快感を得ていることを伝えるため、と頭では思っているが、現実は、そこを押されると自然に声が漏れてしまっていた。
それくらい、気持ちいい。
「んぁ・・・はぁん・・・つっ・・・うぅ。」
指を増やそうとしているのか、時々、薬指を隙間にねじ込んでくる。不快な痛みがあるが、徐々に慣れつつあった。
「あぁ・・・いた・・・孝利さん、指、痛い。」
「三本目、入れたいんだけどな。慣らすの、おもちゃにする?」
「あ、やだ。」
あのおもちゃはもう、使われたくない。
「じゃぁ、もうちょっと我慢しようか。」
「うー・・・。」
我慢、あんまりしたくないんだけどな。中は気持ちいいし、ただ、入口を広げられるのが不快だ。
「もう・・・入れてみちゃ駄目?」
「痛いと思うよ?」
そんなに指嫌?と聞かれて、そうとも違うとも言えないでいると、二本の指がずるりと抜けた。
「してみようか。」
ゴクっと喉が鳴った。
怖くて見られなかったが、背後で孝利が、ゴムをつけて、ローションで濡らしている気配がした。ローションは,入口にも足され、熱く腫れぼったくなったそこを冷やした。ぷるりと身震いする。
「冷たいね。大丈夫。すぐそんなこと気にならなくなるよ。」
ひた、と孝利の切っ先があてがわれた。ぐぐっと入って来ようとするそれを、必死で受け入れる。ジンジンとそこが熱い。
「きついな・・・。」
言いながら、孝利は一度身を引いた。ほっと力が抜けたところに、強い圧力。
「あっ!」
ぐぷん。と体の中に音が響いた。先を飲み込んだのだ。
「あーっあぁぁぁっ!」
情けなくも悲鳴。痛くて身じろぎもできない。
「つぅ・・・く。」
孝利が呻くのが聞こえる。
「っは・・・あ。・・・痛い、ですか?」
「ものすごくきつい。・・・痛みは?」
「あ・・・熱い、です。中が痛い。ズキズキする・・・。」
焼けるように、ジクジクと痛むそこを、孝利がローションを足して潤した。
「もう少し入れたい・・・全部は無理でも。・・・我慢・・・してくれる?」
息遣いも荒く求めてくる孝利にコクコクと頷いて見せる。
今なら、痛くてもいいと思えた。
怖いけど。すごく怖いけど・・・。
「ゆっくり・・・来てください・・・っ。」
くぷくぷと、中に押し込まれてゆく、熱い塊。大きくて、受け止めきれるか不安になる。それでも、引き寄せるようにして掴まれた腰に、孝利の指先が食い込むのを、嬉しく感じていた。
入れたいんだ・・・中に・・・。
「あ・・・あぁ・・・はぁ・・・。」
息を吐き出しながら、入ってくるものをすべて感じようと、意識を集中する。やがて、孝利の太い先端が、そこにあたった。
「ふあっ!」
「痛い?」
きゅ、と締めてしまったのを自分ではっきり感じた。そして、そうすることで、より一層の、快感を得た。そう。快感だ。
「あ、そこ・・・気持ちいい。」
「えっ?あ・・・いいところ、当たるの?」
コクコクと頷いて、擦ってほしい衝動に駆られる。
「あ、あの、そこ・・・擦ってほしい。」
「こう?」
ぐり、と中で孝利が動いた。感じるそこを突き上げるようにされて、高い声が上がる。
「あぁ!・・・あっいい。気持ちいい。」
顔の見えていない孝利に、快感を伝えようと必死だった。気がつくと、譫言のように、気持ちいい、気持ちいい、と繰り返していた。孝利に伝わっているのか、そこを緩く擦ってくれる。僅かな律動がたまらない快感生み出していた。萎えたペニスに力が戻る。固くなったそこを、孝利が後ろから手を伸ばしてしごいた。
「あっ。・・・ふぁ!ダメ・・・そんないっぺんにしたら。」
「気持ちよすぎちゃう?」
コクコクと頷いて見せるが、孝利はお構いないしで。ゆるんだね、と呟くと、自身を奥まで突き入れた。
「あぁっ!」
ぐちゅ、と孝利の肌と、自分の肌が触れた。隙間なく繋がったそこを、孝利が揺すり上げる。
「あっダメ・・・深い・・・こわい・・・。」
「大丈夫・・・。」
はぁ、と吐息して、背中にのしかかってくる。後ろからぎゅっときつく抱きしめられて、幸せな気持ちになった。
「痛くないです?」
「きついけど、中は柔らかい。絡みついて・・・もってかれそう・・・。動いたら先にイッちゃうな。」
気持ちよさそうに中を味わっている様子に、嬉しさがこみあげてくる。
「嬉しい・・・。もっと良くなってほしい。」
「それは俺も。」
ゆっくりなら動いてもいい?と聞かれて、頷いた。ゆるゆると抜けていく感覚、ゆるゆると入ってくる感覚。交互に訪れるそれに、快感を得る。
「あぁ・・・イキそう。」
荒い息づかいの中で、孝利がそう呟いた。絶頂が近いのが、気配で分かる。
「僕も・・・前、触っていい?」
「好きにしていいよ。」
許しを得て、ペニスに触れる。濡れて糸を引くそれの先端を、指先で思うさま擦った。快感を妨げるものは何もない。嬉しくて嬉しくて、中を行き来する孝利に合わせて、腰を振った。
「あっ・・・健斗・・・けんと・・・イク・・・出すよ?」
「うん。僕も・・・。」
どちらともなく、うめき声が響き、孝利は体の中に。自分は手の中に、それぞれ精液を放った。ぴくぴくと中が震えている。
「すごい・・・搾り取られそう。」
「は・・・ぁ。気持ちいい・・・。」
ぽたぽたと、手から精液が、敷かれたタオルに落ちてゆく。
「抜くね。力抜いてて。」
そろ、と孝利が抜け出て行った。ぬるん、と抜け出ると、不思議な喪失感があった。
終わっちゃった・・・。
初めてのセックスは、たぶんうまくいったと思う。
初めは痛かったけれど、気持ちよかったし、孝利にも快感を与えられたと思う。
「うん。大丈夫。傷にはないってないみたい。」
「はー・・・よかった。」
「うん。上出来だったね。君が前立腺で快感を得られるタイプで良かった。」
「え?みんな気持ちいいんじゃないんですか?」
「そうでもないみたいだよ。おかげで泣かさずに済んだ。」
孝利はそう言うと満足そうに笑った。
健斗って、呼んでくれたな・・・。
思い出して、にやけてしまう。それを不審そうに孝利が見とがめた。
「なに?」
「名前呼ばれると、嬉しいもんですね。」
「あぁ・・・。」
孝利が恥ずかしそうに顔をそむけた。
「さすがにあの場で、タマはないでしょ。」
「そうですか?」
「そうです!」
孝利は、ふん、と怒ったふりで、ため息をついた。
「シャワー浴びようか。立てそう?」
「あ、楽な態勢だったので。・・・たぶん。」
「良かった。研究した甲斐があった。」
ふふ、と笑うと、孝利は、お風呂も入るよね?追い炊きして来よう。と寝室を出て行った。さすがに今日は甘えてもいいだろう。二人分のバスローブを抱えて、あとを追った。
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