夢で会ったインキュバスが忘れられないんだが

Sui

文字の大きさ
1 / 26
夢の中で

01

しおりを挟む

「……しまった。入る夢を間違えちまった」

 突然そう言われ、俺がいま夢を見ているということを自覚した。

 夢を見ている張本人──リト。冒険者であり強靱な体格に軽い無精髭があり、髪はざく切り状態でいかにもワイルドな風格である。娼館のオンナからの話では俺の顔は男前の方らしく、たとえ無精髭でもサマになってるのことだそうだ。
 数日間ずっと狙っていた高額報酬と引き換えに出来る魔物をようやく捕まえ、ギルドで報酬を受けた後はそこらへんのバーで一杯ひっかけて、宿にありつけてそのままベッドで寝た……はずだ。

 周りを見てみると、住むには狭いぐらいの広さにシングルベッドと洗面台があり、宿っぽい雰囲気はあった。ただ実際の宿かどうかは自信はない。

「いま俺は夢……見ているってことか?」

 俺の夢に入ってきたであろう人物にそう訊ねると、軽く頷かれた。
 その人は『美青年』という言葉がとても似合っている。造形美とはこの事かというほど美しい顔をしていて、上半身は黒ベストを着ていたが前は留めておらず胸板がむき出し、程よい筋肉がついている。下半身は身体の線が分かるほどピッタリなレザーパンツを履いていた。そして暗めのパープルで艶がありサラサラとした髪。

 こんな綺麗な人間を見たことあっただろうか──と見惚れていると、頭の両横から二つの角がサラサラの髪をかき分けて出てきて、臀部に魔物特有の尻尾がニュルンと生えてきた。
 なるほど、魔物ならうなずける。

「夢っていうことは、インキュバスか?」
「おや、よく知ってるね」

 髪色と同じ瞳の色が見えなくなるほど目を細められる。

「そう。私はインキュバス。本当だったらオンナの夢に入る予定だったんだけど、うっかり間違えてあなたの夢に入ってしまったんだ」
「そうか、ならすぐオンナの夢とやらに行ったらどうだ」

 インキュバスは眉を顰めて首を振る。その際にサラサラと流れる髪が美しかった。

「残念ながら、一旦入ったらセックスしないといけない決まりなんだ。んー、仕方ない。インキュバスの気持ちだったんだが、サキュバスに変えるか」
「……オンナに変身できるのか」
「オンナのほうがいいんだろう?」

 そう言って、オトコの体型だったのがだんだんとオンナのほうに変わっていく。
 キュッと引き締まっていた尻が丸みを帯び、胸も膨らみはじめる。触るとフワフワしておそらく肌触りがいいだろう。だが、何故か俺はだんだんと気持ちが冷めていった。
 目の前には確かに俺好みのオンナがいたが、どうにも気が乗らなかった。

「……待ってくれ。さっきのほうがいい」
「あれ? 今までオンナとヤってきたよね?」

 ……どうやらインキュバスとやらは夢に入った人のセックス事情を把握できるようだ。
 確かに俺は今までオンナを選んでセックスしてきたし、なんなら現在進行形だ。
 だが、今は最初のオトコの姿のほうに惹かれていた。そちらで堪能してみたいと思ったのだ。

 髭やムダ毛なんて縁がないといったツルツルな肌に、オンナには無いであろうしなやかな弾力のある身体を隅々と撫でてみたらきっと昂ぶってしょうがないだろう。そんなことを考えていることに自分でも驚いている。

「確かに今までオンナとヤってきたが、今は先程のオトコの姿でヤってみたい」

 きっぱりと答える俺に本気と捉えたのか、サキュバスからインキュバスに戻り、角と尻尾を隠して人間姿になっていく。
 だんだんと引き締まっていく身体に、下半身が昂ぶっていくのを感じる。

「……うん。こっちのほうがいい」
「あんた、変なやつだな。オンナとヤってきた人間達はサキュバス姿ですぐ堕ちるのに」

 そう言われても、俺はインキュバスのほうで堕ちたんだから仕方ない。
 そっと首まであるサラサラな髪を手で梳いてみる。指の間からスルスルと流れ落ちていく感触にゾクゾクする。
 光を透けてみるとパープルだったのがピンクになっていくことに気づき、もう一度見てみたくなり再び梳いていく。

「綺麗な髪だろ。自慢の髪だぜ」

 フフンとドヤ顔で唇がニュッと伸びる。

「そうだな。光に当てるとピンクになるのが良い」

 リトはインキュバスの髪を少しつまみ、自分の唇で感触を味わってみる。

「……触れても、いいよな?」
「あぁ。セックスしとかないと、あんた目覚めることはないからな」
「そうなのか。じゃあ遠慮なく」

 俺の側にあったベッドへ躊躇なくインキュバスを押し倒した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...