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ケンタのピュアさをなんとかしてほしい 〜ワタル〜

01

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 ケンタとの出会いは、5歳。
 隣の家に越してきた家族に、同じ歳の子どもがいたというベタな展開である。

 仕事を求めに遠くの人里から引っ越してきた3人家族で、引っ越しのご挨拶に来られた時に俺を見かけた時はとても喜んでいたと俺の親が言ってたな。
 というのも、引っ越す前のところは子どもがあまりいなかったそうで、居たとしても家から結構離れていて小さい子どもが一人で遊びに行ける距離ではなかったらしい。

 いつもひとりぼっちで遊んでいたケンタには、ワタルと一緒に遊べることがとても楽しく、毎日飽きなく遊びに来ていた。
 俺は俺で、同じ歳のかわいい弟が出来た感じでとても可愛がっていた。

 『かわいい弟』から『一人のオトコ』として好きになったのは、12歳の夏ごろだったか。
 いつもどおり俺の家に遊びにきて、もはや自分の部屋のように寛ぐケンタが、いつの間にか俺のベッドで寝ていた時だった。
 あのときはお互いまだ子どもで、無防備だった。

 うだるような暑さの日で、汗でべたべたのシャツを脱ぎ、上半身裸になって寝ていた。
 汗ばんでいる白い肌に、色づいている二つの小さな乳首。こめかみから伝う汗のしずくが首筋まで流れていくのを見つけた時、『舐めてみたい』と思った。
 初めて欲情を感じた日だった。



「あの時、舐めなかった自分を褒めてやりたいよ……」

 そして現在、その幼なじみと同居している。隣の部屋にはケンタがいる。
 朝っぱからの情事を記録に残すため、【ケンタ性欲スイッチノート】を書いていたのだが、初めてケンタに欲情した事を不意に思い出し、今では舐め放題であることでついニヤけてしまった。

「初めて舐めた時はたまんなかったよな」

 ちょっと乾いた唇を舐めながら、ケンタの肌感触を思い出して、少しばかり興奮してしまう。

 記録は初めて性処理を施した日から。といっても最初のほうはただの日記というか感想というか……こんなん誰でも見せられんし見せないけどな。
 まぁ、こんな誰が見ても変態でしかない事を続けていくうちに、性欲スイッチの間隔が大体分かってきたというのもあるから、やってみるもんだなぁ。

 しかし、今回のような朝っぱからは初めてのケースなので事細かく残さねばと真剣に書いてはいたが、さっきまでいつもより長く何度も自慰してしまったので、空気が心なしか澱んでいる気がする。

「あー……とりあえず空気入れ替えよ」

 窓を開け、深呼吸する。
 窓を開けるまで気付かなかったが、太陽はもう山に隠れようとしていた。

 隣の部屋から喘ぎ声が聞こえた時は、太陽が昇っていたころだったのに。

 まぁ、喘ぎ声が聞こえた時には、朝立ちのコレを使う時が来た…! って思ったのはここだけの話。
 ケンタからおっさんくさいとよく言われるけど、オトコってそういうもんだぜ?

 それに前から挑戦してみたかった『空イキさせてみる作戦』、実にエロかったなぁ。
 まさかあんなにキュウキュウ締めてくれるとはなぁ……おっといかんいかん、また勃ってしまう。

 正直言って、続けてヤりたい。イった後も余韻すら与えないほどヤってみたいんだが、ケンタの体質だと射精すると感度がまるっきり消えてしまい、直後でも性感帯に触れてみても全然感じることがないのだから不思議である。
 自分だけが興奮しっぱなしでつらい。だが、これ以上ケンタに負担かけるのは良くない…と、さっさと済ませるようにしている。

 だが、今回の空イキで少しは『続けてヤりたい』気持ちは伝わった…はずだ。
 
 性処理にセックスが含まれてからも、色々やらしいことをしていても、俺の恋心にぜんぜん気付かない超鈍感なケンタ。
 一応、恋心を隠してるつもりはないんだけど、どうやら『仕方なく付き合ってあげている』と思っているらしい。

 告白しようと一回は考えたことがあるのだが、今の関係性が壊れそうで、未だに出来ずにいる。
 せめて、ケンタが少しでも俺に惹かれてくれたら。

 12歳のときから一途だった俺には、ケンタが離れていくのがとても怖かった。
 だからこそ、体質に気付いたときは『絶対に掴まえよう。そして離してやるものか』という独占欲が出てきてしまったのだ。
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