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ハッキリしないのなんとかしてほしい 〜ケンタ〜
01
しおりを挟む空イキというのを初めて経験してから数日後——。
玄関から乱暴な開け方をしたと分かる音と共に、ワタルの声が聞こえてきた。
「ケンタ! もしかしたらその体質、呪いかもしれないぞ!」
護衛の仕事を済ませるなり、早く知らせたくて走って帰ってきたらしく、息をはずませながらキッチンのところにやってきた。
夕食の準備をしていた僕には、聞き捨てにならない発言内容に、食材を切っていた状態のままでワタルのところへ近づこうとしてしまい、あわてて包丁を置いた。
「とりあえずおかえり。呪いってどういうことだ?」
「ただいま! ま、まずは水を…!」
ちょうど側においてあったガラスコップを取り出し、水を注いで渡したらすぐ飲み干した。仕事終わったあとずっと走ってきたんだろうか。
「……はぁっ! ケンタ、その体質は呪いの疑いがある」
「うん、聞こえた。どういうことだ?」
「護衛先でな、本当は依頼内容を言っちゃいけないんだが、ここだけの話な。依頼者が、前触れなく食欲がなくなり、ずっと食べれない状況が続き狂気になって暴れるらしい。その時の被害が依頼者の配偶者まで及ばないように守ってほしいという依頼だったんだ」
「前触れなく? それって…」
「そうだ。ケンタの性欲スイッチもそうだろう?」
ワタルの話では、ある時身体にまとわりついてくるような違和感を感じたあと、その後前触れなく食欲がなくなり、目の前に大好物があっても食べる気が失せてしまうらしい。
領主貴族の人で、様々な料理を試したがどれも食べられず気が狂ってしまい、手を付けようがない…ということだそう。
「…その人、今も食べれないのか?」
「いや。気付いたら食欲が戻ってるそうだ。だが治ったと思ってもまた食欲が無くなるという繰り返しらしいんだが、たぶん戻った時はケンタと同じように『身体の何か』を出したんだと思う。本人はまだ気付いていないだけで」
『身体の何か』…ケンタの場合は精液。射精することで消えているのが分かっている。だが、該当人はそうではないだろう。気付かないということは……。
「血か、もしくは涙のどちらかだろう。血も涙もない人だしな」
血も涙もって…それ比喩じゃなかったっけ?でも、気付かないままだとしたら可能性はあるかもな。
「呪いを解くには、呪いをかけた本人に解いてもらうか、ある事をしたりキーワードを発するのどちらかだそうなんだが、呪いをかけた本人はもうとっくに亡くなっていたそうでな……。呪いをかけた後、自決したらしい」
ある事をしたりキーワードを発すると解けるというその内容は呪いをかけた人が決める——つまり、亡くなったということは、解ける術を知ることが出来なくなったということになる。
「呪いをかけた人、よっぽど恨んでたんだろうなって思うよ。あ、水おかわり」
「……ちょ、待てよ! ということは僕は呪いをかけられているとするとだ。誰が僕を? しかもまだ子どもだったんだぞあの時は!」
水くらい自分で注げ! 僕はそれどころじゃない!
ワタルは注いでもらえる状況ではないことに気づき、自分で注ぎにいった。再び飲み干し、少し考えて話した。
「そこなんだよなぁ……。何故子どもにそういう呪いをかけたっていうのも。それに数年が立ちすぎている」
「…あ、あの時に呪いと気付けば、かけた人が誰なのか分かった可能性がある……?」
うわ、なんであの時気付かなかったんだろう。呪いかもしれないって疑えば、解決も早かったかもしれない。
抜いとけばいつも通り戻るからいいやと、放っておいてなければ…。
考えれば考えるほど、落ち込んでいく。
「ととととりあえず夕飯にしようぜっ! 今日は手伝うからさ! なっ! 呪いのほうは俺がちゃんと考えるから! 任せろ!」
あわてて必死に僕を慰めようとするワタルが少しおかしくて、微笑んでしまった。
「いや、おまえが料理手伝うと進まないから」
「そうだなっ! はははっ!」
「でも、ありがとうな」
ワタルがいるおかげで、なんとかここまで来てるんだ。それに、この体質は呪いと分かったのもワタルがいたからだし、なんとかなるだろうと何故かポジティブに思ったんだが。
…誰だよ僕に呪いかけたやつは。
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