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じれったいのなんとかしてほしい 〜ワタル〜
01
しおりを挟むある夜、いつものようにケンタの性処理を済ませ、【ケンタ性欲スイッチノート】に記録を残すため机に向かっていた。
呪いは『性欲スイッチが入っていない状態でセックスしてみる』作戦から、一応いくつかの作戦もやってみたが至って効果は得られず、月日が流れた。
また、その頃からケンタの様子がおかしくなってきている。同居しているのに、なかなか顔合わせが出来ず、食事の用意と仕事以外は引きこもっていた。
一応、性欲スイッチが入るとすぐ呼ばれるようになってきたが、済ませるとどこかぎこちないまま、さっさとシャワーへ浴びにいかれるのだ。
……もしかして、俺のことが嫌になってきたのだろうか。
書く手が止まり、ふとケンタが初めて俺のをしごいてくれた時を思い出す。
ケンタの顔が間近にあり、左目の下にあるホクロもハッキリと見える。舌をのばせばきっと舐められる距離。
指が長く細い手が俺自身を擦ったり撫でられている感触。
舐めてやろうかと言ったときの上目遣い。
その時は性欲スイッチ入ってなかったのに、あんなことが出来たのは、少なくとも抵抗感はないと嬉しく思っていたのだが……。
しかし、こうも避けられているとなかなか痛手である。本当に嫌になってきたのなら、早いこと呪いを解いて終わらせておかないといけない。
本音を言うと、終わりたくないしこのまま続けたい。
「もどかしいな……」
大きなため息をし、止めていた手を動き出す。
◇
「出張? 指名ですか?」
「そうだ。今度オータムフェスティバルがあるだろう?それで毎年振る舞うパイで必要な食材を採りに森へ行かなければならないんだが、その場所が危険なとこでな。毎回依頼はあるんだが、今回は指名があったんだ」
オータムフェスティバルとはこの町の大きなイベントの一つだ。彩りの食物が成るこの時期に、様々な食材をパイにして振る舞うイベントなのだが、料理人の腕を周知する機会の一つでもある。
「指名って珍しいですね……。誰でしょうか?」
上司から契約書が手渡され、依頼者の名前を確認して目を見張る。
依頼者の名前がケンタだったのだ。正確にいうと、ケンタが働いている食堂の料理人としてだったが。
「あー…知り合いですね。詳細は直接聞いておきます」
「知り合いなのか。じゃあ頼んだぞ」
「はい」
護衛として必要な防具や武器などを借り受けし、自宅に戻るとリビングにケンタが座って待っていた。
「その荷物からして、話は聞いているな」
「あぁ、契約書は確認した。だが詳細は聞いてないから今から聞かせてくれないか」
あ、久しぶりにまともな会話だな。なんか嬉しくなってつい顔がほろこんでしまった。
すると、ケンタはそっぽを向かれてしまってシュンと落ち込んでしまう。
「オータムフェスティバルの時に必要な食材を採りに行くんだって?」
「そう、僕の働いてる食堂は毎年オータムフェスティバルだけしか出さないパイがあるんだ。だが、市場にはあまり流通していない食材を使うことが決まりで。それを採りにいくのが恒例なんだが…」
毎年同僚の誰かが採りに行くのだそうだが、今年はケンタに選ばれたらしい。
「別に僕が行ってもいいんだが数日は泊まり込みになるし、どう考えても性欲スイッチが入らないまま帰れる見込みはないから指名した」
いつもお願いしていた護衛の事務所がたまたま俺のところだったから指名した…のことだが、今まで避けられていただけに一応俺のことは考えてくれてたんだなと嬉しくなる。
「そっか。俺を指名してくれてありがとう。安心して任してくれ。ケンタは食材探しに集中しても問題ないからな」
「頼んだぞ」
「よし、マップとか目的の食材とかもう少し教えてくれないか?」
目的の食材がある場所はここから徒歩で行ける山にあるが、森に入ってからが大変らしい。
道すがら足場が危ないところや、魔物が出くわしやすく、またどこで成るのかもその場に行かないと分からない果実だそうで、護衛がいないと命がないそうだ。
そんなに命をかけたパイなんだな……。
「料理長がオータムフェスティバルで食堂の存続が決まるって言ってた」
確かに料理人にとって今後の仕事に影響を与えるだろう。食材選びも慎重になる。毎年出ていたとなると尚更。
「了解。あとは準備できたら言ってくれ。こちらはいつでも出発できている」
「うん。頼りにしてる…」
あ、その一言は嬉しいな。
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