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素直になれないのなんとかしてほしい 〜ケンタ〜
03
しおりを挟むどのくらい時間がたっただろう。もしかしたらそんなにたっていないのかもしれない。
今はただ、快楽から逃れたい。
それをなんとかしてくれるのはワタルだけで、他の人なんかお願いしたくない。だけど、もしワタルがあのかわいらしい人と恋仲だったら、もうお願いすることなんて出来なくなる——。
なんでこんな呪いなんだよ。いや、最初から自分だけでなんとかしていたら。
『なぁ、その性処理、俺に任せてみない?』
あの言葉から始まったのだ。
ワタルのせいだ。こんな身体になったの、ワタルのせいだ。それがなかったら、自分だけでなんとか出来たかもしれない。
こんな身体にしといて、ワタルはあのかわいらしい人と楽しんでるのかよ。
胸が苦しくて、涙があふれた。ワタルがあの人と一緒にいるかもしれないと思うと、嫌な気持ちになる。
射精しないと性欲スイッチがおさまらないこの身体が、憎くてたまらないと初めて思った。
涙がポロポロ流しながら、快感を吐き出すために僕自身をしごき続けていると、玄関からドアを開ける音が聞こえた。
「あれ…? まだ帰ってないのか」
聞き慣れた声。ワタルが帰ってきた。
つい、声が漏れないように手で塞ぐ。
いつもならすぐ呼んでいたけれど、今日は隠れたかった。
こういうのはワタルしか頼めないくせに、今はどうしても隠したかった。ボロボロ泣いてしまったこの顔を見せたくなかった。
だが、そんなことは叶わず見つけられてしまう。
「ケンタ!? いつからこうなんだ!?」
キッチンの床で悶えながら倒れているのを気付いたワタルは、直ちに僕を抱えてケンタの部屋に向かった。
長いこと快感を耐えていたせいか、抱えられているだけでも感じてしまうほど敏感になっていた。
「んっ……、気にする…なっ…、自分だけで…っ」
「何言ってるんだ!? そんなの出来ないだろう!?」
力の入らない腕で、なんとかワタルから離れようとする。そのことに戸惑っているのが伝わる。
「ケンタ? どうしたんだ?」
その問いに、黙って首を振った。
僕の部屋に入り、ベッドを優しくおろしてもらう。その優しさは、あの人もしていたのだろうか。
ついそんなことを考えてしまって、涙がまた出てきてしまった。
涙をみせたケンタに、ワタルはさらに慌てる。
「もしかして長いこと耐えすぎて辛いのか?ごめんな、早く帰っていれば…」
辛い? そうだ。こんなに身体がワタルを求めているのに、ワタルは別の人と…。
涙が止まらない。胸が苦しい。
「誰かと……お楽しみ…だったんだろぉっ…」
僕に触れようとするワタルに、そう言って拒否した。
「は…? え? どういうこと?」
触れるのを拒否されてしまい、少しだけ硬直するワタル。
「とぼけるなよぉっ…! 見たんだぞ今日!」
「え? 今日? 誰かとって?」
おろおろしながらケンタを抱きしめようとするが、触るなとはねつけられ困っている様子だった。
なんでそんなに戸惑っているんだよ。本当にお楽しみだったのかよ。
「市場で…っ、一緒にいたやつだよ…っ! 好きなんだろ! あの人がっ。昼食食べにこなかったのもそうなんだろ!」
「は、いや、あの人は」
「あの時、好きだって言ったのも…っ、あの人に重ねて言ってたんだろっ」
「は!? まっ、まって! あの時聞こえてたの!?」
ものすごく動揺している。やっぱりあの人が好きなんだ。
「触るなぁっ…!」
性欲スイッチを治まるためには、触れてもらいたいけれど、触れてもらいたくない。顔も見たくない。
すると、突然ワタルの両手が僕の顔に挟み、ワタルの顔と見合わせるように仕向けられた。
「ケンタ! ちゃんと聞いて俺を見て!! あの人はこの前呪いにかかった人の配偶者だ!」
「は…?」
そういえば前にそんな話あったっけ。領主貴族が呪いにかかったっていう…。
「呪いはまだ解けていなくて、再びまた発狂したから配偶者を保護してたんだ。その時に、呪いのことをその人と色々話してたんだが…その時にいたのか?」
「なんで、そんな人と市場にっ、いたんだよ…!?」
ワタルの手を顔から外そうと躍起になる。だが力強くて外せない。
「依頼者がかかった呪い、覚えてるか? 食欲がなくなるっていう呪いだ。まだ解けてはないんだが、食欲が戻った時に食べさせてやりたいのがあると、配偶者に言われてたんでな…。その食材を一緒に探してたんだ」
「そんなの、一人でも出来るだろぉっ」
「そうはいかないよ~。配偶者を常に守ってくれっていう契約なんだし、配偶者が自ら買いに行きたいっていうんだから。仕事だよ」
だんだんとワタルの顔が嬉しそうな顔しているのが見えた。
「なに、笑って、る、んだよっ」
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