前触れなく感じてしまう体質をなんとかしてほしい

Sui

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キスしたくなるのなんとかしてほしい 〜ワタル〜

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「気持ち悪いくらいご機嫌だな…?」

 仕事から帰ってきたケンタから思い切り引かれるぐらい、俺は上機嫌だった。
 なにしろ、ケンタのまじないの解き方を教えてもらったばかりだ。
 その解き方が、まさかのまさかで早く知りたかったとともに、知らなくてもよかったとも思った方法だった。

「おかえり~。今日もお疲れさまケンタ~。チュッ」

 気分上々なので投げキス付きでお迎えする。

「やめろ。抱きしめようとするのもやめろ」

 実際抱きしめにいこうとしてたので、見透かされてしまった。

「ちぇー。抱くぐらい良いじゃなーい」
「良くない」
「なんで」
「……っそれは、その」

 口ごもってしまうケンタが可愛い。

「嫌ってわけじゃないんでしょ? 俺はケンタの事が好きだから抱きしめたいんだよ」

 そう言ってケンタを抱きしめる。

「…っだから、勝手に抱くなっ」
「じゃあ、抱きしめていいですか?」
「もう抱きしめてるっ!」
「そうだね~」

 顔が赤くなって、なんとか抵抗する様子が可愛くてたまらない。本当に嫌だったら殴る蹴るじゃ済まないだろう。
 あともう一押しかなぁ。

「…あのね、呪いの解き方分かったかもしんない」

 なんとか離れようとするケンタの動きが止まる。

「でも、それはケンタにとって難しいかも?」
「どういうことだよ!?」
「だって、いま好きな人いないんでしょ?」

 あえて、そう言ってみる。

「……っ、そ、それは」
「好きな人がいたら、解ける呪いなのになぁ」
「やってみないと分かんないだろっ!」
「そうだねぇ。出来るかなぁ」

 解き方をケンタに耳打ちしたら、赤くなって思いっきり突き飛ばされた。うん、想定内。

「どうせ嘘に決まってるっ!」
「それが本当だったりするんですよ。でもタイミング的にそう思っちゃうのも仕方ないかも」

 解き方を教えてもらったとき、自分も嘘だろって思ってしまったのだから。
 教えていただいた人から借りた本を出し、該当ページを開いてケンタに見せる。そこにはこう記載してあった。


【誰でも出来る『おまじない』! ここ最近夜の営みが物足りないと思ったあなた、ぜひこのおまじないで熱い夜を過ごしちゃおう☆】


 そういう見出しがデデンとあり、その後はやり方が記載してあった。そして効果はまさしくケンタの体質そのものだった。
 誰でも出来ると謳っているため、人によっては失敗して他の人にかかってしまうこともあるらしい……おそらくケンタは当時、両親のどちらかがやってみて失敗してしまったんだろう。そしてそれがケンタにかかってしまったという、ありえない展開なのだろう。

「相手と繋がっている時に【好き】か【愛してる】を言いながらキスすれば解けるって、そんな解き方あるかよー!!」

 とケンタが怒っているが、こちらはニヤケてしまうので手で隠してみる。

 射精すれば治まるのは、呪いがかかってると気付かないようにするためだろう。要は性欲スイッチがかかれば良いっていう『おまじない』なのだから。

 …恋愛さえまだ未熟だった時にかかってしまったのは不運としか言いようがないが。

「一応、俺らが初めてセックスしようとしたときに、ファーストキスは好きな人にあげてって言ってしまったからね、俺」

 要はケンタ次第だよ? と、ケンタの唇を親指で触れて軽く擦る。このままキスしてしまいたいが、グッとこらえて自分の下唇を舐めた。
 するとケンタが戸惑いながら目を伏せてきた。その顔と唇の柔らかさの感触だけで、勃ってしまいそうだ。

「…っと、これ以上触るとヤバいわ俺。とりあえずその本、一応借りもんだから破るとかやめてくれない?」
「いますぐにでも破り捨てたい…!!」
「勘弁してください。大事な顧客の本なんで。現状のまま返してくれるならどうぞ」

 気持ちの整理もあるだろうと思い、ケンタを一人にしてやろうとそっと自分の部屋に向かった。

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