桜はまだか?

hiro75

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第三章「焼き味噌団子」

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 神谷源太郎は、幸恵のはみ出した足を夜着の中に入れてやった。

「嫌われたかな」

 と、ひとり寂しく呟いた。

 帰宅すると、寝ていた幸恵が起きてきた。

 久しぶりに源太郎は抱いてやろうと思ったが、幸恵はなぜか嫌がった。

 桃のようなすべすべの頬をぷっくりと膨らませて、じっと源太郎を睨み付ける。

 その目はどこか、お七に似ていた。

「まあ、何ですか、お父様に向って」

 母に叱られると、そのままぷいっと夜具の中に潜り込んでしまった。

 源太郎は、幸恵の無垢な寝顔を見ながら、

(あの目、お七に似ていたな。この子も、お七のようになるのだろうか?)

 と思った。

「あなた、いかがなされました?」

 娘の寝顔をしげしげと眺めていた源太郎に、妻の多恵が訊いた。

「いや、女は分からんと思ってな」

「はあ?」

「いや、お七の件だが……」

 源太郎は、昼間あったことを話し出した。
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