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第二章「槻の木の下で」 後編
第4話
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八重女と出会ってから、黒万呂と弟成は彼女と親しく話すようになった。
特に、黒万呂は彼女のことが気になるらしく、ずっと彼女のことばかり話している。
「黒万呂てさ、八重女のことが好きなん?」
焼け落ちた斑鳩宮の片付けに駆り出された弟成は、黒焦げの材木を拾い上げながら黒万呂に何気なく訊いた。
「え、いや……、そうかも知れへん」
黒万呂からそんな答えが返ってくるとは考えても見なかったので、弟成は驚いた。
「えっ、そうなん?」
「なんや、可笑しいか? 俺が、八重女を好きやったら」
「いや、そなことあらへんけど。あまり、はっきり言うから」
片付ける手が止まる。
「俺、こういうことはっきりせんと嫌やねん。好きなもんは好き。嫌いなもんは嫌い。俺は、八重女のことが好きやねん」
黒万呂も、手を止めて弟成を見た。
「それが……、初恋てこと?」
弟成は、八重女の言葉を使ってみた。
実際、彼は初恋が如何なる意味を持っているのか分かってはいなかったのだが………………
「初恋? ちゃうな、俺の初恋は、お前の姉ちゃんや」
驚きで、返す言葉がなかった。
「俺、初めて好きになったんが、雪女姉ちゃんやからな」
「そうなん?」
「そうやで」
黒万呂は、また腰を屈め材木を拾い集め出した。
弟成も、彼に続いた ―― 彼の頭は混乱していた。
黒万呂の初恋の相手が、雪女姉ちゃんだったなんて………………
でも、初恋って一体なに?
「黒万呂、初恋って、どんなん?」
思い切って訊いてみた。
「初恋か、初恋はな……、てっ、弟成、お前、いままで何の話をしてたんね?」
「えっ……、初恋……やよね?」
「もしかして、ほんまに知らんへんのか?」
黙って頷いた。
黒万呂は大きくため息を付き、説明し出した。
こんな時、黒万呂は随分大人びている。
「ええか、初恋ちゅうのは、初めて人を好きになることやねん。お前も人を好きになったことあるやろ?」
「黒万呂のことは好きやで」
「いや、そういう好きとちゃうねん。女の子を好きになったことはないんか?」
弟成は頭を捻った。
「別に好きと思わんでも、ほら、なんや、女の子を見とったら、ほんわかしてきたとか、この辺が熱くなってきたとか」
黒万呂は、胸の辺りを摩る。
「八重女を見てると、そうなんの?」
「そりゃ……、まあな……」
「へえ、凄いねんな」
弟成は、自分よりはるかに大人の黒万呂に目を輝かした。
「まあな」
黒万呂は、なぜか鼻高々である。
「こら、そこ! しっかりと働かんか!」
作業の監督をしていた男が、こちらを見て叫んだ。
「やばい、やばい」
二人は、慌てて腰を屈めた。
男は、しばらく二人の様子を見ていたが、そのまま黙って立ち去って行った。
黒万呂は、立ち去る男の背中を見ながら言った。
「俺、八重女と一緒になるねん」
「え、一緒になるって、父ちゃんと母ちゃんになるってこと」
「そうや、八重女は可愛いやろ? 俺、好きでたまらんねん。将来、絶対八重女を俺のもんにすんねん」
弟成は、八重女の顔を思い浮かべた。
確かに、八重女は可愛い。
特に、あの大きな目が、彼の頭に強く残っている。
そう言えば、お屋敷の子もあんな目をしていた。
八重女の顔に、あの子の面影が重なった。
その時、弟成は感じた。
そして、その思いを口に出してしまった。
「もしかして、あれが初恋?」
「はあ?」
黒万呂がそれを問い詰めたが、弟成は決して口を割らなかった。
特に、黒万呂は彼女のことが気になるらしく、ずっと彼女のことばかり話している。
「黒万呂てさ、八重女のことが好きなん?」
焼け落ちた斑鳩宮の片付けに駆り出された弟成は、黒焦げの材木を拾い上げながら黒万呂に何気なく訊いた。
「え、いや……、そうかも知れへん」
黒万呂からそんな答えが返ってくるとは考えても見なかったので、弟成は驚いた。
「えっ、そうなん?」
「なんや、可笑しいか? 俺が、八重女を好きやったら」
「いや、そなことあらへんけど。あまり、はっきり言うから」
片付ける手が止まる。
「俺、こういうことはっきりせんと嫌やねん。好きなもんは好き。嫌いなもんは嫌い。俺は、八重女のことが好きやねん」
黒万呂も、手を止めて弟成を見た。
「それが……、初恋てこと?」
弟成は、八重女の言葉を使ってみた。
実際、彼は初恋が如何なる意味を持っているのか分かってはいなかったのだが………………
「初恋? ちゃうな、俺の初恋は、お前の姉ちゃんや」
驚きで、返す言葉がなかった。
「俺、初めて好きになったんが、雪女姉ちゃんやからな」
「そうなん?」
「そうやで」
黒万呂は、また腰を屈め材木を拾い集め出した。
弟成も、彼に続いた ―― 彼の頭は混乱していた。
黒万呂の初恋の相手が、雪女姉ちゃんだったなんて………………
でも、初恋って一体なに?
「黒万呂、初恋って、どんなん?」
思い切って訊いてみた。
「初恋か、初恋はな……、てっ、弟成、お前、いままで何の話をしてたんね?」
「えっ……、初恋……やよね?」
「もしかして、ほんまに知らんへんのか?」
黙って頷いた。
黒万呂は大きくため息を付き、説明し出した。
こんな時、黒万呂は随分大人びている。
「ええか、初恋ちゅうのは、初めて人を好きになることやねん。お前も人を好きになったことあるやろ?」
「黒万呂のことは好きやで」
「いや、そういう好きとちゃうねん。女の子を好きになったことはないんか?」
弟成は頭を捻った。
「別に好きと思わんでも、ほら、なんや、女の子を見とったら、ほんわかしてきたとか、この辺が熱くなってきたとか」
黒万呂は、胸の辺りを摩る。
「八重女を見てると、そうなんの?」
「そりゃ……、まあな……」
「へえ、凄いねんな」
弟成は、自分よりはるかに大人の黒万呂に目を輝かした。
「まあな」
黒万呂は、なぜか鼻高々である。
「こら、そこ! しっかりと働かんか!」
作業の監督をしていた男が、こちらを見て叫んだ。
「やばい、やばい」
二人は、慌てて腰を屈めた。
男は、しばらく二人の様子を見ていたが、そのまま黙って立ち去って行った。
黒万呂は、立ち去る男の背中を見ながら言った。
「俺、八重女と一緒になるねん」
「え、一緒になるって、父ちゃんと母ちゃんになるってこと」
「そうや、八重女は可愛いやろ? 俺、好きでたまらんねん。将来、絶対八重女を俺のもんにすんねん」
弟成は、八重女の顔を思い浮かべた。
確かに、八重女は可愛い。
特に、あの大きな目が、彼の頭に強く残っている。
そう言えば、お屋敷の子もあんな目をしていた。
八重女の顔に、あの子の面影が重なった。
その時、弟成は感じた。
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「もしかして、あれが初恋?」
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黒万呂がそれを問い詰めたが、弟成は決して口を割らなかった。
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