法隆寺燃ゆ

hiro75

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第四章「白村江は朱に染まる」 中編

第3話

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『日本書紀』では「白村」「白村江」、『旧唐書』では「白江」「熊津江口」、『三国史記』では「白江」または「伎伐浦」と記載されている。

 現在の韓国忠清南道と全羅北道の境界にある錦江河口が、これにあたると云われている。

 錦江は、全長約四百一キロメートルで、洛東江・漢江とともに、韓国の三大河川の一つに数えられている。

 鬼室福信が立て籠もっていた周留城は、現在の錦江の右岸、韓山と考えられている。

 この周留城からは、旧百済の王都があった泗沘しひ城(中清南道扶餘郡扶餘)を北東に臨むことができ、錦江を遡れば、この城まで辿り着くことができた。

 また、さらに上流に遡れば、唐軍の熊津都督府が置かれる熊津城(中清南道公州郡)に到達することができ、軍事的に需要な拠点であった。

 因みに、泗沘城のあった扶餘ふよ付近では、錦江のことを白馬江と呼んでいる。

 また、ここには落花台という断崖絶壁の岩山がある。

 これは、六六〇年の百済滅亡時に、後宮の官女たちが唐・新羅軍の兵士に辱めを受けるよりはと身を躍らせた場所で、その数は三千人にも及んだと伝えられている。

 その時、岩山から川に身を翻す女たちの姿が、まるで色取り取りの花が落ちてゆくように見えたので、落花台と名付けられたらしい。

 豊璋王子が百済王となって半年、周留城は天然の要害に守られて、敵の攻撃を受けることなく過ごしていた。

 当時、唐軍は北方の高句麗と睨み合い状態であったので、百済の平定は主に新羅軍が受け持っており、太主武烈王の跡を継いだ文武ぶんぶ王の指揮により、百済の残兵が立て籠もる山城をひとつづつ陥落させていたが、新羅軍も百済の残兵には手を焼いており、おまけに倭国の援軍が到着したということで、周留城には迂闊に手が出せない状態であった。

 守りは固い、しかも敵の城には迅速に侵入できる ―― 周留城は、百済にとって非常に有利な場所であったのだが、なぜか豊璋王はここを捨てて、南の避城へさしへ退こうとしたのである。

 それは、中大兄の称制元(六六二)年十二月一日のことである。
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