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第3話
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湯煙が棚引くと、すでに親子の姿はなかった。
湯から上がった私は、着物を身に着けるのも忘れて参道を駆け上がった。
工房に飛び込むと、転がっていた材木を取り上げ、寝食も忘れて一気に彫り上げていった。
アヤメの顔を思い浮かべながら、丸太に母の顔を彫り付けていった。
いや、彫り付けたのではない。
鑿先が私の意識とは別のところで動き、材木の中からアヤメの顔が自然と浮かび上がってきたのである。
仏師となって多くの仏像造りに携わってきたが、こんな感覚は初めてだった。
お陰で、翌日の昼には思いどおりの、いや、思っていた以上の仏像が彫り上がった。
他の仏師たちは、全裸で一心不乱に鑿を使う私を見て、とうとう気が狂ったかと心配したらしい。
だが、彫り上がった仏を見て、皆、「うむ」と絶句し、しばらく眺めたあと、「これならば仕方があるまい」と誰もが頷きあった。
自分で言うのも恥ずかしくなるが、このたびの仏像の出来は、今までの中で最高のものであろう。わが師運慶殿の作、円成寺の大日如来に勝るとも劣らない一作ではなかろうか。
三日の不眠が続き、さらに一夜を徹夜した。それでも不思議と疲れはない。
出来上がった仏像を見ると、母の懐に抱かれているようで、むしろ穏やかな心持ちになった。
彫り上がった仏像を、恵妙和尚と金窪に見せてやった。
和尚は驚嘆を持って仏像を眺めていたが、金窪は苦りきった顔で私を睨みつけた。
然もありなん。
仏像の顔は、金窪がよく見知っている女の顔そのものだったのだから。
「これが、尼御台様のお顔か?」
金窪は、咽喉に何ものか詰ったような顔をして訊いた。
工房の中は風通しが悪い。木屑が散りばり、埃が舞って息苦しい。咽喉の弱いやつなら、すぐさま痛めてしまう。
「慈愛溢れるお顔でしょう」
私は、素知らぬ顔で答えてやった。
「いや、まこと、まこと」
和尚は大層気に入ってくださったようだ。
丸い顔をさらに丸くして、何度も何度も頷いた。
和尚がこれだから、金窪が無理を言えるわけはない。
大袈裟な咳をしたあと、口をへの字に曲げ、埃を掻き分けながら、そそくさと工房から出て行った。
金窪は、尼御台様にどのように伝えるのであろうか?
実慶が注文と違えた仏像を造ったと報せるのだろうか?
それとも、尼御台様の顔を、みすぼらしい下女の顔に似せて造ったと早馬を走らせるだろうか?
どのみち、尼御台様が知れば、ご立腹なされるだろう。
なに、構うことはない。
気に食わないなら、他の仏師が派遣されるまでだ。
それまでは、この仏像に心血を注げばいいのだ。
金窪が出て行ったあとも、恵妙和尚は仏像を飽きることなく眺めていた。
「これも、仏のお導きであろうか」
糸よりも細い眼を私に向けた。
私は、眉間に皺を寄せた。
「和尚様は、この顔が誰であるかご存知のはず。その顔を見て、仏のお導きとは、どのような仔細がおありか」
和尚は、もう一度仏像を眺め、うむ、と首肯すると、私に一瞥くれて表へと足を運んだ。
澄み渡った秋晴れの下では、緑黄の草木に本堂の漆黒の瓦が映える。
一瞬、黒瓦の照り返しに目が眩む。
私は目を瞬かせ、心地良い松籟に耳を澄ませながら境内を緩やかに歩く和尚の猫背気味の背中を追った。
「あれは、可哀想な娘でしてな」
数日前に聞いた台詞だ。
和尚は、見えているのか、見えていないか分からないような眼で遠望した。
「こちらに参られたころの禅室様は、それは大変なお嘆きようで、日がな一日、草庵に籠もりきり」
「当然でございましょう。将軍の役を取り上げられたのみならず、御嫡男の一幡君まで亡くされたのですから」
和尚は深く頷いた。
「御側室の若狭局様や御家来衆も、殿は、まだまだお若い身、こんな場所で果てる命ではない。が、もはや生きる気力を失っておられると、大変憂慮なされておられました。拙僧も、あたら若い命が萎んでいくのを見るに忍びず、湯に入られては如何かなどと、お慰めしたのでございます」
「それで、禅室様は如何に」
「ええ、日に日に血色も良くなり、段々と生きる力も湧いてきたようでございます。特に、御家来衆の目を盗んでまで、朝の湯に入られるのを楽しまれていたとか。拙僧も、お役に立てて嬉しゅうございました」
和尚は、本当に嬉しそうな笑顔をこぼしが、すぐさま悲しい顔になった。
「ですが、悲しいことでございます。禅室様はあのようなことになられて。若狭局様もこの地を去られ、御家来衆も哀れな最後を遂げられました。修禅寺も悲しみにくれました」
私は、相槌を打つこともなく黙って和尚の話を聞いていた。
和尚も、特にそれを求めなかったからだ。
「半年ぐらいだったでしょうか。あの騒動も治まり、悲しみも遠い過去の記憶になっていったころです。ある日、アヤメが母親とともにひょっこりと私の前に現れたのです。アヤメというのは、紙漉きをやっておる男の一人娘でしてな、普段は人付合いもなく、山の奥でひっそりと暮らしておりますし、あまり他の者と話したがらない大人しい娘でございました。そのアヤメと母親が、拙僧を頼ってきたのですから驚きでございます。さらに驚いたのは、お腹がこんなに大きく」
和尚はお腹の辺りで石ころを抱えるような格好をした。
「ほう、誰の子どもですか」
興味深い話である。私は、面白がって訊いてみた。
「はあ、それが……」
和尚はことさら言葉を濁した。
「話からいけば、禅室様の御家来衆の誰かと思われますが」
探るようにして和尚の僅かに開いた目を見た。
和尚の視線は、意味ありげに桂川の対岸のこんもりとした丘に向いた。
そこは、禅室様の草庵があった辺りだ。
和尚の視線の先をぼんやりと眺めていた私の脳裏に、アヤメの命に満ち溢れた若い体に、己の体を重ね合わせる禅室様の姿が浮かび上がった。
「ああ、まさか……」
恵妙和尚は静かに頷いた。
「禅室様のご気分が良くなったのは、湯のお陰だけではなかったのですな。落飾なさっておられてとはいえ、まだまだお若い体でしたから」
「それで、アヤメはどうしたのですか?」
「父無し子ですから、父がいい顔はしません。如何せん、鎌倉方の敵ともいえる子どもです。北条方の侍がうろうろしているこの地では、村の者たちも侍を恐れて庇ってやることもできません。それで母とともに私のところに、どうすればいいのかと泣きついて来たのでございます」
子の父はなく、公にもできぬ間柄………………まして、北条方の侍にそれと分かれば、お腹の子とともに斬り殺されるであろう。
そんな危うい地で、日に日に大きくなるお腹を抱えて、アヤメの心中は如何ほどであったろうか。
「アヤメは産みたいと申したのですか?」
「ええ、あの娘はすでに覚悟をしていたようです。父無し子であっても、授かった命を大切にしたいと」
心細い中で、子を産むことを決心したのだから、まさしく母は強しである。
「拙僧も、生まれてくる命をこちらの都合で葬り去るなど断じてできません。まして、禅室様の忘れ形見でもありますし。それではと、当寺の下女として住まわせ、子どもを産ませたのですよ」
温かい心遣いである。
和尚の女ではと、勘繰っていた自分が恥ずかしい。
和尚は、優しい眼差しで私を見た。
その眼差しに、私はますます恥ずかしくなった。
「ですから、実慶殿が禅室様の菩提を弔うための仏像にアヤメの顔を彫られたので、驚くとともに、仏の導きだと思ったわけです。禅室様が最後に慕われた娘ですから」
なるほどと、私は頷いた。
「それに、アヤメにもいい思い出になるでしょうし」
和尚は、寂しそうに呟いた。
「近々、この地を離れて、私の縁者がいる寺に預けようかと思っておりまして」
「あの娘をですか?」
「ええ、北条方も娘と子の素性に気がつき始めたようですし」
金窪らが娘を取り囲んでいたのには、そういった訳があったのだ。
「旅立つ前に、あれに仏像を見せてやりましょう」
そう言うと和尚は、猫背気味の背中をさらに丸くして、本堂のほうへ、とぼとぼと歩いていった。
和尚の影が、ことさら小さく見えた。
湯から上がった私は、着物を身に着けるのも忘れて参道を駆け上がった。
工房に飛び込むと、転がっていた材木を取り上げ、寝食も忘れて一気に彫り上げていった。
アヤメの顔を思い浮かべながら、丸太に母の顔を彫り付けていった。
いや、彫り付けたのではない。
鑿先が私の意識とは別のところで動き、材木の中からアヤメの顔が自然と浮かび上がってきたのである。
仏師となって多くの仏像造りに携わってきたが、こんな感覚は初めてだった。
お陰で、翌日の昼には思いどおりの、いや、思っていた以上の仏像が彫り上がった。
他の仏師たちは、全裸で一心不乱に鑿を使う私を見て、とうとう気が狂ったかと心配したらしい。
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自分で言うのも恥ずかしくなるが、このたびの仏像の出来は、今までの中で最高のものであろう。わが師運慶殿の作、円成寺の大日如来に勝るとも劣らない一作ではなかろうか。
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彫り上がった仏像を、恵妙和尚と金窪に見せてやった。
和尚は驚嘆を持って仏像を眺めていたが、金窪は苦りきった顔で私を睨みつけた。
然もありなん。
仏像の顔は、金窪がよく見知っている女の顔そのものだったのだから。
「これが、尼御台様のお顔か?」
金窪は、咽喉に何ものか詰ったような顔をして訊いた。
工房の中は風通しが悪い。木屑が散りばり、埃が舞って息苦しい。咽喉の弱いやつなら、すぐさま痛めてしまう。
「慈愛溢れるお顔でしょう」
私は、素知らぬ顔で答えてやった。
「いや、まこと、まこと」
和尚は大層気に入ってくださったようだ。
丸い顔をさらに丸くして、何度も何度も頷いた。
和尚がこれだから、金窪が無理を言えるわけはない。
大袈裟な咳をしたあと、口をへの字に曲げ、埃を掻き分けながら、そそくさと工房から出て行った。
金窪は、尼御台様にどのように伝えるのであろうか?
実慶が注文と違えた仏像を造ったと報せるのだろうか?
それとも、尼御台様の顔を、みすぼらしい下女の顔に似せて造ったと早馬を走らせるだろうか?
どのみち、尼御台様が知れば、ご立腹なされるだろう。
なに、構うことはない。
気に食わないなら、他の仏師が派遣されるまでだ。
それまでは、この仏像に心血を注げばいいのだ。
金窪が出て行ったあとも、恵妙和尚は仏像を飽きることなく眺めていた。
「これも、仏のお導きであろうか」
糸よりも細い眼を私に向けた。
私は、眉間に皺を寄せた。
「和尚様は、この顔が誰であるかご存知のはず。その顔を見て、仏のお導きとは、どのような仔細がおありか」
和尚は、もう一度仏像を眺め、うむ、と首肯すると、私に一瞥くれて表へと足を運んだ。
澄み渡った秋晴れの下では、緑黄の草木に本堂の漆黒の瓦が映える。
一瞬、黒瓦の照り返しに目が眩む。
私は目を瞬かせ、心地良い松籟に耳を澄ませながら境内を緩やかに歩く和尚の猫背気味の背中を追った。
「あれは、可哀想な娘でしてな」
数日前に聞いた台詞だ。
和尚は、見えているのか、見えていないか分からないような眼で遠望した。
「こちらに参られたころの禅室様は、それは大変なお嘆きようで、日がな一日、草庵に籠もりきり」
「当然でございましょう。将軍の役を取り上げられたのみならず、御嫡男の一幡君まで亡くされたのですから」
和尚は深く頷いた。
「御側室の若狭局様や御家来衆も、殿は、まだまだお若い身、こんな場所で果てる命ではない。が、もはや生きる気力を失っておられると、大変憂慮なされておられました。拙僧も、あたら若い命が萎んでいくのを見るに忍びず、湯に入られては如何かなどと、お慰めしたのでございます」
「それで、禅室様は如何に」
「ええ、日に日に血色も良くなり、段々と生きる力も湧いてきたようでございます。特に、御家来衆の目を盗んでまで、朝の湯に入られるのを楽しまれていたとか。拙僧も、お役に立てて嬉しゅうございました」
和尚は、本当に嬉しそうな笑顔をこぼしが、すぐさま悲しい顔になった。
「ですが、悲しいことでございます。禅室様はあのようなことになられて。若狭局様もこの地を去られ、御家来衆も哀れな最後を遂げられました。修禅寺も悲しみにくれました」
私は、相槌を打つこともなく黙って和尚の話を聞いていた。
和尚も、特にそれを求めなかったからだ。
「半年ぐらいだったでしょうか。あの騒動も治まり、悲しみも遠い過去の記憶になっていったころです。ある日、アヤメが母親とともにひょっこりと私の前に現れたのです。アヤメというのは、紙漉きをやっておる男の一人娘でしてな、普段は人付合いもなく、山の奥でひっそりと暮らしておりますし、あまり他の者と話したがらない大人しい娘でございました。そのアヤメと母親が、拙僧を頼ってきたのですから驚きでございます。さらに驚いたのは、お腹がこんなに大きく」
和尚はお腹の辺りで石ころを抱えるような格好をした。
「ほう、誰の子どもですか」
興味深い話である。私は、面白がって訊いてみた。
「はあ、それが……」
和尚はことさら言葉を濁した。
「話からいけば、禅室様の御家来衆の誰かと思われますが」
探るようにして和尚の僅かに開いた目を見た。
和尚の視線は、意味ありげに桂川の対岸のこんもりとした丘に向いた。
そこは、禅室様の草庵があった辺りだ。
和尚の視線の先をぼんやりと眺めていた私の脳裏に、アヤメの命に満ち溢れた若い体に、己の体を重ね合わせる禅室様の姿が浮かび上がった。
「ああ、まさか……」
恵妙和尚は静かに頷いた。
「禅室様のご気分が良くなったのは、湯のお陰だけではなかったのですな。落飾なさっておられてとはいえ、まだまだお若い体でしたから」
「それで、アヤメはどうしたのですか?」
「父無し子ですから、父がいい顔はしません。如何せん、鎌倉方の敵ともいえる子どもです。北条方の侍がうろうろしているこの地では、村の者たちも侍を恐れて庇ってやることもできません。それで母とともに私のところに、どうすればいいのかと泣きついて来たのでございます」
子の父はなく、公にもできぬ間柄………………まして、北条方の侍にそれと分かれば、お腹の子とともに斬り殺されるであろう。
そんな危うい地で、日に日に大きくなるお腹を抱えて、アヤメの心中は如何ほどであったろうか。
「アヤメは産みたいと申したのですか?」
「ええ、あの娘はすでに覚悟をしていたようです。父無し子であっても、授かった命を大切にしたいと」
心細い中で、子を産むことを決心したのだから、まさしく母は強しである。
「拙僧も、生まれてくる命をこちらの都合で葬り去るなど断じてできません。まして、禅室様の忘れ形見でもありますし。それではと、当寺の下女として住まわせ、子どもを産ませたのですよ」
温かい心遣いである。
和尚の女ではと、勘繰っていた自分が恥ずかしい。
和尚は、優しい眼差しで私を見た。
その眼差しに、私はますます恥ずかしくなった。
「ですから、実慶殿が禅室様の菩提を弔うための仏像にアヤメの顔を彫られたので、驚くとともに、仏の導きだと思ったわけです。禅室様が最後に慕われた娘ですから」
なるほどと、私は頷いた。
「それに、アヤメにもいい思い出になるでしょうし」
和尚は、寂しそうに呟いた。
「近々、この地を離れて、私の縁者がいる寺に預けようかと思っておりまして」
「あの娘をですか?」
「ええ、北条方も娘と子の素性に気がつき始めたようですし」
金窪らが娘を取り囲んでいたのには、そういった訳があったのだ。
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