悪役令嬢の義弟に転生した俺は虐げられる

西楓

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その後4

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公爵は俺の腰に手を回すと、強い力で公爵の方へ引き寄せた。バランスが崩れた俺は、勢いよく公爵の胸に抱きついてしまった。

(公爵の胸の音がダイレクトに聞こえる…)

公爵の心臓はドクドクドクと激しく波打っていた。俺の心臓もバクバクしていて、いつの間にか共鳴して一つになっていた。

(俺が公爵を思うように、公爵も俺のことを思って心臓をドキドキさせてるんだろうか。お揃いみたいで嬉しいような恥ずかしいような…)

想像していると顔が熱くなり、俺は公爵の胸に顔を埋めた。洗いざらしのシャツの匂いがした。

「サミュエル……」
公爵の声が艶かしくて甘い。

(心臓が飛び出そう…またキスしてくれるかな…それとももしかして…)

「だ、旦那様…」

公爵の綺麗な指が俺の顔に向かってきた。
俺は拳をギュッと握って胸の中で身構えをした。

(く、くる…)

「サミュエル…これは何だい?」

(⁉︎)

公爵が俺の目の前に見覚えのない小さな瓶を近づけてきた。瓶の中にはとろりとした透明の液体が入っている。

「?小瓶の中身ですか?ドレッシングですか?それとも飲み物でしょうか?」

質問の意図が理解できず、俺は小首を傾げた。俺の回答が予想外だったのか、公爵は腑に落ちない顔をしている。

(突然どうしたんだろう…色っぽいムードになるかと勘違いした自分が恥ずかしい…)

「…サミュエルは…これをあの宰相の息子から手渡されていたはずだが…本当にこれが何かわからないのかい?」

公爵は少し口をモゴモゴさせて、言うのを躊躇っている。空色の瞳はゆらゆらと揺れている、

(宰相の息子…カーティスから貰った?あっ…)

「カーティスから押し付けられていた物ですね。中身を存じ上げなくてすみません。拾ってくださってありがとうございました」

小さく礼をして、手の平を公爵の前に掲げた。
公爵の瓶を持つ手は固まっていて動かない。

(返してくれるわけではないのか?もしかして、中身を知らない事が問題なのか?という事は、危険物とか?液体爆薬とか毒薬?
いや、カーティスがそんな危ないものを俺に渡してくるはずはないし…公爵に確認してみよう)

「旦那様はご存知なんですか?それは危険なものなんでしょうか?」
  
公爵の瞳をまっすぐ見つめた。

「いや…っ…その…危険と言うには危険なんだが…
……サミュエルは社交界には参加して間もないから知らないのかな…………………あの男、一体何を思ってこんな物を私のサミュエルに…」

公爵は額に薄っすらと汗を滲ませながら、早口で捲し立てる。最後の方は小声のため、何を言っているのかよく聞き取れない。

(やはり危険物だったのか…しかも、社交界では話題になっているような、かなり危ない物を俺に押し付けてきてたのか…カーティスの奴、一体どんな意図でそんな物を…問いただしてやらねば!)

「分かりました。そんな危険な物はカーティスに熨斗を付けて返してやります」

カーティスへの怒りで無意識に強い口調となっていた。公爵の手から瓶を受け取ろうとしたが、公爵が強く握りしめていて離さない。

「いや…危険と言っても安全のために使う物で…危険ではないと言うか…………………………媚薬入りローションなんだが…」

沈黙の後、公爵の美しく整った口から信じられない単語が発せられた。
俺の目はまさに点になっていたに違いない。
あんぐりと口を開けると言う経験を初めてした。

ゴホンという公爵の咳払いで覚醒した。

(やばい…空耳が聞こえてきた。俺がエロいことを考えていたからか?)

「旦那さま、すみません。よく聞こえなかったのですが……私の聞き間違いでなければ、媚薬入りローションとおっしゃられましたか?
性交の際に用いられるという、ローションのことで間違いないでしょうか」

好きな人の前で、性的な話題を口にすると、そういう行為を想像してしまう。顔が熱くなり真っ赤になっているのが自分でもわかった。

「やはりサミュエルは、これが性交に用いられるという事を知っていたんだね。もしや既に使用済みという事はないだろうね。まさかあの宰相の息子と?
名前で呼び合っていたし、嘸かし親密なんであろう。
私に対しては名前呼びを拒否していたが、彼は特別なんだね」

公爵の声は凍りつくほど冷淡で、時折苛立ちのようなものが感じられた。

(誤解されたくない)

「誤解なさらないでください。そのローションの存在は今初めて知りましたし、見たことも使ったこともありません。
旦那様を名前で呼ぶなど恐れ多くて…
旦那様こそご婦人方に笑顔を振りまいて…俺にはキスも手も出してくれないのに…」

考えるより先に言葉が出ていた。やらかしてしまった事に気づき、身体中の汗が一気に吹き出す。

(まずい…うっかり心の底でずっと思っていた事を漏らしてしまった。俺の嫉妬心に気がづいてなければよいけれど)

公爵の顔を恐る恐る覗き見ると、険のある顔が一転して笑顔になっていた。

「もしかして…嫉妬してくれていたのかい?サミュエル、君はなんで可愛いんだ。
私の心も、私の瞳も、君しか映さないというのに…
心の中を全て見せてあげたいよ。
愛しいサミュエル。大切な君に不安な思いをさせてしまってすまなかった」

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感想 13

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みんなの感想(13件)

虎太郎
2023.11.12 虎太郎

面白かったです( ゚Д゚)ゞ公爵良いです‼️
メロメロになる所見たいです。続き楽しみです。待ってます(*´~`*)

解除
ここなっつ
2023.02.23 ここなっつ

最高のお話だ!!!どタイプ!!!
続き楽しみです!!
お体に気をつけてください!!

解除
Καzυ
2021.12.06 Καzυ

続き楽しみにしてます。

解除

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