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その後3
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公爵の部屋は少し薄暗くていつもと様子が違ってみえた。ソファに座りゆっくりと辺りを見渡す。
(俺の心が沈んでいるからそう見えるのか?)
パーティーで羨望の眼差しを浴び、女性陣の視線を独り占めにしていた煌びやかな公爵。
俺の姿を目にするなり、険しい冷ややかな視線を向けてきた公爵。
(前に俺を愛すると言ってくれていたけれど、あの時の公爵の姿は幻だったのかもしれない…
俺は公爵と気持ちが通じあえたと思っていたけれど。
いや、あの時点では公爵は俺のことを愛しく思ってくれていたはず…そう信じたい。
きっとあの後で、運命的な出会いをしたんだろう。公爵ほどの人だから、お相手もよほど素敵な女性なんだろう)
公爵の横に並ぶ女性の姿を想像すると、心に棘が刺さり胸がきゅっと締め付けられるような気分になる。
(きっと今から公爵は大切な女性の存在を俺に伝えてくるんだ。俺は義理の息子として、穏やかな気持ちで公爵の愛する人を受け入れることが出来るだろうか…
俺は…耐えられないかもしれない…いつの間にこんなに公爵のことが好きになっていたんだろう…
辛いけど…公爵には幸せになって欲しい…
俺は素直に身を引こう…)
俺は込み上げてくる狂おしい感情を堪え、唇を噛み締めた。
「サミュエル…。君は私に気を遣って、私のことを慕っていると言ってくれたが…私は君の本当の気持ちが聞きたい。本音を包み隠さず教えてくれないか」
隣に座る公爵は沈痛な面持ちで、暗く沈んだ声を苦しげに吐いた。
(えっ?俺の本当の気持ち?どう言うこと?
どうしてこんなことを僕に聞いてくるんだ?
しかもそんな辛そうな顔をして…
俺は馬車の中で本当の気持ちを伝えたのに…
もしかして、公爵は俺の気持ちが迷惑で、俺に公爵のことを諦めさせようとしているのか?
俺の口から公爵へのこの想いを否定させたいのだろうか…
俺が公爵を勝手に慕うことすら迷惑なんだろうか)
「旦那様…」
言葉を紡ぐことができず、鼻の奥がツンと痛む。溢れそうになる涙を目を瞑り堪えるが、不甲斐ない涙が目の淵から一筋落ちる。
「サミュエル…泣くほど私のことが嫌いなのかい…」
公爵は悲痛な表情で俺の目元に伸ばしてきた指を止めた。その指を丸めて拳にすると、血管が浮き出るほど強く握りしめている。
「……………………好きです…」
何度もかぶりを振る。嗚咽が込み上げてきて俺は鼻を啜る。喉から絞り出すように話すが、掠れて言葉にならない。
(この世界で初めて俺に優しさを向けてくれた人。
誰よりも美しく作り物めいた精巧な美貌を持ちながらも、自分の容貌に無頓着な人。
温度を感じさせない人形のような冷たい表情をしながらも、心の中は温かくてさりげない優しさに溢れた人。
他人に興味がないように見えて、寂しがりやで実は誰よりも情が深いこの人はどこか俺と似てて…
いつの間にか大切な存在になっていた)
込み上げてくる熱い想いで瞳が潤み、視界が滲む。
前世も含めて、これほどまでに他人に思い入れをしたのは初めてだった。
(ただの好意じゃない。俺はこの人を愛しているんだ)
「サミュエル…私は…君に出会うまで他人に心を動かすことなど一度もなかった。何事にも興味を抱かず、ただ与えられた人生を生きる屍のような存在だった。
私は君と出会えて初めて血の通った人間になったんだ。
私は…人を愛するということを初めて知ったんだ」
公爵の声は掠れて甘く俺は気持ちが溢れている。
俺を見つめる空色の瞳には潤んだ光が宿っている。
(公爵が俺のことを愛して…?
もしかして俺と同じ気持ちでいる?)
「私は…でも…男で…何の力もなくて…旦那様には…」
俺の目の前には非の打ち所がない公爵の姿があった。
神々しいほどの美貌に、聡明で公爵としても有能、心がないと言われていたけれど今では感情を表に出すようになってきた。
(いや…こんな完璧な公爵に俺は相応しくない。
公爵が俺のことを好きだなんて、俺はなんて自信過剰なんだ…恥ずかしい…
公爵はきっとアマーリエに痛めつけられた俺に同情しているだけなんだ)
劣等感と羞恥心が入り混じった複雑なマイナス感情に頭の中が支配され、自虐的になった俺は淋しく微笑んだ。
「サミュエル…………そんなに辛そうな顔をしないでおくれ。君が嫌なら私はこの気持ちを押し付けたりしない。
君があのムカつく宰相の息子と交際すると言うなら、認めたくはないが…二人の仲を反対したりしない。
アマーリエの卑劣な行いを止められなかった私に、君の幸せを阻害する権利はない。
私は君の幸せを心から祈っている。
私は君を愛している」
公爵のしなやかな指が俺の頬を愛おしそうに撫でる。
俺が顔をあげると、公爵の綺麗な顔が近づいてきた。
息遣いが聞こえるほどすぐ近くに公爵の顔がある。
俺の胸が轟くように踊り、鼓動が激しく波打つ。顔が紅潮し、耳がやたらと熱くなってきた。
(嬉しい…公爵も俺のことを愛しているんだ。
俺と同じように思ってくれているんた)
「だ、旦那様、私も旦那様をお慕いしています」
公爵の端正な顔が近づいてきて、瞳をそっと閉じると、唇に柔らかな唇がふわりと重なった。
(俺、公爵とキスをしているんだ…
もうだめだ…心臓が胸から飛び出てしまいそう…)
(俺の心が沈んでいるからそう見えるのか?)
パーティーで羨望の眼差しを浴び、女性陣の視線を独り占めにしていた煌びやかな公爵。
俺の姿を目にするなり、険しい冷ややかな視線を向けてきた公爵。
(前に俺を愛すると言ってくれていたけれど、あの時の公爵の姿は幻だったのかもしれない…
俺は公爵と気持ちが通じあえたと思っていたけれど。
いや、あの時点では公爵は俺のことを愛しく思ってくれていたはず…そう信じたい。
きっとあの後で、運命的な出会いをしたんだろう。公爵ほどの人だから、お相手もよほど素敵な女性なんだろう)
公爵の横に並ぶ女性の姿を想像すると、心に棘が刺さり胸がきゅっと締め付けられるような気分になる。
(きっと今から公爵は大切な女性の存在を俺に伝えてくるんだ。俺は義理の息子として、穏やかな気持ちで公爵の愛する人を受け入れることが出来るだろうか…
俺は…耐えられないかもしれない…いつの間にこんなに公爵のことが好きになっていたんだろう…
辛いけど…公爵には幸せになって欲しい…
俺は素直に身を引こう…)
俺は込み上げてくる狂おしい感情を堪え、唇を噛み締めた。
「サミュエル…。君は私に気を遣って、私のことを慕っていると言ってくれたが…私は君の本当の気持ちが聞きたい。本音を包み隠さず教えてくれないか」
隣に座る公爵は沈痛な面持ちで、暗く沈んだ声を苦しげに吐いた。
(えっ?俺の本当の気持ち?どう言うこと?
どうしてこんなことを僕に聞いてくるんだ?
しかもそんな辛そうな顔をして…
俺は馬車の中で本当の気持ちを伝えたのに…
もしかして、公爵は俺の気持ちが迷惑で、俺に公爵のことを諦めさせようとしているのか?
俺の口から公爵へのこの想いを否定させたいのだろうか…
俺が公爵を勝手に慕うことすら迷惑なんだろうか)
「旦那様…」
言葉を紡ぐことができず、鼻の奥がツンと痛む。溢れそうになる涙を目を瞑り堪えるが、不甲斐ない涙が目の淵から一筋落ちる。
「サミュエル…泣くほど私のことが嫌いなのかい…」
公爵は悲痛な表情で俺の目元に伸ばしてきた指を止めた。その指を丸めて拳にすると、血管が浮き出るほど強く握りしめている。
「……………………好きです…」
何度もかぶりを振る。嗚咽が込み上げてきて俺は鼻を啜る。喉から絞り出すように話すが、掠れて言葉にならない。
(この世界で初めて俺に優しさを向けてくれた人。
誰よりも美しく作り物めいた精巧な美貌を持ちながらも、自分の容貌に無頓着な人。
温度を感じさせない人形のような冷たい表情をしながらも、心の中は温かくてさりげない優しさに溢れた人。
他人に興味がないように見えて、寂しがりやで実は誰よりも情が深いこの人はどこか俺と似てて…
いつの間にか大切な存在になっていた)
込み上げてくる熱い想いで瞳が潤み、視界が滲む。
前世も含めて、これほどまでに他人に思い入れをしたのは初めてだった。
(ただの好意じゃない。俺はこの人を愛しているんだ)
「サミュエル…私は…君に出会うまで他人に心を動かすことなど一度もなかった。何事にも興味を抱かず、ただ与えられた人生を生きる屍のような存在だった。
私は君と出会えて初めて血の通った人間になったんだ。
私は…人を愛するということを初めて知ったんだ」
公爵の声は掠れて甘く俺は気持ちが溢れている。
俺を見つめる空色の瞳には潤んだ光が宿っている。
(公爵が俺のことを愛して…?
もしかして俺と同じ気持ちでいる?)
「私は…でも…男で…何の力もなくて…旦那様には…」
俺の目の前には非の打ち所がない公爵の姿があった。
神々しいほどの美貌に、聡明で公爵としても有能、心がないと言われていたけれど今では感情を表に出すようになってきた。
(いや…こんな完璧な公爵に俺は相応しくない。
公爵が俺のことを好きだなんて、俺はなんて自信過剰なんだ…恥ずかしい…
公爵はきっとアマーリエに痛めつけられた俺に同情しているだけなんだ)
劣等感と羞恥心が入り混じった複雑なマイナス感情に頭の中が支配され、自虐的になった俺は淋しく微笑んだ。
「サミュエル…………そんなに辛そうな顔をしないでおくれ。君が嫌なら私はこの気持ちを押し付けたりしない。
君があのムカつく宰相の息子と交際すると言うなら、認めたくはないが…二人の仲を反対したりしない。
アマーリエの卑劣な行いを止められなかった私に、君の幸せを阻害する権利はない。
私は君の幸せを心から祈っている。
私は君を愛している」
公爵のしなやかな指が俺の頬を愛おしそうに撫でる。
俺が顔をあげると、公爵の綺麗な顔が近づいてきた。
息遣いが聞こえるほどすぐ近くに公爵の顔がある。
俺の胸が轟くように踊り、鼓動が激しく波打つ。顔が紅潮し、耳がやたらと熱くなってきた。
(嬉しい…公爵も俺のことを愛しているんだ。
俺と同じように思ってくれているんた)
「だ、旦那様、私も旦那様をお慕いしています」
公爵の端正な顔が近づいてきて、瞳をそっと閉じると、唇に柔らかな唇がふわりと重なった。
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もうだめだ…心臓が胸から飛び出てしまいそう…)
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