超ショートストーリー または、随筆など

いかめしホイホイ

文字の大きさ
138 / 152

おじさんとウスイロヒョウモンモドキ

しおりを挟む
 むかしむかし、ある山奥に、心のやさしいおじいさんが住んでいました。おじいさんは、星を見るのが好きでした。ですから、毎晩、星空を見ながらお茶を飲んだり、だんごを食べたりしていました。
 ある日、おじいさんの家に一匹のチョウが迷いこみました。
「おやおや、ずいぶん素敵なチョウが迷いこんできたね」
 おじいさんは言いました。
「素敵だなんて、ありがとう。おじいさんも素敵よ」
 チョウは言いました。
「アゲハチョウではないようだし、何て名前のチョウなんだい?」
「ウスイロヒョウモンモドキって言うの」
「素敵な名前のチョウだね」
「ありがとう」
 この日以来、おじいさんとこのチョウは、たいへん仲良くなりました。そして、いつも、いっしょにいるようになりました。
 やがて、このチョウの他にも、たくさんのウスイロヒョウモンモドキが、おじいさんの家に集まってくるようになりました。 
「やさしくて、素敵なおじいさんがいる」
 ウスイロヒョウモンモドキの間で有名な話になっていたのです。
 おじいさんとチョウたちは、朝にいっしょにごはんを食べたり、昼にいっしょにひなたぼっこをしたり、夜にいっしょに星を見たりしました。おじいさんは、幸せでした。たくさんのチョウの友だちができたからです。でも、その幸せは、長くつづくものではありませんでした。
 ある時、おじいさんは、重い病気になってしまったのです。いのちにかかわる病気でした。そして、おじいさんは、寝たきりになってしまったのです。
「どうしょう。おじいさんが死んでしまったら。つらすぎるわ」
 あるチョウは、もう泣いていました。
「そんな悲しいことを言うなよ。おじいさんは、死んだりしないよ」
 あるチョウは、涙をこらえていました。
 チョウたちは、みんな暗い顔をしていました。そんななか、一匹のチョウが言いました。
「山のふもとのお地蔵さまに、おじいさんを助けてくれるように頼んでくるよ」
 そして、すぐさま、山のふもとに飛びたっていったのです。
「きっと、お地蔵さまだったら助けてくれるよ」
 残ったチョウたちは、希望をもちました。
 さて、お地蔵さまのもとに飛びたったチョウは、いつもなら一日かかるところ、数時間でたどりつきました。それだけ、おじいさんのことを思っていたのでした。
 すぐにチョウは、お地蔵さまに言いました。
「お地蔵さま、山奥にいるおじいさんが、死にそうなんです。どうか、おじいさんのいのちを助けてください。」
 それを聞いたお地蔵さまは、こう言ったのです。
「おじいさんは、星を見たら、自分の力で元気をとりもどすじゃろう」
 チョウは、悲しくなりました。このところ、くもりの日がつづいて、星が見れないからです。今日も、くもっていて、星が見れないからです。
「お地蔵さま、今日は、くもっていて星を見ることができません。他の方法はありませんか?」
「他に方法はない。おじいさんを助けたければ、星を見せるのじゃ」
 深い悲しみのなか、チョウは思いつきました。
「僕たち、ウスイロヒョウモンモドキが、夜空に上がって、星のように見えれば良いのではないでしょうか? いわば、チョウの星です。それで、おじいさんは助かりませんか?」
 お地蔵さまは、にっこり笑って言いました。
「それでも良い。おじいさんは、チョウの星を見ても元気になるじゃろう」
 チョウは、うれしくなりました。
「おじいさんは、助かるんだ。死ななくてすむんだ。すぐにもどって、みんなでチョウの星になろう。みんなの力で、おじいさんを助けるんだ」
 そして、すぐにおじいさんの家にもどり言いました。
「みんな、夜空に上がって、チョウの星になるんだ。それをおじいさんに見せれば、おじいさんは、助かるよ」
 チョウたちは、それを聞いても泣くだけでした。誰も、空に上がろうとしませんでした。
 そして、ふいに一匹のチョウが言いました。
「おじいさんは、もう死んじゃったんだ」
 
おじいさんは、やさしいチョウたちに悲しんでもらえて、とても幸せでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...