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いかめしホイホイ

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悪魔と砂漠の王子

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あるところに、フェンリル王国という国がありました。その国の王さまは、たいへん良い王さまで、人々からしたわれていました。そして、フェンリル王国は、緑が多く、たいへん豊かで平和でした。人々は、いつも笑顔で幸せでした。
フェンリル王国は、王さまや、その国の人々が、まじめで良い人たちばかりなために、どんどん発展していきました。そして、いつしか、世界一の大国になったのでした。
そんなフェンリル王国が、栄えていることを、おもしろく思わない者がいました。その者は、悪魔の王、ベルゼブブでした。
ある時、ベルゼブブは、こう言いました。
「誰か、フェンリル王国を滅ぼす者はいないか?」
それに対して、女悪魔のジャヒーが手をあげました。
「私が、フェンリル王国を滅ぼしましょう」
こうして、女悪魔のジャヒーが、フェンリル王国を滅ぼすことになったのです。

女悪魔のジャヒーは、とても恐ろしい姿をしていました。つめは、するどくとがり、口にはキバがはえていました。背中には、黒いつばさがあり、頭には、つのが二本、はえていました。一見、女だということがわからないような姿でしたが、髪は長く、たしかに女の悪魔でした。
ジャヒーは、すぐにフェンリル王国を滅しにかかりました。
まずはじめに、フェンリル王国の東西に流れている川の水を、血の水にしました。この川は、もともと、生活用水として使われていました。それが、真っ赤になってしまい、においもくさかったために、みな、川の水を使わなくなりました。人々は、悲しみ、苦しみました。飲み水として、川の水が使えません。料理のために、川の水が使えません。お風呂に入るのに、川の水が使えません。多くの人々は、言いました。
「もう、ここでは、生きていけない」
そして、フェンリル王国から出ていきました。
次に、ジャヒーは、フェンリル王国に、イナゴの大群をおくりました。イナゴは、フェンリル王国の田んぼや、畑の作物を食べつくしました。それだけではありません。なんと、イナゴは、人間の服まで食べだしたのでした。多くの人々は、言いました。
「もう、ここでは、生きていけない」
そして、フェンリル王国から出ていきました。
次に、ジャヒーは、フェンリル王国を暗闇でおおいつくしました。真っ黒な雲が、フェンリル王国をつつみ、光は、いっさいなくなりました。人々は、朝なのか、夜なのかが、わからなくなりました。昼でも、光がないため、生活をするのが、たいへんで、多くの人々は、言いました。
「もう、ここでは、生きていけない」
そして、フェンリル王国から出ていきました。

気がつけば、フェンリル王国には、王さまとフェア王子の二人だけになってしまいました。他の人々は、みな、フェンリル王国から、逃げてしまいました。王さまと、フェア王子は、悲しみました。そして、さらに悲しいことがおこりました。なんと、王さまが病気で、死んでしまったのです。王さまの最後の言葉は、次のとおりでした。
「フェア王子、どうか、私のかわりに、フェンリル王国をふたたび、平和で、豊かで、人々の笑顔があふれる国にしておくれ」
フェア王子は、その言葉を聞いて、すぐさま言いました。
「まかせて、お父さん」
こうして、フェンリル王国にいる者は、フェア王子の、たった一人だけになってしまったのです。

ジャヒーは、フェア王子が、ふたたびフェンリル王国に人々を呼びもどそうとしていることを知って、大笑いしました。
「バカなフェア王子だ。フェンリル王国が、ふたたび栄えることなんて、ありえないわ。どれ、フェア王子の心をくだくために、フェンリル王国を完全に消してしまおう」
ジャヒーは、最後に、フェンリル王国にハリケーンをおくりました。ハリケーンは、一ヶ月ものあいだ、フェンリル王国にとどまりました。そして、フェンリル王国は、完全に消えてしまいました。フェンリル王国があった場所は、砂漠になってしまったのです。もう、家は、ありません。もう、花も草も、ありません。川すら、なくなってしまいました。あるのは、砂だけでした。

フェア王子は、悲しみました。顔をふせて、涙をこぼしました。
「どうして、こんなことになってしまったのだろう? どうして、川の水は、血の水になって、しまったのだろう? どうして、イナゴの大群が、王国に来たのだろう? どうして、暗闇になったのだろう? どうして、お父さんは、死んでしまったのだろう? どうして、ハリケーンがきて、王国の家は、すべてなくなってしまったのだろう?」
考えてもしかたがありませんでした。もう、すぎてしまったことなのです。
フェア王子は、すぐに顔を上げました。そして、涙をぬぐいました。悲しんでばかりいることはできません。父と約束したのです。フェンリル王国を復興させることを、約束したのです。
「フェンリル王国は、砂漠の国になってしまった。まず、元の国にもどすために、砂漠に花をうえなくちゃ」
フェア王子は、砂漠に花をうえはじめました。雨の日も、風が強い日も、太陽のひざしが暑い日も、花をうえました。たった一人で、花をうえました。
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