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2章
記憶と思い出
しおりを挟むハーブの香りがする紅茶、美味しそうなクッキー、この屋敷で出されただけでとても高価なものを出された錯覚に囚われた。
「真理亜様とご主人様が仲直りされて僕も嬉しいです。」
ウト君は慣れた手つきで高そうなカップに紅茶を注いで、私に出したのと同じようにカルマに。
「……仲直りというか何というか……」
「……まだ怒っているのか?」
「いや、お、怒ってるわけないです……」
良かったと笑う彼はやはり美しい。 そんな私たちの様子をみて嬉しそうに笑ったウト君はペコリと頭を下げると
「ごめんなさい。 人の姿にいることに疲れちゃって、少し休みます。」
煙に包まれコウモリになり、私が言葉を返す前にバタバタ何処かに行ってしまった。
慣れたようで慣れない光景……。
「……ウト君大丈夫かな……」
「大丈夫だ。 あいつは人が苦手だからな。 マリアにしか心を開いてなかった……殺されそうになったことがあるからな。 だから真理亜の家に行くことで少し疲れたんだろう。」
「こ、殺されそうになったの? 」
穏やかなティータイムに似合わない単語に思わず目を見開く。 で、でも何百年も前だと戦争なんか普通にあった時代だから自然なことなのかな? 今聞くとどうしても想像つかないけれど。
「……人と言うのは普通と違うものを酷く嫌う。 例え害が無くてもな……」
カルマの言葉が胸に刺さった。 確かにそうかもしれないと納得してしまったから。
「……そんな顔するな。 お前は……マリアは別だ……」
ウト君に酷いことをした”人”であることに、少し罪悪感を感じたけれどそれに気付いたように彼がそう言って笑う。
「……マリアは……出会った時からおかしなやつだったからな……」
懐かしそうにそして愛しそうに話を始めるカルマに、私の胸がドキッと音を立てた。
ご先祖様の話なのに、私がドキドキしてどうするの。 なんて思ったけれど、止まらない。
「……貴方も十分おかしかったくせに…」
クスクスと笑って自然に出た言葉にハッとする。
記憶はないのにそんなことを言ってしまった自分に動揺すらした。
私の中に……確実にマリアさんがいる……ふとした瞬間出てくる……
「…… 本当ならお前は俺のことを思い出せなくてもおかしくないからな。 なのに生まれ変わって少しずつ記憶が戻っていることにホッとしてる。」
「え、あ、そうなんだ……」
「髪の色も目の色も話し方も性格も少し違うけれど、やっぱり真理亜はマリアで、そんなお前のことを再度愛しく思うよ。」
率直な彼のセリフにカァアアと顔が熱くなって行く。 こんなにストレートな言葉を向けられたことは、真理亜になってからはない。
「……私とカルマの思い出とか……聞きたいんだけど……そしたらもっと思い出せるかもっ!」
早く思い出したい。
そしてもっと貴方と思い出を語りたい。そんな気持ちが湧いてきてそう質問したけれど、カルマは悲しそうな顔でゆっくりと首を振った。
「……話せないことが多いと言っただろ? その上その理由さえも言ってやれない。全て話せれば楽なのにな……」
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