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4話 使命
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「あああぁ……なんてことだ……なんてことなんだ!……ど、どうして!!よりによってアイツなんだ!どうしてだよ!」
俺は狭いアパートで、頭を掻きむしりながら、ぐるぐる回って自分の運命を呪っていた。あまりのタイミングの悪さに気持ちが抑えられなくなって、つい声が出してしまう。
やっぱり藤田志穂の旦那は俺が知っている男で間違いではなかった。
藤田志穂を観察するのをやめて、俺は今日一日、志穂の旦那のことを調べていた。
俺の間違いであって欲しかった。あの男の顔が瓜二つの顔であればよかったが、そうではなかった。
藤田志穂の旦那である
あの男の名は藤田京平。
俺が昔に追っていた汚職事件の黒幕とされる市議会議員の藤田京平だった。
汚職の決定的な証拠を抑えることが出来ずに記事まで辿り着けなかった。そうこうしているうちに俺は、持病が悪化して退職を余儀なくされ、スクープどころではなくなってしまった。
そんな苦い思い出とともに沸々と藤田京平をあと一歩のところで糾弾できなかった当時の悔しさも蘇ってくるようだった。
なんてことだ……と俺は思う。
どうして好きになった女性の旦那が藤田京平なのか。アイツはかなりやばい……俺が追っていたのは汚職事件だけだったが、過去には………
「ああああああっーーー!!!!!」
俺は重大なことを思い出した。
どうしてもっと早く気づくべきだったのか。
藤田京平は前妻を殺した容疑があったことを。
ーーーーーー
落ち着け俺、落ち着け俺……そう自分に言い聞かせると同時に思い出せ俺、思い出せ俺と自分の過去の記憶を探る。
ととととと、とりあえず飯でも食うか……と朝からずっと志穂の旦那が、俺が知っている藤田京平なのかを調べていて朝から何も食べてないことに気づいた。
大手新聞社の新聞記者だった頃、スクープや何か事件が動く時、俺は飯をろくに食べなくなってしまう癖があった。
事件への情熱のせいなのか空腹を感じなくなってしまうのだ。食べている時間が勿体無い。こうしている間も事件は動いてしまうかもしれないのに……と思うと時間を割いて食べることはしなかった。
食べることだけじゃない、寝る間も惜しむようになって慢性的な睡眠不足が続いた。スクープを追いかけている時は興奮して眠れなくなってしまうのだ。
そして体を壊した。俺は自分の生活を反省して、食事はきちんと食べるようになったし、夜は決まった時間に寝るようにした。
再び体を壊さないために自分で決めていたルールなのに、藤田志穂との出会いと藤田京平との再会によって俺はまた飯を食うことを忘れてしまった。
ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!
今度は体を壊すわけにはいかない。
俺はカップラーメンを食べて持病の薬をきちんと飲んでから、炭酸飲料が入ったペットボトルに口をつけてゴクゴク飲み、
「ゲッッップーーー!!」
と豪快なゲップをして、藤田京平から志穂を守らないといけないとひとりボロアパートの家の中で心に誓った。
志穂の前にも藤田京平には妻がいた。
藤田京平のその前妻はキッチンの包丁を使って自分で腹を刺して死んだのだ。
最終的に前妻は自殺と断定されたが、夫である藤田京平が刺したのではないか?という容疑が同時あったはずだ。
俺が藤田京平の汚職事件を追っていた時は、前妻が自殺したあとだったため藤田京平は単身者だった。
藤田京平の妻殺害容疑があったことも当時の俺は当然、知っていたが、警察が自殺と断定したことを掘り返してまで調べる気力はなく、それよりも目の前の汚職事件に夢中になっていたので、あまり興味を惹かれなかった経緯がある。
今、この時、この瞬間にタイムリープしたいと俺はせつに願った。そしてそれがもし叶ったら「なんで!もっとちゃんと調べなかったんだ!馬鹿野郎!!!」と言って昔の俺を殴り飛ばし、そのあとで自殺と断定した警察に聞き込みに行っただろう。
本当に自殺だったのか?!
藤田京平は本当に無実なのか?!
と問い詰めたい。それが出来ないのがもどかしい。今もきちんとしたところの新聞記者だったら同時の担当刑事くらいは教えてもらえて、直接、聞き込みが出来たかもしれない。
でも今の俺じゃダメだ。
なんの実績もないフリーの新聞記者だ。
それでも、そんな俺だけど
俺が守るしかないのかもしれない。
ーーー藤田志穂をーーー
志穂は知っているのだろうか?前妻が自殺で亡くなっていることを。もしかしたら自殺ではなくて京平が殺害した可能性もあることを。
いや、志穂が京平の過去を知っていても知らなくても……こうして志穂と巡り合ったその先の運命に藤田京平がいたこと………これは俺に志穂を守れという使命なのではないだろうか。
そうだ、こんな偶然があってたまるか。
俺と志穂との運命の出会いは
必然だったに違いない。
俺は惚れた女を守ると決めた。
俺は狭いアパートで、頭を掻きむしりながら、ぐるぐる回って自分の運命を呪っていた。あまりのタイミングの悪さに気持ちが抑えられなくなって、つい声が出してしまう。
やっぱり藤田志穂の旦那は俺が知っている男で間違いではなかった。
藤田志穂を観察するのをやめて、俺は今日一日、志穂の旦那のことを調べていた。
俺の間違いであって欲しかった。あの男の顔が瓜二つの顔であればよかったが、そうではなかった。
藤田志穂の旦那である
あの男の名は藤田京平。
俺が昔に追っていた汚職事件の黒幕とされる市議会議員の藤田京平だった。
汚職の決定的な証拠を抑えることが出来ずに記事まで辿り着けなかった。そうこうしているうちに俺は、持病が悪化して退職を余儀なくされ、スクープどころではなくなってしまった。
そんな苦い思い出とともに沸々と藤田京平をあと一歩のところで糾弾できなかった当時の悔しさも蘇ってくるようだった。
なんてことだ……と俺は思う。
どうして好きになった女性の旦那が藤田京平なのか。アイツはかなりやばい……俺が追っていたのは汚職事件だけだったが、過去には………
「ああああああっーーー!!!!!」
俺は重大なことを思い出した。
どうしてもっと早く気づくべきだったのか。
藤田京平は前妻を殺した容疑があったことを。
ーーーーーー
落ち着け俺、落ち着け俺……そう自分に言い聞かせると同時に思い出せ俺、思い出せ俺と自分の過去の記憶を探る。
ととととと、とりあえず飯でも食うか……と朝からずっと志穂の旦那が、俺が知っている藤田京平なのかを調べていて朝から何も食べてないことに気づいた。
大手新聞社の新聞記者だった頃、スクープや何か事件が動く時、俺は飯をろくに食べなくなってしまう癖があった。
事件への情熱のせいなのか空腹を感じなくなってしまうのだ。食べている時間が勿体無い。こうしている間も事件は動いてしまうかもしれないのに……と思うと時間を割いて食べることはしなかった。
食べることだけじゃない、寝る間も惜しむようになって慢性的な睡眠不足が続いた。スクープを追いかけている時は興奮して眠れなくなってしまうのだ。
そして体を壊した。俺は自分の生活を反省して、食事はきちんと食べるようになったし、夜は決まった時間に寝るようにした。
再び体を壊さないために自分で決めていたルールなのに、藤田志穂との出会いと藤田京平との再会によって俺はまた飯を食うことを忘れてしまった。
ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!
今度は体を壊すわけにはいかない。
俺はカップラーメンを食べて持病の薬をきちんと飲んでから、炭酸飲料が入ったペットボトルに口をつけてゴクゴク飲み、
「ゲッッップーーー!!」
と豪快なゲップをして、藤田京平から志穂を守らないといけないとひとりボロアパートの家の中で心に誓った。
志穂の前にも藤田京平には妻がいた。
藤田京平のその前妻はキッチンの包丁を使って自分で腹を刺して死んだのだ。
最終的に前妻は自殺と断定されたが、夫である藤田京平が刺したのではないか?という容疑が同時あったはずだ。
俺が藤田京平の汚職事件を追っていた時は、前妻が自殺したあとだったため藤田京平は単身者だった。
藤田京平の妻殺害容疑があったことも当時の俺は当然、知っていたが、警察が自殺と断定したことを掘り返してまで調べる気力はなく、それよりも目の前の汚職事件に夢中になっていたので、あまり興味を惹かれなかった経緯がある。
今、この時、この瞬間にタイムリープしたいと俺はせつに願った。そしてそれがもし叶ったら「なんで!もっとちゃんと調べなかったんだ!馬鹿野郎!!!」と言って昔の俺を殴り飛ばし、そのあとで自殺と断定した警察に聞き込みに行っただろう。
本当に自殺だったのか?!
藤田京平は本当に無実なのか?!
と問い詰めたい。それが出来ないのがもどかしい。今もきちんとしたところの新聞記者だったら同時の担当刑事くらいは教えてもらえて、直接、聞き込みが出来たかもしれない。
でも今の俺じゃダメだ。
なんの実績もないフリーの新聞記者だ。
それでも、そんな俺だけど
俺が守るしかないのかもしれない。
ーーー藤田志穂をーーー
志穂は知っているのだろうか?前妻が自殺で亡くなっていることを。もしかしたら自殺ではなくて京平が殺害した可能性もあることを。
いや、志穂が京平の過去を知っていても知らなくても……こうして志穂と巡り合ったその先の運命に藤田京平がいたこと………これは俺に志穂を守れという使命なのではないだろうか。
そうだ、こんな偶然があってたまるか。
俺と志穂との運命の出会いは
必然だったに違いない。
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