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10話 報告
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「お?岡ちゃん?目が今日も怖いよ?あ!もしかして話す気になったんでしょ?掴んだネタについて」
俺の顔を見てすぐに、俺がネタを調べ上げてきたと見抜いた伊丹は、そう話しかけてきた。
俺は自分で掴んだネタを伊丹と、その横で俺のことを冷たい眼差しで見る秘書の清水に、全てを話した。
昔、俺が追いかけていた汚職事件ーーーその首謀者である市議会議員、藤田京平との久しぶりの再会を果たしたこと。
今もヤツは懲りずに民間企業からの賄賂を受け取っている可能性があること。そしてそれよりもっと昔には自殺と断定された前妻の殺害容疑もあったこと、今、再婚した藤田志穂の安否が安全とは思えないこと。
伊丹は俺の話を最後までじっくり聞いてくれた。そして神妙な面持ちで
「岡ちゃん……話してくれてありがとう。それはすごいネタだね……市議会議員の藤田京平か……そうか、そんなことが……よし!みんなで一緒にどうにかしないとね!」
伊丹がそう言ってくれたことで俺は安堵した。本当は俺一人でどうにかアイツを捕まえたいが、一人でやれることは少ない。
せめてもう一人、いや二人、カメラマンと交代でアイツのの議員事務所を張れる新聞記者を手配して欲しいかった。
そう思った矢先、
「岡ちゃん、悪いんだけど、ちょっとだけ席を外してくれる?すぐ呼ぶからさ」
「え?い、今ですか?」
「うん、今。岡ちゃんのスクープのことで職員と打ち合わせするからさ」
「は、はぁ」
俺は少し不安になりながら、社長室を出て席を外した。
外で待たされている間に、少しの不安がやがて、ジリジリとした心を抉るような緊張を生んだ。
藤田京平のスクープで、他の職員と打ち合わせするのは分かる。それは分かる。むしろ他の社員との打合せがあってこそ、新しい張り込み取材班の誕生に関わってくると思うから、打ち合わせは必要だ。
でもなんで俺は、その打ち合わせから外されたんだ?
俺がスクープを持ってきたのに、もしかしてそれを横取りしようと画策しているんじゃないか?いやいや、伊丹に限ってそんな酷い裏切りはさすがにしないだろう……
ではなんだ?どうして俺は席を席を外されたんだ?
不安が緊張を生み、
俺を外で待たせる時間は、
俺に疑心暗鬼をもたらした。
何がどうなっているんだ?
俺を呼ぶのはまだか?おい、伊丹っ!!
と思った時、秘書の清水が満遍の微笑みで「岡本さん、お待たせしました。中にどうぞ」と言って手招きした。
俺は嫌な予感がした。
いつも俺のことをゴミのように見ている清水の視線が……ついさっき、ネタを打ち明けるまで、いつもと変わらない冷たい視線を向けていた清水が……
どこか同情めいて俺を見ている?
俺に微笑んだことなどなかった清水が、俺を憐れむように見てきた。
雲行きが怪しくなった。
きっと俺は何かの判断を間違えた。
そう思いながらも、伊丹の話を聞こうと俺は覚悟を決めて、清水に手招きされた社長室に入る。
「岡ちゃん、ごめんだけど。すぐには僕も動けなくてね……岡ちゃんのために今日は職員を手配できそうにないんだ……また来週に来てもらえるかな?来週にはきちんと岡ちゃんに協力してくれる職員を用意しとくよ。いいかい?来週にもう一度、必ず来てね?」
「は、はいっ!また、ら来週にき、来ます!」
「お、岡ちゃん?」
「し、失礼します!」
「岡ちゃん!絶対、来週だよ?いいね?それまで危ないから一人で動いちゃダメだよ?いいね?」
逃げるようにバタバタと俺は伊丹の前から立ち去った。
何かがおかしい。何かが変だ。
俺は動悸がした。胸が苦しかった。
伊丹は言った。危ないからと……何が危なくて……なんで一人で動いてはいけないのか?
伊丹はずっと俺のことを心配してくれていると思っていた。でも本当にそうだったんだろうか?
伊丹は俺がネタを掴んだかどうかを毎回、確認していたではないか。
俺は一つの結論に辿り着く。
限りなく奇跡的な確率のはずなのに、どうしても俺の直感がそうだ。きっとそうだったんだ!と警告のサイレンを脳内に響かせる。
俺が俺自身が守ろうとする。直感に基づいた結論。
伊丹は藤田京平と繋がっているのではないか?というものだった。もちろん秘書の清水恵もそうだ。
伊丹は俺のことを心配するフリをして、昔、俺が追いかけていた市議会議員の藤田京平のネタを掴んでくることを探っていたんじゃないか?
伊丹はすでに藤田京平に懐柔されていて、昔、自分を追い詰めた新聞記者がいたことをーーーーつまりは俺の存在を伊丹に伝えていて、何かそいつに動きがあったら教えて欲しいみたいな話になっているのだとしたら?
藤田京平は、再び俺が自分の前に立ちはだかることを危惧していた。その動向を探るための伊丹による定期的な顔合わせだとしたらーーーー
来週、伊丹に会いに行くと
俺はどうなるのだろうか?
俺は背中にぞくっとした悪寒を感じて、ボロアパートに帰宅した。
伊丹と藤田京平はグルかもしれない。いや、グルだと、もう仮定しておこう。藤田京平は俺が汚職事件を追っていることを知ったら、また自分の人生を脅かす新聞記者が正義のヒーロー気取りで、現れたと知ったらーーーーーー
だから、俺は危ないのではないか。
俺の顔を見てすぐに、俺がネタを調べ上げてきたと見抜いた伊丹は、そう話しかけてきた。
俺は自分で掴んだネタを伊丹と、その横で俺のことを冷たい眼差しで見る秘書の清水に、全てを話した。
昔、俺が追いかけていた汚職事件ーーーその首謀者である市議会議員、藤田京平との久しぶりの再会を果たしたこと。
今もヤツは懲りずに民間企業からの賄賂を受け取っている可能性があること。そしてそれよりもっと昔には自殺と断定された前妻の殺害容疑もあったこと、今、再婚した藤田志穂の安否が安全とは思えないこと。
伊丹は俺の話を最後までじっくり聞いてくれた。そして神妙な面持ちで
「岡ちゃん……話してくれてありがとう。それはすごいネタだね……市議会議員の藤田京平か……そうか、そんなことが……よし!みんなで一緒にどうにかしないとね!」
伊丹がそう言ってくれたことで俺は安堵した。本当は俺一人でどうにかアイツを捕まえたいが、一人でやれることは少ない。
せめてもう一人、いや二人、カメラマンと交代でアイツのの議員事務所を張れる新聞記者を手配して欲しいかった。
そう思った矢先、
「岡ちゃん、悪いんだけど、ちょっとだけ席を外してくれる?すぐ呼ぶからさ」
「え?い、今ですか?」
「うん、今。岡ちゃんのスクープのことで職員と打ち合わせするからさ」
「は、はぁ」
俺は少し不安になりながら、社長室を出て席を外した。
外で待たされている間に、少しの不安がやがて、ジリジリとした心を抉るような緊張を生んだ。
藤田京平のスクープで、他の職員と打ち合わせするのは分かる。それは分かる。むしろ他の社員との打合せがあってこそ、新しい張り込み取材班の誕生に関わってくると思うから、打ち合わせは必要だ。
でもなんで俺は、その打ち合わせから外されたんだ?
俺がスクープを持ってきたのに、もしかしてそれを横取りしようと画策しているんじゃないか?いやいや、伊丹に限ってそんな酷い裏切りはさすがにしないだろう……
ではなんだ?どうして俺は席を席を外されたんだ?
不安が緊張を生み、
俺を外で待たせる時間は、
俺に疑心暗鬼をもたらした。
何がどうなっているんだ?
俺を呼ぶのはまだか?おい、伊丹っ!!
と思った時、秘書の清水が満遍の微笑みで「岡本さん、お待たせしました。中にどうぞ」と言って手招きした。
俺は嫌な予感がした。
いつも俺のことをゴミのように見ている清水の視線が……ついさっき、ネタを打ち明けるまで、いつもと変わらない冷たい視線を向けていた清水が……
どこか同情めいて俺を見ている?
俺に微笑んだことなどなかった清水が、俺を憐れむように見てきた。
雲行きが怪しくなった。
きっと俺は何かの判断を間違えた。
そう思いながらも、伊丹の話を聞こうと俺は覚悟を決めて、清水に手招きされた社長室に入る。
「岡ちゃん、ごめんだけど。すぐには僕も動けなくてね……岡ちゃんのために今日は職員を手配できそうにないんだ……また来週に来てもらえるかな?来週にはきちんと岡ちゃんに協力してくれる職員を用意しとくよ。いいかい?来週にもう一度、必ず来てね?」
「は、はいっ!また、ら来週にき、来ます!」
「お、岡ちゃん?」
「し、失礼します!」
「岡ちゃん!絶対、来週だよ?いいね?それまで危ないから一人で動いちゃダメだよ?いいね?」
逃げるようにバタバタと俺は伊丹の前から立ち去った。
何かがおかしい。何かが変だ。
俺は動悸がした。胸が苦しかった。
伊丹は言った。危ないからと……何が危なくて……なんで一人で動いてはいけないのか?
伊丹はずっと俺のことを心配してくれていると思っていた。でも本当にそうだったんだろうか?
伊丹は俺がネタを掴んだかどうかを毎回、確認していたではないか。
俺は一つの結論に辿り着く。
限りなく奇跡的な確率のはずなのに、どうしても俺の直感がそうだ。きっとそうだったんだ!と警告のサイレンを脳内に響かせる。
俺が俺自身が守ろうとする。直感に基づいた結論。
伊丹は藤田京平と繋がっているのではないか?というものだった。もちろん秘書の清水恵もそうだ。
伊丹は俺のことを心配するフリをして、昔、俺が追いかけていた市議会議員の藤田京平のネタを掴んでくることを探っていたんじゃないか?
伊丹はすでに藤田京平に懐柔されていて、昔、自分を追い詰めた新聞記者がいたことをーーーーつまりは俺の存在を伊丹に伝えていて、何かそいつに動きがあったら教えて欲しいみたいな話になっているのだとしたら?
藤田京平は、再び俺が自分の前に立ちはだかることを危惧していた。その動向を探るための伊丹による定期的な顔合わせだとしたらーーーー
来週、伊丹に会いに行くと
俺はどうなるのだろうか?
俺は背中にぞくっとした悪寒を感じて、ボロアパートに帰宅した。
伊丹と藤田京平はグルかもしれない。いや、グルだと、もう仮定しておこう。藤田京平は俺が汚職事件を追っていることを知ったら、また自分の人生を脅かす新聞記者が正義のヒーロー気取りで、現れたと知ったらーーーーーー
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