新聞記者の恋

早坂 悠

文字の大きさ
9 / 19

9話 変化

しおりを挟む
 藤田京平の汚職事件と前妻の家庭内暴力のネタを掴んだ翌日、いや、もっと前からか、なんだか俺の周囲が

 藤田京平のことを調べるのに、俺はまた自分の体調を顧みず無理をしてしまったせいだろうか?そういえば、すっかり持病の薬を飲み忘れてしまっている。

 明日は藤田京平の掴んだネタを伊丹に報告するという俺にとって久しぶりの一大イベントが控えているのに、これではダメかもしれない。

 薬は……薬は……いつから飲んでないだろうか?

 俺は居間にあるテーブルの上をガサガサ探してみるが、薬は見当たらなかった。俺は早々に諦めた。別に飲まなくたって死にはしないんだ。もう薬なんて飲まなくていいだろうと俺は思った。

 俺はいつもの朝のルーチン(藤田志穂が朝のゴミ出しに外に出る、そのわずかな時間を固唾を飲んでじっと見続ける)が終わると、

 なんだか落ち着かなくなった。ソワソワしてしまう。狭くて汚い家の中をぐるぐる歩き出す。

「明日は伊丹に報告する……明日は伊丹に報告する……それでみんなで協力して藤田京平の収賄容疑の証拠を探す……明日は……」

 俺は明日の伊丹との顔合わせのために呟きながら、徘徊した。こうしてると少し落ち着く。

ガチャッ!!

 不意に音がなって俺は「ぎゃ!」と飛び跳ねた。隣の小林というちょっと怖い隣人が、自分の家のドアを開けて外出した音だった。

 毎日、この時間に小林青年が外出する音を聞いていたはずなのに、最近、音に敏感になったような気がする。

 何が起きているのか分からない。本当にちょっと疲労がたまっているだけかもしれない。そう思いたいのに、俺の世界を変えているものがもう一つあった。

 それは視線だった。

 俺はここんところずっと
         誰かの視線を感じている。


 部屋の中にいる時、コンビニに買い出しに行って帰る時、誰かの視線を感じてる。

 もしかして……監視されてる????

 俺はブルっと悪寒がした。藤田京平に勘づかれた可能性はないのだろうか?

 明日、早く明日になれ!

 伊丹に早く報告しなくては……俺はそう思いながら部屋の中をそわそわとずっと歩いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/3:『かがみのむこう』の章を追加。2025/12/10の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/2:『へびくび』の章を追加。2025/12/9の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...