天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

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第一章:天上のラストルーム

第25話:二階層攻略①

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 翌朝、矢吹やぶきは七時に起きた。
 本音を言えばもう少し寝ていたかったのだが、遅い時間にログインすると今日も一日パーティプレイになってしまう。
 昨日ログアウトをした時点で二人はまだログインをしていた。ならば遅い時間までプレイしていただろうし、今の時間なら寝ているだろうと考えたのだ。

「寝みぃ……」

 そして早起きしてまでログインをしたいと思っている時点で完全にハマっていると自覚しながら、矢吹はログインしたのだった。

 ※※※※

 場所はアーカイブの入口。
 ここからならすぐにでもバベルに向かえるのでちょうどよかったと思いつつ、念のためにフレンドリストを開いてみる。
 フレンドになった順番で上から表示されるのだが、当然ながらアリーナはログアウトの状態だ。

「それで、アレッサさんとエレナさんは……えっ?」

 まさか、という感情がアルストに流れてきた。
 アルストがログアウトした時間は深夜〇時を回っていた。あの後もプレイしていたならば相当遅い時間までプレイしていたはずなのだが――。

「……ロ、ログインしてる」

 ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
 二人が天上のラストルームにアルストよりもハマってしまい丸一日プレイをしていたか、早起きをしてログインしている可能性だってある。むしろその可能性しか考えられない。

「……ふ、触れないでおこうかな」

 二人がフレンドリストを開けばアルストがログインしていることがバレてしまうものの、自分が気づかなかったと言えば誤魔化せると判断して連絡をしなかった。
 アルストはそのままバベルへと向かい、一人で二階層攻略に挑むことにした。

 ※※※※

 一階層のボスフロアをそのまま通過して二階層へと上がり通路を突き進んでいく。
 昨日のうちにパーティでモンスターとやり合えたことはアルストにとってプラスに働いていた。
 特にメイジシャンを相手にした時はソロで対峙した時の魔法攻撃の対処方法をイメージできたのがよかった。
 軌道から外れるように動き回り、ある程度近づければ一気に加速して一撃で仕留める。

 トレントと対峙した時は分散されていた蔦による攻撃がアルストに集約されてしまうので多少のダメージを負ったものの、パワーボムで瞬殺することにより無難に進むことができた。
 エアデビルやマッスルベアーも戦い方さえ分かれば苦戦することはないので、多少時間は掛かったがボスフロアの前に到着した。
 道中でレベル13に上がったアルストはステイタスの振り分けを行う。

 アルスト:レベル13
 腕力:37(+17)
 耐久力:32(+16)
 魔力:27(0)
 俊敏:32(+11)
 器用:22(0)
 魅了:22(0)
 知恵:22(0)
 体力:32(+9)
 運:20(0)
 DP:0

 正直なところ、運に振り分けることも考えたのだが今回は諦めた。
 一階層の時はアリーナから問題ないだろうという判断を受けていたのでやってみたのだが、苦戦が予想される二階層のボス戦を前に不確定要素の高い運にステイタスを振り分けるのはダメだと判断したのだ。
 一度深呼吸をしたアルストは、大きな扉に両手を当てて押し開けた。

 ※※※※

 レアボスモンスターであれば通常フロアとは異なる風景に変わるのだろうが、今回は同じような古い遺跡のままだった。
 通常のボスモンスターだと判断したアルストはホッとしたのと同時に少しのがっかり感を味わっている。
 上手くいけばそのまま倒すことも可能なのだが、DPデスペナルティの救済処置が残っている間にもう一度レアボスモンスターに遭遇したいとも思っていた。

「まあ、そう上手くはいかないよな」

 一度レアボスモンスターに遭遇したためにまた会えるのではと思ってしまったが、本来なら出会えることの方が非常に稀な存在なのだ。
 もう一度会えたらラッキーくらいに思っていた方がいいのかもしれないと気持ちを切り替え、ボスフロアの中央に佇んでいるボスモンスターを見据える。
 そこにはアルストの体よりも太く巨大な四肢で地面を踏みしめている大狼《たいろう》が存在していた。
 白と青の縞模様が特徴的な大狼は鋭い眼光をボスフロアの入口に向けており、一階層のボスモンスターであるアスラと同様で足を踏み入れるプレイヤーを今か今かと待ちわびている。
 右手にアルスター3を握り、周囲に誰もいないことを確認したアルストは装備の項目から脚当を選択してアスリーライドを装備した。
 そして初めて使用するスキル、耐久力上昇1を発動する。

「よし、行くか」

 心なしか歩みが軽くなった感覚を覚えたアルストがボスフロアに足を踏み入れる。
 その直後に大狼の頭上に名前とHPヒットポイントが表示された。

「雷獣ダーランダーか」

 武器商アスラの時と同じように、ダーランダーも名前に意味があるはずとアルストは考える。
 雷獣という名前に注目したアルストはエレナのスキルを思い出していた。

「雷を操る獣ってことかな。麻痺には注意しないといけないかも」

 とはいうものの、実際のところどのように注意すればいいのかは戦ってみないと分からないので、セオリー通りにダーランダーの攻撃への対処が最優先されるだろう。
 それを考えるとアスリーライドに装備を変更したのは正解だった。
 まだ数歩進んだだけなのだが、最初に感じていた軽くなった感覚は間違いではなかったようだ。
 獣というくらいだから俊敏性も高いだろう。そこに対抗できるだけの俊敏性を手に入れられるかは分からないが、それでもレア度2の脚当よりかは戦いやすくなるはずだ。

『――グルオオオオォォッ!』

 そこに響き渡るダーランダーの咆哮。
 アルストはアルスター3を構えて駆け出した。
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