天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

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第一章:天上のラストルーム

第61話:結果発表と……

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 最終順位は驚きの結果となった。
 アルストが372位、エレナが978位、アレッサが8052位。パーティでは4185位になった。
 アルストは500位以内に入り、エレナが1000位以内、アレッサが10000位以内と大健闘。
 そのおかげもありパーティランキングでも5000位以内に入ることができた。
 ランキング報酬に関しては順次運営からメールで届けられるので、今はお互いに健闘を祝うことにした。

「おぉっ! わ、私も1000位以内に入れたぞ!」
「私は10000位以内ですよ! でも、それ以上にアルストさんがすごいです!」
「最後の特別マップが効きましたね」

 喜びを口にしていた三人だったが、次のアルストの言葉に二人は黙ってしまう。

「それじゃあ、パーティとしての活動はこれで終わりですね」

 アルストが二人とパーティを組むのはイベントが終わるまでという約束だった。
 そのイベントが終わり、ランキングまで発表されたのだから解消するのが当然の流れである。

「……その、やはりこれで終わりなのですか?」
「二人ともとても強くなりましたし、俺がいなくても天上のラストルームを楽しめますよ」
「だが、せっかく友になれたのに期限を過ぎたらすぐに終わりというのは……」
「基本はソロプレイをしますけど、また何かの機会があればパーティを組みましょう。フレンドリストからメールも送れるわけですし」

 今回のパーティはこれで終わり。そのことを変えるつもりはアルストにはない。
 だが、アルストの中にも今回の出会いを今回だけで終わらせていいのか、とも考えている。
 ログインする前に思っていたことを口にして、二人の反応を待つことにした。

「……そうですね。約束でしたものね」
「……もし、私達が助けてほしいと思ったら、メールをしてもいいのか?」
「もちろんです。でも頻繁には止めてくださいね? 俺だってソロで楽しみたいので」

 そんな冗談交じりの言葉で締めくくったアルストは、アレッサとエレナと握手を交わしてパーティを解消した。
 二人のHPヒットポイントが共有していた視界画面から消えてしまう。

「それじゃあ、お二人とも頑張ってくださいね」
「お前の方こそな!」
「次に会う時には私達も強くなりますから!」

 そう口にした二人はアルストの目の前で姿を消してしまった。

「なんだ、ちゃんとログアウトしているんですね」

 ログインする度に二人もログインしていたので気になっていたのだが、やはりアルストの心配は杞憂だったのだとホッとしていた。

「アリーナさんは……まだログインしてないのか。どうせなら、久しぶりにソロでバベルに向かうかな。二階層のボスはあれだったし、もう一回チャレンジしてみるか。剣術士ソードメイトのレベルを今日で30に上げるのもいいかも」

 レベルも23まで上がっているのでクリアは簡単だろう。
 剣術士を30まで上げれば、次は魔導師マジシャンのレベル上げが待っている。
 アルストは久しぶりに一人でバベルへと向かったのだった。

 ※※※※

 ――とある空間。ここはアルストがチュートリアルを受けた場所と酷似している。
 その空間にノイズを伴った砂嵐が二つ発生すると、そこに人影が二つ現れた。
 そして二人に話し掛ける甲高い声。

「二人ともお疲れ様なのにゃ」

 声の主はID123、アルストにチュートリアルを説明した猫型NPCだった。

「お疲れ様です、マスター」
「……お疲れ様です」
「それで、あの子はどうだったかにゃ?」

 一人はまるで業務報告を行うように、抑揚のない声でID123へ答えていく。

「ゲーム知識は申し分ありません。戦い方や初見のボスへの対応も問題はないと思われます」
「そうだろうにゃ」
「ただ、ゲームの最中に接触したプレイヤーが一人しかいないのが難点です」
「そこは気にしてないのにゃ。最終的にはフレンドなんていてもいなくてもいいからにゃ」

 淡々と口にする一人とは異なり、もう一人は無言のまま報告を口にする一人を心配そうに見つめている。

「しばらくは怪しまれないように接触を控えるのにゃ。引退されても困るし、ソロプレイを満喫させていればいいのにゃ」
「了解しました、マスター」
「……了解しました」

 了承の意を口にして、無言だった一人がID123へと視線を向ける。

「君達NPCは彼が天上のラストルームを引退しないよう、目を光らせているようににゃ。それじゃあ僕は忙しいからまたなのにゃ」
「了解しました、マスター」
「……了解しました」

 軽く手を振ってID123が二人の目の前から姿を消した。
 淡々と報告を口にしていた一人も、無言の一人に声を掛けることもなく姿を消してしまう。
 残された無言だった一人が、俯きながら声を漏らす。

「これで、いいのでしょうか。私には分かりません――アルストさん」

 姿を消した一人――エレナはまるで人が変わったようになっていた。
 そんな中、無言だった一人――アレッサはいつもと変わらない声音で呟きを落とす。
 だが、アレッサの姿も、アレッサの意思とは関係なく姿を消してしまう。
 アルストの知らない場所で、アルストを巻き込む形で、何かが始まろうとしていた。

 第一章 完
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