19 / 99
第一章:逆行聖女
第19話:剣士アリシア 13
しおりを挟む
アリシアが剣を習い始めてから七日が経過したある日、朝ご飯を食べて詰め所へ向かう準備をしていると、家のドアがノックされた。
「はーい!」
返事をしながらドアを開けると、そこにはジーナとヴァイスが立っていた。
「おはよう、アリシアちゃん」
「……おう」
「おはよう! 今日はどうしたの?」
二人が家を訪れるのは久しぶりだと思い聞いてみたのだが、何故か黙り込んだままこちらを見ている。
心なしか元気もなく、ジーナに至っては目に涙を溜めているように見えた。
「ジーナちゃん? 何かあったの?」
「……うぅぅ、アリシアちゃ~ん! どうして遊んでくれないのよ~!」
「…………えっ? うわあっ!?」
泣きながらそう口にしたジーナは、そのままアリシアに抱きついた。
抱きついてからも泣き止まない様子から、アリシアはジーナの肩越しにヴァイスに視線を向けた。
「……こいつ、ずっとアリシアが来るのを楽しみに待っていたんだ。だけど、この前大広場で遊んでから一度も来てなかっただろ? 昨日もお昼くらいからずっと落ち込んでいてさ」
「……そうだったんだ。ごめんね、ジーナちゃん」
「うぅぅ……ねえ、アリシアちゃん? 今日は遊べるの? ずっと何をしていたの? 私よりも大事なことなの?」
ギュッと抱きしめられながらそう言われてしまい、アリシアはどのように答えるべきか悩んでしまう。
そこに声を聞いて姿を見せたのは、アーノルドだった。
「なんだ、ヴァイスにジーナじゃないか。どうしたんだい?」
「あ、お父さん。……じつは、その――」
アリシアはヴァイスから聞いた話をそのままアーノルドへ話した。
するとアーノルドは腕組みをしながら考え込んでいたが、何か思いついたのか顔を上げるとニコリと笑った。
「アリシアは今、剣を習っているんだ」
「えぇっ!? 剣って、アーノルドおじさんから!」
「あ、危なくないの、アリシアちゃん?」
ヴァイスとジーナは心配そうにアリシアを見るが、彼女は微笑みながら首を横に振った。
「全然危なくないよ。お父さんとシエナさんが注意してくれているからね!」
「そっかー。……でも、それなら私たちと遊べないよねぇ」
安全だとわかり笑みを浮かべたジーナだったが、すぐに遊べないことがわかり落ち込んでしまう。
どうしたらいいのかわからなくなっていたアリシアだが、そこへアーノルドが再び口を開いた。
「どうだろう、二人とも。今までみたいに走り回るということはできないかもしれないけど、君たちも訓練場に来るかい?」
「えぇっ!? お、お父さん、それはさすがに危ないんじゃないの?」
驚きの声をあげたアリシアだったが、アーノルドは普段と変わらない笑みを浮かべながら答えた。
「アリシアのように剣を習うわけじゃない。場所を決めて、そこで遊ぶんだ。それなら、アリシアも休憩の時にヴァイスやジーナと遊べるだろう?」
「そうだけど……どうする、ジーナちゃん?」
アリシアの中で剣を習わないという選択肢はない。
故に、彼女はジーナに決めてもらおうと思い問い掛けた。
「……わかった! アリシアちゃんと一緒にいる!」
「いいの、ジーナちゃん?」
「うん! だって、私の一番のお友達はアリシアちゃんだもん!」
先ほどまでの泣き顔はどこにもなく、今は満面の笑みでそう答えてくれた。
「そうか。ヴァイスはどうする? 君は男の子だし、走り回れた方がいいかもしれないが……」
「俺も一緒に行くよ、おじさん」
「ヴァイス兄もいいの?」
「それと……俺にも剣を教えてほしいんだ!」
「……えぇぇっ!?」
予想外の言葉にアリシアは驚きの声をあげた。
だが、アーノルドは予想していたのかすぐに次の言葉を口にする。
「アリシアにも言ってあるが、剣を振るということはとても危険だ。生半可な気持ちであれば、私は一切教えるつもりはないよ?」
「生半可な気持なんかじゃありません! 俺は、ネイド兄みたいに強くなって、この村のみんなを守れるようになりたいんだ!」
ヴァイスはネイドのことを本物の兄のように思っていた。
そんなネイドがアーノルドから剣を学ぶためにアリシアの家に通っていることも知っていたが、その時はまだ幼かったからか遊ぶことを優先していた。
しかし、いざネイドが村を出ていくとなった時、背中に直剣を差した立派な姿を見た時、ヴァイスは彼に大きな憧れを抱いたのだ。
「ネイドは冒険者になったが、ヴァイスは違うのかい?」
「冒険者は……正直よくわからない。でも、剣の腕を磨くことが悪いこととは思えないんだ」
「うーん……なら、剣を習うことに関しては、ご両親の許しを得てからだな」
「い、いいのか!」
「あぁ。しかし、ダメと言われたら私も絶対に教えないからね。それと、嘘もダメだからな?」
「わかった! ありがとう、おじさん!」
お礼を口にしたヴァイスは踵を返すとそのまま家に向けて走っていってしまった。
詰め所に行くまでの間に家があるので急ぐ必要はなかったのだが、それでも彼の気持ちを考えると急いでしまうのも無理はないだろう。
アリシアは右手でジーナと、左手でアーノルドと手をつなぎながら、ゆっくりと詰め所に向けて歩き出したのだった。
「はーい!」
返事をしながらドアを開けると、そこにはジーナとヴァイスが立っていた。
「おはよう、アリシアちゃん」
「……おう」
「おはよう! 今日はどうしたの?」
二人が家を訪れるのは久しぶりだと思い聞いてみたのだが、何故か黙り込んだままこちらを見ている。
心なしか元気もなく、ジーナに至っては目に涙を溜めているように見えた。
「ジーナちゃん? 何かあったの?」
「……うぅぅ、アリシアちゃ~ん! どうして遊んでくれないのよ~!」
「…………えっ? うわあっ!?」
泣きながらそう口にしたジーナは、そのままアリシアに抱きついた。
抱きついてからも泣き止まない様子から、アリシアはジーナの肩越しにヴァイスに視線を向けた。
「……こいつ、ずっとアリシアが来るのを楽しみに待っていたんだ。だけど、この前大広場で遊んでから一度も来てなかっただろ? 昨日もお昼くらいからずっと落ち込んでいてさ」
「……そうだったんだ。ごめんね、ジーナちゃん」
「うぅぅ……ねえ、アリシアちゃん? 今日は遊べるの? ずっと何をしていたの? 私よりも大事なことなの?」
ギュッと抱きしめられながらそう言われてしまい、アリシアはどのように答えるべきか悩んでしまう。
そこに声を聞いて姿を見せたのは、アーノルドだった。
「なんだ、ヴァイスにジーナじゃないか。どうしたんだい?」
「あ、お父さん。……じつは、その――」
アリシアはヴァイスから聞いた話をそのままアーノルドへ話した。
するとアーノルドは腕組みをしながら考え込んでいたが、何か思いついたのか顔を上げるとニコリと笑った。
「アリシアは今、剣を習っているんだ」
「えぇっ!? 剣って、アーノルドおじさんから!」
「あ、危なくないの、アリシアちゃん?」
ヴァイスとジーナは心配そうにアリシアを見るが、彼女は微笑みながら首を横に振った。
「全然危なくないよ。お父さんとシエナさんが注意してくれているからね!」
「そっかー。……でも、それなら私たちと遊べないよねぇ」
安全だとわかり笑みを浮かべたジーナだったが、すぐに遊べないことがわかり落ち込んでしまう。
どうしたらいいのかわからなくなっていたアリシアだが、そこへアーノルドが再び口を開いた。
「どうだろう、二人とも。今までみたいに走り回るということはできないかもしれないけど、君たちも訓練場に来るかい?」
「えぇっ!? お、お父さん、それはさすがに危ないんじゃないの?」
驚きの声をあげたアリシアだったが、アーノルドは普段と変わらない笑みを浮かべながら答えた。
「アリシアのように剣を習うわけじゃない。場所を決めて、そこで遊ぶんだ。それなら、アリシアも休憩の時にヴァイスやジーナと遊べるだろう?」
「そうだけど……どうする、ジーナちゃん?」
アリシアの中で剣を習わないという選択肢はない。
故に、彼女はジーナに決めてもらおうと思い問い掛けた。
「……わかった! アリシアちゃんと一緒にいる!」
「いいの、ジーナちゃん?」
「うん! だって、私の一番のお友達はアリシアちゃんだもん!」
先ほどまでの泣き顔はどこにもなく、今は満面の笑みでそう答えてくれた。
「そうか。ヴァイスはどうする? 君は男の子だし、走り回れた方がいいかもしれないが……」
「俺も一緒に行くよ、おじさん」
「ヴァイス兄もいいの?」
「それと……俺にも剣を教えてほしいんだ!」
「……えぇぇっ!?」
予想外の言葉にアリシアは驚きの声をあげた。
だが、アーノルドは予想していたのかすぐに次の言葉を口にする。
「アリシアにも言ってあるが、剣を振るということはとても危険だ。生半可な気持ちであれば、私は一切教えるつもりはないよ?」
「生半可な気持なんかじゃありません! 俺は、ネイド兄みたいに強くなって、この村のみんなを守れるようになりたいんだ!」
ヴァイスはネイドのことを本物の兄のように思っていた。
そんなネイドがアーノルドから剣を学ぶためにアリシアの家に通っていることも知っていたが、その時はまだ幼かったからか遊ぶことを優先していた。
しかし、いざネイドが村を出ていくとなった時、背中に直剣を差した立派な姿を見た時、ヴァイスは彼に大きな憧れを抱いたのだ。
「ネイドは冒険者になったが、ヴァイスは違うのかい?」
「冒険者は……正直よくわからない。でも、剣の腕を磨くことが悪いこととは思えないんだ」
「うーん……なら、剣を習うことに関しては、ご両親の許しを得てからだな」
「い、いいのか!」
「あぁ。しかし、ダメと言われたら私も絶対に教えないからね。それと、嘘もダメだからな?」
「わかった! ありがとう、おじさん!」
お礼を口にしたヴァイスは踵を返すとそのまま家に向けて走っていってしまった。
詰め所に行くまでの間に家があるので急ぐ必要はなかったのだが、それでも彼の気持ちを考えると急いでしまうのも無理はないだろう。
アリシアは右手でジーナと、左手でアーノルドと手をつなぎながら、ゆっくりと詰め所に向けて歩き出したのだった。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる