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第一章:逆行聖女
第27話:自警団員アリシア 5
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「……そこまで、驚かないの?」
「ん? いや、まあ、そうだな」
アリシアからすると絶対に避けなければならない未来だったが、アーノルドからするとアリシアが死んでしまうという未来の方が気になってしまい、自分のことにはそう驚くことがなかった。
「もう! これはお父さんのことなんだからね!」
「そうなんだが……」
「やっぱり信じてくれていないのね!」
「それは違う! 私のことよりもアリシアのことが心配なんだ!」
「……私のことが、心配?」
何がそんなに心配なのかと首を傾げたアリシアに、アーノルドは苦笑を浮かべながら口を開く。
「今から一〇年以上先の話ということだが、私はアリシアが亡くなってしまう未来なんて、見たくはないからね」
「あ……うん、そうだよね。ごめん、怒鳴っちゃって」
「私も言葉足らずだったよ、すまないね」
お互いに謝罪を口にすると、アリシアは姿勢を正して話を続けた。
「私が剣を学んだのは、私が死んでしまう未来を変えるためなの。だけど、国のことを考えるあまり、身近で起きる悲劇について思い出すことを忘れていたの」
「身近で起きる悲劇……そのせいで、私は剣を握れなくなるということだね」
「……うん」
一つ頷いたアリシアは、小さく息を吐き出して気持ちを落ち着けると、身近で起きる悲劇について語り出した。
「今から三日後、森の中から大型の魔獣が現れるわ」
「大型の魔獣? ……まさか、シザーベアか?」
アーノルドの言葉にアリシアは大きく頷いた。
「シザーベアなら、何度も討伐してきたぞ?」
「私も知っているわ。だって、お父さんはとっても強い自警団団長だもの。……でも、三日後に現れるシザーベアは、今までの個体よりも大きくて、凶暴で、危険なの」
「ふむ……そいつは森の中の主かもしれないね」
「……心当たりがあるの?」
心配そうに顔を上げたアリシアだったが、アーノルドは彼女に心配させないようにと柔和な笑みを浮かべながら答えた。
「三年前、ヴァイスとジーナの父親が亡くなった時に現れたシザーベアかもしれない」
「そ、そんな!?」
三年前にディラーナ村を襲ったシザーベアがいた。
自警団が総出となり討伐を試みたものの、多くの犠牲の末に追い払うことしかできなかった。
その時に犠牲になった自警団員の中にヴォルスもいたのだ。
「ヴォルスは身を挺して多くの自警団員を守り抜いた。さらにそのシザーベアに深手を負わせたのもヴォルスなんだよ」
「……そうだったんだ」
「だが……いいことを聞いたかもしれないな」
「どういうこと?」
何がいいことなのかわからず問い返したのだが、その時のアーノルドの表情は優しい父親ではなく、自警団団長の顔をしていた。
「私の親友を殺したシザーベアを倒すことができるチャンスだからだよ」
テーブルの上に置かれていた両手を握りしめる力が強くなる。
その姿を見たアリシアの脳裏には、大怪我を負って戻ってきたあの日の父親の姿がフラッシュバックしてしまう。
「ダ、ダメだよ、お父さん!」
「大丈夫だよ、アリシア。今回はシザーベアの主が来ることを知っている。ならば、やりようはあるさ」
「それでもダメ! ……怖いよ、お父さん。またお父さんが大怪我をするんじゃないかって、怖いの」
再び体が震え出したアリシア。
しかし、今回の震えは不信感を抱かれると恐怖した時とは違い、アーノルドを失ってしまうのではないかという恐怖からくるものだった。
「万全の準備をしていく。安心して私たちの帰りを待っていてくれ」
「……本当に、大丈夫なの?」
「もちろんだ。私はまだまだ、アリシアを育てるために働かないといけないからね」
そう口にした時のアーノルドは、父親の表情に戻っていた。
しかし、アリシアの胸の中にある不安が消えることはなく、密かにとある決意を固めていたのだった。
「ん? いや、まあ、そうだな」
アリシアからすると絶対に避けなければならない未来だったが、アーノルドからするとアリシアが死んでしまうという未来の方が気になってしまい、自分のことにはそう驚くことがなかった。
「もう! これはお父さんのことなんだからね!」
「そうなんだが……」
「やっぱり信じてくれていないのね!」
「それは違う! 私のことよりもアリシアのことが心配なんだ!」
「……私のことが、心配?」
何がそんなに心配なのかと首を傾げたアリシアに、アーノルドは苦笑を浮かべながら口を開く。
「今から一〇年以上先の話ということだが、私はアリシアが亡くなってしまう未来なんて、見たくはないからね」
「あ……うん、そうだよね。ごめん、怒鳴っちゃって」
「私も言葉足らずだったよ、すまないね」
お互いに謝罪を口にすると、アリシアは姿勢を正して話を続けた。
「私が剣を学んだのは、私が死んでしまう未来を変えるためなの。だけど、国のことを考えるあまり、身近で起きる悲劇について思い出すことを忘れていたの」
「身近で起きる悲劇……そのせいで、私は剣を握れなくなるということだね」
「……うん」
一つ頷いたアリシアは、小さく息を吐き出して気持ちを落ち着けると、身近で起きる悲劇について語り出した。
「今から三日後、森の中から大型の魔獣が現れるわ」
「大型の魔獣? ……まさか、シザーベアか?」
アーノルドの言葉にアリシアは大きく頷いた。
「シザーベアなら、何度も討伐してきたぞ?」
「私も知っているわ。だって、お父さんはとっても強い自警団団長だもの。……でも、三日後に現れるシザーベアは、今までの個体よりも大きくて、凶暴で、危険なの」
「ふむ……そいつは森の中の主かもしれないね」
「……心当たりがあるの?」
心配そうに顔を上げたアリシアだったが、アーノルドは彼女に心配させないようにと柔和な笑みを浮かべながら答えた。
「三年前、ヴァイスとジーナの父親が亡くなった時に現れたシザーベアかもしれない」
「そ、そんな!?」
三年前にディラーナ村を襲ったシザーベアがいた。
自警団が総出となり討伐を試みたものの、多くの犠牲の末に追い払うことしかできなかった。
その時に犠牲になった自警団員の中にヴォルスもいたのだ。
「ヴォルスは身を挺して多くの自警団員を守り抜いた。さらにそのシザーベアに深手を負わせたのもヴォルスなんだよ」
「……そうだったんだ」
「だが……いいことを聞いたかもしれないな」
「どういうこと?」
何がいいことなのかわからず問い返したのだが、その時のアーノルドの表情は優しい父親ではなく、自警団団長の顔をしていた。
「私の親友を殺したシザーベアを倒すことができるチャンスだからだよ」
テーブルの上に置かれていた両手を握りしめる力が強くなる。
その姿を見たアリシアの脳裏には、大怪我を負って戻ってきたあの日の父親の姿がフラッシュバックしてしまう。
「ダ、ダメだよ、お父さん!」
「大丈夫だよ、アリシア。今回はシザーベアの主が来ることを知っている。ならば、やりようはあるさ」
「それでもダメ! ……怖いよ、お父さん。またお父さんが大怪我をするんじゃないかって、怖いの」
再び体が震え出したアリシア。
しかし、今回の震えは不信感を抱かれると恐怖した時とは違い、アーノルドを失ってしまうのではないかという恐怖からくるものだった。
「万全の準備をしていく。安心して私たちの帰りを待っていてくれ」
「……本当に、大丈夫なの?」
「もちろんだ。私はまだまだ、アリシアを育てるために働かないといけないからね」
そう口にした時のアーノルドは、父親の表情に戻っていた。
しかし、アリシアの胸の中にある不安が消えることはなく、密かにとある決意を固めていたのだった。
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